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公務員天国を作った人事院

 公務員給与の人事院勧告が発表されました。ボーナス(期末、勤勉?手当)こそ減額になりましたが、昨年の0.76%(定昇をのぞく)に続き、0.28%のベアを勧告しました。たとえわずかではあっても、この不況で、財政難の下でのベア勧告に疑問を感じます。民間の給与であれば企業の業績によって決まりますが、人事院は国の財政事情を考慮しているのでしょうか。
 また、人事院は民間企業の動向をベア勧告の根拠にしていますが、公務員は民間企業と同じような仕事を、同じようにしているのでしょうか。賃金は労働の対価です。公務員の労働生産性、労働密度が民間企業と同じでなければ、民間準拠の主張は根拠がありません。公務員の方がいいところ、楽なところは無視して、都合のよいところだけをつまみ食いしています。

 人事院の職員(総裁も、人事官も)も同じ公務員であり、国民の代表でもなければ、第三者でもありません。勧告により、公務員の給与が引き上げられれば利益を得、引き下げられれば不利益となるという点では他の公務員と同じです。人事院が、自分たち公務員の不利益になる決定をするとは考えられません。人事院制度とは、使用人である公務員が国民の意思を無視して、勝手に自分たちの給与引き上げ案を決めているという問題のある制度だと思います。

 人事院制度は公務員の労働基本権制約の代償措置と言われていますが、労働基本権とは本来民間企業の労働者を対象としたものだと思います。これをそのまま公務員に適用しようと言うのは誤りです。
 労働基本権とはその前提条件として、企業家(使用者)の存在や、企業間の競争、その結果としての倒産、失業リスクの存在があると思います。そのような労働基本権の暴走を抑止する環境があるからこそ、労働基本権はバランスのとれた権利として必要なのです。ところが、公務員には名目上の使用者(国民)は存在しても、実質的な使用者が存在せず、企業間の競争と、それにともなう倒産、失業リスクが存在ません。このような、使用者不在、外部との競争不在の環境で、民間と同じ労働基本権を認めたら、その権利は暴走して歯止めが利きません。日本の労働運動で、かつて公労協、私鉄総連など企業間の競争と、それにともなう倒産、失業リスクのない業界でストライキが頻発したことを思い出す必要があります。本来公務員に民間と同一の労働基本権は適当ではないのです。従ってその労働基本権が民間企業に比べて、一部制約されているからといって、代償措置が必要ということにはならないのです。

 人事院のホームページによると、「人事院とは内閣の所轄の下に置かれ、国家公務員の人事管理を所掌する、政府から強い独立性を認められた行政機関です。人事院の役割としては、公務員人事管理の中立性、公正性を確保し行政に対する国民の信頼に寄与すること、労働基本権制約の代償として労使関係の安定と公務員給与等に対する国民の納得に寄与すること・・・ 」とあります。

 この、「強い独立性」とか、「中立性」、「公正性」とかは一体、誰から独立し、誰に対して中立と言うことなのでしょうか。国民多数の信任によって成立している「政府」から独立して、中立であることが「国民の信頼に寄与」することになるのでしょうか。わが国の政府は国民の意に反した存在なのでしょうか。このような発想は、「社会党的発想」、「朝日新聞的発想」だと思います。総裁、と二人の人事官がどのような経歴の人かは知りませんが、所詮、官僚、公務員に過ぎません。公務員の人事政策に国民の代表である政治家が関与できず、公務員の給与改定案が、総裁以下人事院の公務員の自由になるという人事院制度が、「国民の納得に寄与」するとは到底考えられません。

平成11年8月15日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ