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日本医師会の正体を直視すべき −コロナワクチンの輸入依存で見えてくる日本の医療体制の問題点、診療報酬を連続して引き上げ、薬価引き下げを続けた厚労省−

 3月8日のNHKのテレビニュースは、「医薬品産業の国際競争力強化で対策チーム立ち上げ 自民党」と言うタイトルで,次の様に報じていました。
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医薬品産業の国際競争力強化で対策チーム立ち上げ 自民党
2021年3月8日 4時16分  NHK

 新型コロナウイルスの
ワクチン開発などで、欧米の製薬メーカーが先行する中、自民党は国内の医薬品産業の国際競争力を高めるため、対策チームを立ち上げ、研究開発や薬事承認のあり方などについて検証を進め、提言をまとめることにしています。

 新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、アメリカのファイザーなど、
欧米の製薬メーカーが開発で先行し、中国ロシアなども自国内で開発し各国に供給していることから安全保障の観点からも、国内での開発の遅れを懸念する声が出ています。

 こうした中、自民党は、ワクチン開発に限らずに、
国内の医薬品産業の国際競争力を高めるための方策を検討しようと、橋本・前厚生労働副大臣を座長とする対策チームを立ち上げました。

 医薬品の開発をめぐっては、費用の高騰が指摘される一方、欧米の製薬メーカーに比べて
国内企業の規模が小さく費用も限られていることから、効率的な投資で収益性の高い医薬品を開発できるかが課題となっています。

 このため、対策チームでは、医薬品の研究開発を戦略的に進めるための課題や人材育成、薬事承認や
薬剤価格のあり方なども幅広く検証し、政府への提言をまとめることにしています。
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 今回の一連の新型コロナ事態で、
日本の医療体制の、諸外国に比較しての異常さが浮き彫りにされました。
 その一つが、
民間病院が非常に多いことと、それらの病院がコロナ対策には役に立っていないと言うことです。

 次に言えることは
ワクチン開発で日本は他の欧米諸国に比べて、製薬企業が劣勢であり、開発に後れを取っていると言うことです。この記事はその点を指摘しています。

 
薬剤価格の問題については、昨年12月26日の読売新聞に、「ワクチン開発 平時から備え(手代木功 塩野義製薬社長)」と言う見出しの、下記の記事がありました。
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ワクチン開発 平時から備え(手代木功 塩野義製薬社長)
20201226 0500  読売
手代木功・塩野義製薬社長

 新型コロナウイルスの
ワクチン接種が海外で始まり、国内でも米製薬大手ファイザーが製造販売の承認申請を行った。社会の正常化に向けた切り札として、ワクチンへの期待は高い。自社で開発を進める塩野義製薬の手代木功社長は、産官学が連携し、平時から備えておくことが欠かせないと強調する。(聞き手 三島浩樹)

安全保障  

 今月16日に治験(臨床試験)を開始した自社開発のワクチンは、2021年の前半には安全性や有効性について一定のメドを立てたいと考えている。現時点で実用化の時期を明確に示すことはできないが、
21年中には3000万人分以上の生産体制を整えられると見ている。

 ファイザーが新型コロナのワクチン開発を始めた際、
米国政府は巨額の資金支援を行い、中国もワクチン工場に巨費を投じるなど他国のスピード感には驚かされた。日本が後れを取っていることは否めないが、開発に全力を挙げているところだ。

(中略)

 需要が読みにくい感染症薬の研究開発から
撤退した製薬会社は多い。当社は抗生物質が効きにくい多剤耐性菌や、マラリアなどの治療薬の研究を地道に続けているが、「儲け(もうけ)にならない」と批判的な投資家もいる。

(中略)

 国の財政悪化を背景に
薬価は下落傾向にあり、日本の製薬大手の大半は国内の赤字を海外事業で補完する収益構造になっている。数十年に一度あるかないかの事態に備えるため、製薬会社も応分の負担をすべきだが、企業努力だけでは限界がある。

 コロナ禍では、国内にウイルスの研究施設が数か所しかない実態が浮き彫りになった。感染症対策の国の
関連予算が縮小されてきたためで、国立感染症研究所や保健所など関係機関が迅速に対応しようとしても、物理的に難しかった。

(以下略)
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 手代木功・塩野義製薬社長が指摘している通り、
薬価は、下記の図が示すように、ここ数年医師会の診療報酬引き上げ要求の犠牲になって、連続して引き下げが続いています。
 中でも一番際立っているのが
民主党政権下です。
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【図解・行政】診療報酬改定率の推移(2019年12月)
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_seisaku-syakaihosyo20191217j-05-w420

診療報酬改定率の推移

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 しかるに、この事態の進行に対して、政治家も大学教授も、マスコミも
誰も批判はしませんでした。財政難の中で、日本医師会政治力にものを言わせて,2年に一度の改定の都度,毎回診療報酬の引き上げを要求(実現)し、国は薬価の引き下げで相対的に政治力に劣る製薬業界と薬局犠牲を強いてきたのです。それが現在の製薬業界劣勢の原因と言って良いと思います。

令和3年3月9日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ