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日銀の処分は厳しいか

 日銀の営業局が長年にわたり、組織的に内部の機密情報を日本興業銀行に漏洩していたことが明らかになりました。こうなるともう単なる過剰接待ではすまなくなります。
 接待汚職が起きる理由は便宜を図ってもらうため、あるいは情報を得るためとされています。公務員が情報を公開する基準がありません。彼ら公務員は情報を隠そうと思えば何でも隠せるし、出そうと思えば何でも出せるのです。それを接待を受ける材料にしているのです。接待をしなければ何も教えてもらえないし、浴びるほど接待をすれば何でも教えてくれるのです。しかしいくら何でも教えるとは言っても、機密情報まで漏らしたことは犯罪行為であり、組織に対する背信行為です。日銀はそのような認識の下に職員の処分をしているのでしょうか。

 先日接待汚職に関する日銀の処分が発表されました。新聞によっては「例のない厳しい処分」と報じていますが、いったいこの処分のどこが厳しいのでしょうか。これが例のない厳しさというのなら、それは今までの例が甘すぎたということに他なりません。懲戒免職、諭旨免職はゼロ。停職も降格もなし。「けん責」、「戒告」、「厳重注意」。表現は違っても口先だけの処分に過ぎません。人数だけは98人と多数に上っていますが人数が多いことはそれだけ腐敗が広がっていたことを意味しますが、厳しいことを意味しません。逮捕され懲戒免職になった吉沢とは天国と地獄ほどの違いがあります。彼一人が飛び抜けた悪党だったのでしょうか。そうではありません。彼の他にも接待の見返りに機密情報を漏らしていたものはいたのです。なぜ日銀は国民の前にすべてを明らかにしないのでしょうか。吉沢が刑事処罰プラス懲戒免職ならば、あと懲戒免職と諭旨免職併せて10人ぐらいいないと、不公平でバランスがとれません。
 所詮内部では厳しい処分などできっこないのです。他人(金融機関)に厳しく自分に甘い典型です。

 また、事件発覚後就任した速水総裁、藤原副総裁や、事件に無関係の理事までが役員報酬の一部を返上しているのは、一見厳しいように見えますが、責任のない者まで同じ処分をすることで、かえって処罰されるべき者に対するけじめのなさ、甘さを露呈したと言えます。

 「減俸」、「給与カット」、「給与の返上」等が報じられていますが、新聞によって表現が様々でどれが正しいのかわかりません。給与の返上は処分ではないと聞きます。以前ペルーの人質事件に関してだったと思いますが、外務省の幹部職員が同じように給与の一部を自主的に返上しました。そのときにこれは処分ではないと報道されていたように記憶しています。報道は正確にすべきです。日銀が身内に対する甘い処分で、お茶を濁そうとしていることに対する指摘が不十分だと思います。彼らの罪に対する認識が甘いと思います。

平成10年4月12日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      H目次へ