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「賃上げ税制」を実施する一方で、人手不足を口実に外国人実習生・留学生の増加を図るのは、“マッチポンプ”行政

 12月8日のNHKテレビニュースは、「自民 来年度税制改正の大枠固める
『賃上げ税制』など」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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自民・公明 来年度税制改正の大枠固める 「賃上げ税制」など
2021年12月8日 20時10分  NHK

 来年度の税制改正で、自民・公明両党の税制調査会は、
賃上げに積極的な企業を支援する「賃上げ税制」について、法人税から差し引く控除率を、大企業で最大30%、中小企業で最大40%に引き上げることなど、主要項目の大枠を固めました。

 来年度の税制改正の取りまとめに向け、自民党の宮沢税制調査会長と公明党の西田税制調査会長ら、両党の税制調査会の幹部が8日夜、東京都内で会談し、主要項目の大枠を固めました。


 
最大の焦点となっていた、賃上げに積極的な企業を支援する「賃上げ税制」について、法人税から差し引く控除率を、賃上げに向けた企業の取り組み状況に応じて、現在の15%から、大企業で最大30%、中小企業で最大40%に引き上げるとしています。


具体的には、大企業や中堅企業は、継続して雇用している従業員の
給与の総額が、前の年度より4%以上増えた場合は控除率を25%とし、従業員の教育訓練費を前の年度より20%以上増やした場合には控除率をさらに5%拡大します。


また、
中小企業は、雇用者全体の給与総額が2.5%以上増えた場合は控除率を30%とし、従業員の教育訓練費10%以上増やした場合は控除率をさらに10%拡大するなどとしています。

 一方、ことしの年末に期限を迎える
「住宅ローン減税」は、制度を令和7年の入居分まで4年間延長したうえで、現在、年末時点のローン残高1%としている控除率を0.7%に引き下げるとしています。

 また、控除が受けられる期間については、
新築住宅は13年間中古住宅は10年間とします。

 そして、控除対象の借り入れ限度額は、新築の環境性能に優れた住宅を優遇し、再来年の入居分までは、省エネやバリアフリーなどに配慮した「認定住宅」は5000万円、一定程度、省エネに配慮している場合は、性能に応じて4500万円か4000万円、それ以外の住宅は3000万円とするとしています。

 このほか、
新型コロナの影響を踏まえた固定資産税の負担軽減措置について、住宅地は、予定どおり今年度で終了する一方、商業地は、負担増の上限を、前の年度の2.5%までとするとしています。

 一方、
富裕層金融所得への課税については「税負担の公平性を確保する観点から、外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う」などの文言が税制改正大綱に盛り込まれるものの、結論を得る時期は明記されない方向です。

 自民・公明両党は、それぞれの党内の手続きを経て、10日に大綱を決定することにしています。

 自民 宮沢税制調査会長“バランスとれた税制改正できるのでは”
自民党の宮沢税制調査会長は記者団に対し「今後、自民・公明両党で党内手続きを行い、中身はまだ確定したものではないので論評は少し早いが、課題に対し、バランスのとれた税制改正ができるのではないか」と述べました。
 そのうえで「特に大手企業は相当な現預金が積み上がっている状況で、賃上げ余力はかなりある。賃上げが息切れしないためにも生産性を上げることをしっかりやっていただきたいので、企業の付加価値を上げるための努力を税制としてどう応援するかは、来年以降の議論の大きな柱になるだろう」と指摘しました。

 
公明 西田税制調査会長“成長と分配 両立目指す企業を後押し”
公明党の西田税制調査会長は、記者団に対し「新型コロナのオミクロン株や、原油の高騰など、経済の先行きに不透明感が漂う中で、来年度やそれ以降の
税制の在り方を議論できたのは非常に充実した時間だった。成長と分配との両立を目指す企業を、税で後押ししていくという道筋ができた税制ではないか」と述べました。
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 長年賃金水準が上がらないと言うことは、労働市場が
人手不足ではなく、反対に人手過剰(人手不足ではない)と言うことを意味します。
 昭和30年代〜40年代の
「高度成長」の時がそうであったように、人手不足の時には賃金は上昇するはずです。その反対に人手過剰の時は賃金を上がらず、逆に低下の恐れがあります。
 現在の日本は、
人手過剰だから賃金が上昇しないし、物価も上昇しないのです。

 人手過剰が賃金が上昇しない原因であるならば、それにふさわしい対策を取らなければなりません。少なくとも
人手過剰の原因となる(あるいは加速する)ような施策は採るべきではなく、廃止すべきと言うことになります。

 それでは
人手過剰の原因となっているのは何でしょうか。まず考えられるのは、「外国人労働者“移民”」の存在です。名目は「実習生」「研修生」など様々に装っていますが、近年、景気の動向に拘わらず、一貫して増加しています。

 そのような“移民”増加を主張する人達はその口実として、“人手不足”を訴え、何らかの形で“人手不足”が生じているように装っていますが、「人手不足」というなら、
人手不足の定義を明確にする必要があります。

 無能な
経営者の希望通りの条件(低賃金)で人が集まらないと言うことは、必ずしも“人手不足”とは言えません。また、それは必ずしも労働市場が、何らかの改善を要する事態にあるとは言えません。むしろその事態を無理に改善(移民などの受け入れ)しようとすれば、労働条件(賃金)はいつまで経っても改善(上昇)しないという結果に終わります。

 政府は最近、人手不足の
介護職の賃金を5000円〜10000円引き上げる方針を示しましたが、介護職の職場に外国人の投入をせず、賃金を政府の公定ではなく自由な労働市場に委ねれば、介護職の賃金は大幅に上昇するはずです。
 介護職の職域で
低賃金が続くのは、政府が外国人を投入して労働市場に介入し、人手不足を未然に抑止し賃金上昇傾向に冷水を浴びせ掛けているからです。

 かつて
旧西ドイツは、戦後の「ライン川の奇跡」と言われた経済の急成長に際して、人手不足対策として大量のトルコ人移民を受け入れました。それにより西ドイツは一時的には、成長を維持しましたが、その後長期的に見れば自動車産業などで、生産性の向上(技術革新)に後れを取る一因となったと評されました。
 西ドイツの経験は
他山の石とすべきですが、なぜかこういう経験に注目する報道がありません。

 このような人員過剰の現実とその原因を直視せず、
経済政策の一環として、企業の「賃上げ」支援する「賃上げ税制」が実施されようとしてますが、行政は“お金をばらまく”事ではありません。今の行政はすることと言えば「補助金」「減税」などでの“小銭”のバラ撒きが中心になっています。それよりも市場経済が健全に機能する環境を作ることが大事です。
 
教育訓練費の増額を支援していますが、「教育訓練」で大事なのは金額の多寡ではなく、中身です。何の“指針”も示さずに、金額の増額だけを支援するのはまともな行政ではありません。

 日本は
先進国の中でも低賃金だけでなく、労働生産性が低いとも指摘されています。国内の低賃金依存企業などの政治的圧力に負けて、するべき事をしないで「外国人の受け入れ」に依存しているから、低賃金・低生産性の悪循環が改善しないのです。

 このように考えると、政府のしている現在の各種の
移民増加・強化政策(外国人との共生社会実現など)と、「賃上げ税制」矛盾し、相容れない政策で、わかりやすく言えば「放火」した後で、自分で「消火」も行う(マッチポンプ)のようなものだと言えると思います。

令和3年12月14日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ