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公務員と学歴主義

 11月9日の読売新聞に、「“高卒職場”大卒初の過半数」という見出しの記事があり、次のように報じられていました。

 「人事院は9日、2000年度の国家公務員V種試験(高卒程度)の合格者6,293人を発表した」
 「合格者に占める大卒者の割合は51.9%で、85年に現行のV種試験が始まって以来、初めて5割を超えた」
 
「大卒の合格者は、受験資格が20歳未満または21歳未満となっている行政事務、税務、技術系では42人(2.0%)しかいないが、25歳まで受験できる郵政事務では3,221人(76.1%)に上った」

 郵政事務以外は、受験資格が20歳未満、または21歳未満となっていて大卒者の受験を認めていないため、2,060人の合格者の内大卒はわずか42人(2.0%)にとどまっているのは、数年前に人事院がV種の試験で大卒の合格者が増えたことに対して、高卒者の雇用を確保するという口実で、受験年齢をわざわざ引き下げ、大卒者を排除したからです。

 従来、高卒程度とされてきた職種の募集に、大卒が応募し採用されたら何か困ることがあるのでしょうか。高卒程度の待遇しかしないのに、大卒が多数応募してきたら、良い人材が採れたと喜ぶのが普通ではないでしょうか。高卒者の雇用確保を口実にしていましたが、公務員の採用は失業対策事業ではないはずです。大卒者を排除する正当な理由がありません。

 今どき民間の大企業で、不要な年齢制限をわざわざ設けて、大卒の応募者を排除し高卒の人間の中から採用すると言うようなバカなことは考えられません。学歴の要件で「高卒以上」というのはあっても、「高卒以下」というのは聞いたことがありません。職員採用の常識では考えられません。

 人事院がV種の採用試験から大卒を排除したのは、公務員の身分制度(学歴社会)を守るためだと思います。V種の中で大卒が多数になり、U種とV種を分けることの意義が問いなおされる事態を恐れたのだと思います。これがきっかけとなって東大を頂点にした学歴を基準にした身分制度が崩壊することを恐れたのだと思います。T種、U種の身分にあるものが、身分制度による自らの地位の安泰を確保するために、あえてV種の職員には能力の劣るものを採用しているのだと思います。

 進学率が向上し高学歴化が進んだ結果、高卒者が減り大卒者が増えている以上、職場で大卒者の採用が増えるのは当然のことと思います。いつまでも第V種(高卒程度)という枠を残している人事院の考え方は改められなければならないと思います。

平成12年12月17日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ