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災いを福に転じる公務員

 日経新聞は9月30日の、「原子力安全、官の組織増強は有効か」と言う社説の中で、次のように言っていました。

 「昨年の9月30日に茨城県東海村の核燃料加工施設JCOで起きた最悪の臨界事故から1年、原子力の信頼回復を旗印に、官の権限と組織がいっきに膨らもうとしている
 「来年1月の省庁再編では・・・独立機関『原子力安全・保安院』ができる。・・・『原子力保安検査官』と、防災体制に目を配る『原子力防災専門官』という新設のお目付け役100人が、全国の施設に常駐する。保安院全体で300人近くが、原子力の安全規制にかかわるという」
 「・・・原子力安全委員会は、すでに事務局を増員しており、内閣府に移る来年1月には非常勤の技術参与を含めて、従前の5倍に当たる100人にする計画だ」


 今回の原子力の安全問題に限らず、事故が起き、国民から役所の責任が指摘される度に、公務員は増員と規制強化で応えます。自らは何の努力もすること無しに増員を図り、災いを福に転じています。これではいつまで経っても規制緩和、行政改革などできるはずがありません。どうにかする方法はないのでしょうか。
 役所の従来の仕事を見直し、既存の組織の人員削減を図り、安易な増員を認めないことはもちろんですが、公務員に増員の口実を与えないことも大事だと思います。

 今回の東海村の原子炉事故に限らず、水俣病や薬害エイズ事件のような、公害事件や薬害事件などの損害賠償訴訟では、当事者である企業の他に、国が監督責任が問われて訴えられているケースが多いように思います。この「国の監督責任を問う」という発想が、規制の強化、公務員の増加を招く一因になっていると思います。

 国が訴えられるのは役所の怠慢に事故の一因があるからで、役所の責任を不問にするわけではありませんが、それにして、もわが国ではこの種の国家賠償訴訟が多いのではないでしょうか。訴訟大国と言われるアメリカでは、訴えられているのはほとんどが企業であって、わが国のように頻繁に、連邦政府や州政府などが訴えられているのはあまり聞いたことがありません。

 国が監督責任を問われて訴えられ、訴えられるからさらに規制を強め、役所の権限を強化しよういう悪循環に陥っています。公務員がこれ以上増加するのを阻止し、規制緩和を促進するために、発想を転換し、事故の損害賠償責任追及に当たっては、企業の自己責任を重視すべきだと思います。官僚の怠慢に対する責任追及は国家賠償でなく、懲戒免職や、解任、降格などの人事上の厳しい処分でいいと思います。

平成12年10月1日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ