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「人手不足」とは何か 雇用する側の提示する条件で採用が出来ないと“不足”で、外国人が必要となるのか −高度成長の時代は慢性的な人手不足で賃金が上昇した  “人手不足は”移民受け入れを正当化しない。−

 4月24日のNHKテレビニュースは、「『特定技能2号』在留資格 政府 拡大案示す 異論出る可能性も」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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「特定技能2号」在留資格 政府 拡大案示す 異論出る可能性も
2023年4月24日 18時47分  NHK

 
熟練技能を持つ外国人への「特定技能2号」の在留資格について、政府は、業種を大幅に拡大し、農業など11分野とする案を明らかにしました。この在留資格は、更新の継続で事実上、無期限に滞在できるため、適用拡大には与党内から慎重論もあります。

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 4年前に始まった、
熟練した技能を持つ外国人に与えられる「特定技能2号」の在留資格は、在留期間の更新に上限がなく配偶者などの帯同も認められています。

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 世界的に人材獲得競争が激しくなる中、政府は、この在留資格について、
業種を大幅に拡大する案を自民党の外国人労働者に関する部会で明らかにしました。

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 現在は
「建設」「造船関連」の2分野の業種で、資格を持つ人は10人にとどまっていますが、「農業」「飲食料品製造業」など9業種を増やし、合わせて11分野にするとしています。

 ただ、この「特定技能2号」の在留資格をめぐっては、与党内から
「事実上の移民政策だ」という慎重論も出ていて、大幅な適用緩和には異論が出る可能性もあります。
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人手不足は今に始まったことではなく、高度成長(昭和30〜40年代)の時は、慢性的な人手不足だったが、当時“外国人労働者を!”なんていう日本人はいなかった。賃金はどんどん上がって、中学卒業都会に集団就職する若者は「金の卵」と言われ、彼らはやがて自分でマイカーを買うことが出来た。貧富の差は小さかった。

 その後
無能で自分のことしか考えない経営者達が人手不足を口実にして、より安価な労働力として外国人労働者を導入した結果、“金の卵”は消滅し、外国人労働者と競合する職種の若者の賃金は伸び悩み貧富の差が拡大して日本社会の劣化が進んだ。 工場の海外移転もそれに拍車を掛けた。

 もともと“人手不足”には何の基準もなく、必ずしも全てが改善策を要する事態とは言えないにもかかわらず、賃金の上昇に耐えられない無能な経営者達により、安易に「人手不足」が使われる傾向が否定出来ない。

 今の社会(特に公務員の世界)には
「偏差値(筆記試験)偏重(万能)」の側面があり、今の劣化した社会で良い思いをしているのは、偏差値の高い人達であり、特に女性の場合はその傾向が顕著である。反対に偏差値の低い人にとっては住みにくい社会になり、良いことは何もなくなった。このような社会では、賃金の上昇による物価の上昇よりも、低賃金で働く外国人労働者の流入による物価の安定は、好ましい事とは言わないまでも、決して排除すべき事態ではないのである。それが今までなし崩し的に“移民受け入れ”が進行してきた理由である。

 いわゆる
“偏差値”“記憶力指数”“理解力指数”の一面があり、社会(特に進歩・発展、改革・改善が求められる分野)必要とされる能力全てを反映するものでは無い。
 昔の日本社会では
偏差値の高い人はその他の能力もそれなりに高かったが、現代の日本ではいびつな教育(受験教育)がはびこり、“偏差値”に特化した秀才が少なくなくなっている。“偏差値(筆記試験)万能”は大きな誤りであり、他の側面からの評価が欠かせない。

 いずれにしても偏差値は、国民全体で見れば
高低幅広い範囲で正規分布するのが通常(正常)であり、偏差値の低い人達だけに犠牲を強いる移民政策は採るべきではない。そもそも国民は国を構成する構成員(主権者)であり、“労働力”ではない。工場にいる間は“労働力”であるとしても、それ以外の時は他の人と変わらない国の構成員(国民)である。単に“労働力”の視点だけで、“移民”の可否を論じたり判断するのは大きな誤りである。
 
 仮に労働力の不足が事実であったとしても、不足を理由にした
外国人の導入(移民)は、いずれ単なる“労働力”では済まされなくなり、やがて国の根幹を揺るがし、悔いを千載に残す。
 かつて
旧西ドイツは戦後の自動車産業などの労働力不足を理由にして、600万人のトルコ人移民を受け入れたが、その後経済成長は低下して、移民を受け入れなかった日本に経済成長で追い抜かれた。

 今回の提案で
追加が示された製造業、農業などの9の業種が熟練技能に該当するとは到底考えられない。事実上は無制限である。
 偏差値の
低い人達に大きな犠牲を強いて、社会の劣化(少子化を含む。少子化の原因は未婚の増加であり、その一因は“金の卵”が消滅し、若者が困窮化したことにある)を深刻化するだけの移民受け入れは日本の自殺であり大きな誤りである。

令和5年4月29日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ