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日野自動車の不正事件、ユーザーやその他に実際の被害・損害はあったのか。 −実害がなく単にルール違反に止まるのであれば、ルールに問題は無かったのか−

 10月7日のNHKテレビニュースは、「日野自動車データ不正 国交省に再発防止策提出 役員処分も発表」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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日野自動車データ不正 国交省に再発防止策提出 役員処分も発表
2022年10月7日 20時03分 NHK

 
日野自動車のおよそ20年にわたるデータ不正問題で会社は7日、国土交通省に再発防止策をまとめた報告書を提出しました。また、経営責任を明確にするため、小木曽聡社長の報酬の減額や取締役を含む役員4人の辞任、さらに歴代の社長などに報酬の自主返納を求めることを発表しました。

 この問題で国土交通省は先月、不正行為は
極めて悪質だとして会社に抜本的な改革を求める「是正命令」を出し、再発防止策の報告を求めていました。

(中略)

 専門家「非常に悪質な不正行為 体制構築を」
 自動車の排出ガスや燃費対策に詳しい早稲田大学の大聖泰弘名誉教授は一連の不正について、「国が定めた
試験法にのっとらず、認証を受けようとしたことは非常に悪質な不正行為だ。販売店や部品メーカーもあるすそ野が広い産業なので販売が止まる影響は大きく、日本の自動車メーカーへの評価低下も危惧される。環境や人体に即座に影響するものではないが排出ガスの機能低下が出ている古い車から対策し、直接的な環境への影響を最小限に抑えてほしい」と話しています。

(以下略)
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 「
環境や人体に即座に影響するものではないが・・・」とありますが、これは重要な点であると思います。

 9月17日の読売新聞も次の様に報じていました。
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日野「型式指定」また取り消し…不正エンジン 国交省、月内にも
2022/09/17 05:00 読売
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 国土交通省は日野自動車に対し、排ガス性能が基準を満たさないエンジン4機種について、量産に必要な「型式指定」を取り消す行政処分を月内にも行う。日野は3月に燃費試験不正などで型式指定の取り消し処分を受けており、2度目となる。

(中略)

 対象となるのは、バスやトラックに搭載する大型エンジン1機種と、建設機械用エンジン3機種。排ガス性能を調べる長距離耐久試験で、量産時とは異なる
制御プログラムを使う不正や、データの改ざんが認められた。

(中略)

 日野の不正を巡っては、
2003年以降の約20年にわたり排ガスや燃費試験結果の改ざんなどが確認され、国交省は今月、道路運送車両法に基づく是正命令を初めて出した。
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 この記事では「・・・試験で、量産時とは
異なる制御プログラムを使う不正や、データの改ざんが認められた」とあるだけで、データの改ざん・乖離の程度、実際の被害、悪影響については、何も報じていません。

 このような事件(事故)に於いては、単
にルール違反があったことを報じるだけでなく、改ざんの程度・規模やそれによって、実際にユーザーやその他の人達に、どの様な・どの程度の被害・損害が発生したか(しなかったか)を詳細に報じることが不可欠です。
 今回の日野自動車の事件では、今までの報道ではほとんどそれは報じられていません。
被害・損害はどの程度のものだったのでしょうか。

 大分前のことですが、同じ自動車メーカーの
スバルで、「完成車検査員の資格がない者が完成検査を行っていた」という不正行為があった事が、大きく報じられた事件がありましたが、その時の報道と共通していることは、被害・損害の実態がほとんど報じられていないという事です。少なくとも重大な被害・損害が発生した事件としてではなく、単にルール違反(不正)があったと言う報道に止まっていました。

 もし報じるほどの大きな実害がなかったとしたら、この種のルール違反がなぜ連続して大企業(自動車メーカー)で発生したのでしょうか。考えられることは、
ルールに問題があるのではないかと言うことです。意味の無い、効率の悪い時代遅れのルールを放置していたのでは無いかと言うことです。

 確か、スバルの時だったかと思いますが、
“事件”後ルールの一部が見直されたように記憶します。企業にとってルールは、最少の負担で最大の効果を上げるものであることが望まれます。
 もし、実被害が軽微でルールに問題があるのであれば、マスコミはその詳細を報じるべきです。

令和4年10月24日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ