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警察は企業の過失事故があるとなぜ張り切るのか

 2月3日の読売新聞は、日航機ニアミス事故について、「捜査と調査 同時進行」、「『機長の対応』波紋」、「米では再発防止優先」、「刑事免責で『真相』」などの見出しで、次のように報じていました。

 「・・・日本航空機長組合によると、今回の事故では、907便が羽田に着陸した直後に、コックピット内に突然3人の捜査員が入ってきて、渡辺機長に事情聴取しようとした。副操縦士ら3人の乗員は機長を残して飛行機を降ろされたという。このときは、まだ重軽傷を負った乗客の搬出が終わる前の段階で、さらに聴取への同行を求められると、「(国土交通省への)機長報告が先」と判断した機長と、行く行かないで1時間近く押し問答になったという」

 このような事故は本来「事故」であって、犯罪ではありません。業務上過失傷害などは犯罪としては微罪であって、微罪の捜査で警察は警察権を濫用すべきではありません。航空機事故においては、原因の究明と再発防止が最優先されるべきです。刑事責任を問うべきかどうかなどは、ずっと後の優先順位の低い問題です。

 航空事故調査委員会のように他に原因を究明する機関がある場合は、調査はそこに任せ、警察はその結果をみて刑事責任を問うべきか否かを判断すれば十分です。警察独自の原因調査など必要ありません。警察には独自の調査能力もなく、結局は専門家の判断に従うわけですから、警察の調査は調査対象者に二重の負担をかけるだけです。

 警察はこの前の雪印の食中毒事故でも、捜査本部まで作って異常に張り切っていましたが、この事件は食中毒事故であって毒物混入事件ではありません。原因調査、再発防止は本来保健所などの自治体や、厚生労働省の仕事です。警察は事故を事件にし、さらに犯罪にして関係者を処罰することばかり考えています。

 警察がこのような企業の過失事件に張り切るのは、泥棒・強盗と違って、犯人は逃げも隠れもせしないので、捕まえるのが簡単で、しかも、おとなしいので仕事が楽で、反企業ムードを煽ればPR効果が大きく、警察の汚名挽回に好都合と考えているからです。
 警察は泥棒、強盗、ひったくりの犯人逮捕など本来の任務に力を入れるべきです。過失事故は犯罪とは言い難く、その調査は警察本来の仕事ではありません。お門違いの所でハッスルするのはみんなの迷惑です。

平成13年2月4日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ