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金融再生委員会による銀行の相談役廃止要求

 金融再生委員会が公的資金による資本注入を受ける大手銀行に対して、相談役制度の廃止を求めていることが明らかになりました(2月23日毎日新聞夕刊)。金融再生委員会にそのような権限があるのでしょうか。事件や不祥事の度に権限を肥大させていく、公務員の「焼け太り」体質は何とかならないものでしょうか。

 大蔵省、日銀の接待汚職事件が残した教訓はいったい何だったのでしょうか。法律的な根拠や権限がないにもかかわらず、公務員が行政指導を口実に、許認可権限を利用して民間金融機関の経営に介入し、金融機関はそれに対応し、企業を守るために接待を繰り返さなければならなかった、と言うのが接待汚職の構図です。不透明な裁量行政で民間企業の経営に「官」が介入することが腐敗の温床なのです。

 金融再生委員会が「公的資金注入」を口実に民間企業である銀行の人事に介入する根拠はありません。かつての大蔵省でさえこのような露骨な人事干渉はしませんでした。金融再生委員会は、「そうしないと世論の理解が得られない」と言っているそうですが、なにか根拠があるのでしょうか。世論が理解しているか、していないかどうして判断したのでしょうか。世論調査でもしたのでしょうか。根拠も示さず、「世論」を口実にすることは許せません。

 去年大蔵省は、日債銀が経営破綻に直面した際、民間金融機関各社に虚偽の検査結果を示して、「奉加帳方式」で日債銀への出資を強要し、巨額の損失を被らせました。金融再生委員会がこの点について、大蔵省の責任を不問にしていることを、世論は理解を示してはいません。この問題で自分たちに向けられる国民の批判の目をそらし、批判の目を銀行に向けさせ、金融機関の抗議を封じ込めることが今回の「相談役廃止要求」のねらいだと思います。

 金融再生委員会のすべきことは資金の注入であって、民間企業の役員人事に口を出すことではありません。そのような行為は求められてもいなければ期待もされていません。彼らのなすべき事は、経営者に変わって銀行を経営することではありません。彼らは経営者としての力量を見込まれているのではないのです。企業の役員を決めるのは株主の権限であって、公務員のすることではありません。

 先頃の、民営化されたJR各社に対する追加負担の強要と言い、今回の介入と言い、我々は「官」の横暴を許してはいけないと思います。

平成11年2月27日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ