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日本の農政(漁業を含む)が最優先で守るべき事は、国民が必要とする最低限の食料自給率(カロリー・ベース)を確保する事である。−高級(高額)作物の輸出を拡大して、農家の経済を守ることではない−
月刊誌「明日への選択」(令和元年5月号)に、小松正之氏が「日本漁業復活の大戦略を語る」と題して語ったインタビュー記事があり、それを読んで次の様に考えました。
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水産庁の行政が各地の漁協優先(国民軽視)から脱却できず、日本の漁業衰退の元凶となっている事実を知らされました。これは農業にも当てはまることだと思います。
漁協は本来単なる業界団体の筈で、行政は業界の利益の為でなく、国民(業界、消費者、流通など)全体の利益の為に職務に当たるべきで、業界とは適度な距離を保たなければならないと思います。
今の日本の漁業の基本は漁業資源は「無主物」→魚は漁業者の物→漁協に漁業権→新規参入困難→それが職業の世襲化(職業選択の自由を侵害)→高齢化→先細り→外国人材へと話が繋がり→とどのつまりが日本の漁業の衰退となっていくのだと思います。
一方で農業の場合はというと、農地は農地法により自由に売買できず、税制などで既得権を保護→新規参入が困難→先細り・高齢化→耕作放棄地の増加→外国人材に依存→日本の農業の衰退、となります。
近年の農業の動きを見ると「農業を守る」筈の施策が農業の衰退を加速しているように見えます。
本来「@日本の農業を守る」とは、「A日本の最低限必要な食料自給率(カロリー・ベース)を守る」ことであり、「B既存の農家の経済を守る」事ではないはずです。
ところが今の日本の農政はAではなくてBを目的にしているように見えます
日本の農業は経営規模が小さく、輸入品との競争では価格の点で外国産に太刀打ちできないので、高級品に活路を見いだす方向を目指しているように見えます。
低価格(普通価格)の農産品の生産が減少しても、その何倍もの価格の高級品を輸出できれば、農家の経済は守られるとしても、カロリーベースの食料自給率は低下して、安全保障の上から好ましくありません。これでは「日本の農業が守られた」とは言えません。
では何故このように農業・漁業の世界で、“業界優先”がまかり通ってるのでしょうか。地域に根ざした「伝統産業」である事も理由だと思いますが、各種の選挙は地域別に選挙区が設定されますので、同業者が特定地域に集中すれば、分散している業種・職種よりは有利になると思います。
農業・漁業は一般的に地域の農協・漁協を介して営業しているため、地域の同業者間の競争はなく、むしろ協力関係にあるので、その面でも一般の商工業者より団結しやすいと言えます。
この強力な票田を背景に各選挙区に「農林族議員」が存在していて、第一次産業の人口比率以上の力を発揮しているのだと思います。
“農林族議員”、“こめ議員”の活躍(暗躍)ぶりは、時々新聞記事にもなりますが、具体的に議員の氏名が報じられることはほとんどありません。従って有権者が彼らの活動に“NO!”を突きつけたくてもそれが出来ないのが現状です。ここでもマスコミの情報隠蔽(世論操作)が大きな役割を果たしています。
令和元年5月20日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ