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農林省予算は農業(農民)に対する公的資金の投入

 都市銀行等の各行にいわゆる“公的資金の投入(注入)”が決まりました。これに対して、国民の血税で民間銀行の不始末の埋め合わせをするものだとして、強い批判があります。公的資金の投入とは曖昧な表現ですが、今回は政府による優先株式の購入です。つまり銀行に投資することになるわけです。将来、計画に基づき政府が株式を売却することで返済されるもので、その間の配当もあります。議決権がない代わりに普通の株式よりも、利回りで優遇されているそうです。

 同じ“公的資金の投入”と言っても、以前の住専の破綻処理の時のように、農協の融資の焦げ付き分を、国が財政支出で損失補填したのとは根本的に異なります。この違いを無視して、十把ひと絡げにして、“公的資金の投入”というのは正確な報道とは言えず、誤解を招く報道です。
 そして、よく考えてみると、農民に対する公的資金の投入はこれに止まらないことに気づきます。毎年の農林省の予算を見ると、農業用水整備、農道整備、農産・畜産の生産調整助成金、農産物の価格安定等に、何兆円もの巨額の税金が投入されています。これは、配当も、返済も必要ない資金の投入です。このような農業に対する巨額の血税投入を何ら問題視せず、金融業に対する公的資金の投入(投資)に、目くじらを立てるのはなぜでしょうか。

日本経済にとって金融業の重要性は、農業に劣るものではありません。厳しい国際競争の中で営業している点から考えれば、手厚い保護のもと、国際価格の何倍もの価格で国民に米を供給している農業よりも、国の支援を受ける資格があると思います。それに、今回の金融機関の経営不振は、企業の経営者にその責めをすべて負わせるべきものではありません。国の経済政策のあやまり(バブル経済)が最大の原因でもあるのです。農業以外の製造業、サービス業でも国の補助、支援を受けている産業は少なくないと思います。農業を特別扱いし、金融業を白眼視するのは正当な理由がありません。その根底には、江戸時代の士農工商以来の職業に対する偏見があると思います。

平成11年3月31日     ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ