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幹部公務員の任免

 5月24日の産経新聞の「はじけないバブル 米拡大景気の9年目 雇用の流動性 世界中から有能な人材」という見出しの記事を読みました。その中で「・・・首都ワシントンでは政権が代わると、閣僚以下各省庁の局長クラスまで、約三千人が一斉に入れ替わる。特に共和、民主の政党間で政権交代が行われた場合は、なおのこと激しい異動になる。大学や民間の有能な人材がスカウトされるのだが・・・」と報じられています。アメリカでは選挙によって選ばれた政治家が、幅広く有能な人材を募り、官庁の主要なポストにつけることができます。

 これに対して、日本ではいくら首相が替わっても、幹部公務員が一斉に異動するという事がありません。細川、村山の非自民党政権になっても、幹部公務員は、政権交代などなかったかのような無風状態のもとで、省内での順送り人事が続いています。日本では、政治家を補佐し、政治家を支える幹部公務員といえども、外部から自由に任命することができず、省内から年功序列に従って任命しなければなりません。日本の政治家には、幹部公務員を自由に任免する権限が、実質的にないと言っていいと思います。

 各省庁の数万人の公務員に対して、国民の代表である政治家(大臣)が自由に任免できる高級公務員がゼロでは、政治家の意図する行政ができるわけがありません。特に、公務員の削減を伴う行政改革、公務員の綱紀粛正など全く期待できません。

 東京都知事だった青島幸男氏は、東京都知事になったものの、四年間ほとんど何もできずに知事の座を去りました。幹部公務員の任免の不自由さは地方自治体の場合も同じです。青島知事が役所の外部から自由に任命できるのは、副知事だけです。誰が知事になっても、何万人もの職員の中へ単身乗り込んで、改革を成し遂げるのは非常に困難だと思います。青島知事が少なくとも100人ぐらいの幹部職員を自由に任命できたら、もう少し行政手腕を発揮できたのではないでしょうか。

 今の日本の公務員制度はあまりにも硬直化しています。公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利のはずです。それなのに硬直化した公務員制度によって、その権利が形骸化しています。国民多数の意志を行政に反映させるには、国家公務員法、地方公務員法、労働組合法、人事院制度、上級職制度などを見直し、国民の選挙によって選ばれた政治家が、自由に、外部から幹部公務員を任命できるようにすべきであると思います。

平成11年6月9日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ