H28
公務員の焼け太り

 8月25日警察庁が「警察改革要綱」を発表しました。8月25日の産経新聞は、「警官1万数千人増員へ」、「苦情申し出制度新設」という見出しで、次のように伝えています。

 「神奈川、新潟両県警の不祥事を契機に警察改革の具体策を検討していた警察庁は25日、国民の苦情を適正に処理する「苦情申し出制度」の新設や、全国7カ所にある管区警察局の総務部を総務監察部に改変する監察機能強化策を柱とした「警察改革要綱」を発表した」
 「監察体制の強化では、各管区警察局の総務部を総務監察局に改変し、警察庁の監察官を2人増員、都道府県警の主席監察官を国家公務員とする
 「警察庁は警察改革に伴い、平成13年度の概算要求で、初年度分として2,755人の増員を要求。・・・警察庁は今後も同規模の増員を続け、数年間で1万数千人を増やしたいとしている」


 ちょっと振り返るだけでも、神奈川県警、新潟県警、栃木県警、兵庫県警と数え切れないぐらいの不祥事、職務怠慢が続出したにもかかわらず、大半を「戒告」、「訓戒」などの甘い内部処分でお茶を濁し、その上警察官の大増員とは、一体、警察は何を考えているのでしょうか。本当に反省しているのでしょうか。

 「各管区警察局の総務部を総務監察局に改変し、警察庁の監察官を2人増員、都道府県警の主席監察官を国家公務員とする」と言っていますが、不祥事の原因は監察部門の人手不足ではありません。人手が足りないために監察が行き届かなかったのではありません。新潟県警の監察では、監察官が監察を途中で切り上げ、宴会をしていたのです。このような状態で監察官を増員しても、宴会のメンバーが増えるだけです。名前を変え、増員したところで何の改善も期待できません。それに、新潟県警を監査していた中田好昭・関東管区警察局長は国家公務員です。都道府県警の首席監察官を地方公務員から国家公務員にして、一体、何が期待できるのでしょうか。

 警察の不祥事件の原因は、外部との競争原理が働かず、学歴偏重で不公平な人事制度や信賞必罰のない弛緩した労務管理などにより、組織が制度疲労を起こしていることが原因です。それを正すことなく、増員したところで不祥事はなくなりません。それに増員すれば莫大な人件費がかかります。そのコストは誰が負担するのでしょうか。現行の賃金水準を引き下げて捻出するのでしょうか。彼らのコスト意識の欠落にはあきれるばかりです。

 警察ばかりではありません。公立学校でも事件、不祥事が続いていますが、文部省が考えているのは、「少人数学級」、「複数担任制」という教師の増員です。民間企業では不祥事があれば、客離れ、売り上げ減少、リストラとなります。不祥事件があったら、今まで以上に頑張らなくてはならないのが普通で、「増員」など問題外であると思います。

 今回の「警察改革要綱」は警察庁が作ったそうですが、公務員にこのようなことを考えさせても無駄だと思います。不祥事の当事者達に改善案を作らせるのは、ドロボーに防犯対策を作らせるようなものです。公務員は高級官僚であっても、下級公務員であっても、しょせん使用人としての発想しかありません。使用者としての発想ができない人達です。高級官僚は本来そうであってはいけないのですが、残念ながらがらわが国では高級官僚も「雇用されている人」であって、苦痛を伴う改革を指導できる人達ではないようです。

平成12年8月26日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ