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最大の抵抗勢力は公務員

 政府の特殊法人等整理合理化計画が決定したのを受けて、朝日新聞、読売新聞は社説で次のように論評していました。

特殊法人改革――竜頭蛇尾に終わらすな (朝日新聞12月19日社説)
 政府が決定した整理合理化計画では、163の特殊法人・認可法人のうち、17が廃止、45が民営化、38が独立行政法人に改組されることになった。・・・
 しかし、本当に日本の構造改革につながる成果を上げた、とは到底言えない。肝心な点がいくつも先送りされている。
 日本道路公団には民営化の道筋がつけられたが、中身はあいまいだ。政府系金融機関の組織統合は、反対論に封じられた。
 ・・・この先、族議員や官僚たちの巻き返しで改革のスピードが遅れたり、具体案作りで詰めを怠ったりすれば、竜頭蛇尾に終わりかねない。


「聖域なき改革」とはこの程度か (読売新聞12月19日社説)
 ・・・だが、「聖域なき構造改革」を掲げる小泉政権が最優先で取り組んできたにしては、あまりに薄味であり、不十分と言わざるを得ない。
 廃止される17法人の多くは、業務が似かよった他の法人に統合されたり、独立行政法人化して、事実上、存続するものがほとんどだ。
 看板を掛け替えただけで、中身がそのままなら、改革への国民の期待を裏切るものでしかない。・・・
 計画の実行は、省庁に任される。しかし、官僚が、天下り先確保などのため組織・業務の温存に走りがちなのは、これまでの経験からも明らかだ。

 いずれも批判の矛先は小泉首相に向けられていますが、真に批判されるべきは「抵抗勢力」の人達です。抵抗勢力と言えば、自民党の族議員を指すことが多いようですが、本当の抵抗勢力は公務員(高級官僚及び官公労組の組合員である下級公務員、特殊法人の職員)であると思います。

 特殊法人の改革とは結局、統合、独立行政法人化、民営化(特殊会社化)にとどまっていて、完全な廃止はほとんどありません。小さな特殊法人を統合して巨大な特殊法人にすることが改革になるでしょうか。特殊法人を独立行政法人にしても、特殊な株式会社にしてもそれは単なる看板の掛け替えに過ぎないと思います。民営化というのであれば、特殊法人を廃止して、一般の民間企業に業務を開放しなければ、民営化とは言えません。

 特殊法人の改革は廃止、統合、会社組織化のいずれであっても、必ず職員の削減、解雇を伴うべきものだと思いますが、統合や民営化(特殊会社化)が決まった日本道路公団や、都市基盤整備公団、住宅金融公庫も、雇用の問題が全く報じられていません。雇用を維持することが当然の前提になっているように思われます。雇用を維持することを前提にして改革が出来るでしょうか。私はそんな改革はまやかしであると思います。
 雇用を維持することを前提に考えるから、独立行政法人にするとか、特殊会社にするとか、組織を統合するとかの単なる看板の掛け替えに終わってしまうのです。

 痛みのない改革はあり得ないという観点に立てば、職員解雇は避けて通れない問題だと思いますが、誰もがこの問題を避けて通っています。なぜでしょうか。それは解雇は官公労組やその支持政党の強力な反発を招くからです。解雇は口にすることさえ出来ないタブーなのです。小泉改革に対する目に見えない、最大の抵抗勢力は公務員、官公労組であると思います。

平成14年1月4日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ