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「歴代の外務大臣は何をやってきたのか」と言う前に

 4月4日の産経新聞のコラム「産経抄」は外務省の鈴木問題について、次のように言っていました。

 「四年前の秋、外務省と大蔵省などの課長級のキャリアが五人、ある案件の書類を持って鈴木事務所を訪れた。と、宗男氏は『何で文書にする前にオレのところに説明に来ない!』といって全員を一発ずつ張り倒した」
 「・・・もう一つ納得がいかぬことがあった。ここまでムネオ旋風の暴走を許してきた歴代外相の政治責任が問われていない点である。省内の退廃に見て見ぬふりをしてきた政治家の罪も重く、大きい。池田行彦、高村正彦、河野洋平の各氏などの外相は一体何をやってきたのか・・・


 確かに歴代外務大臣は、何もやって来なかったと言われてもしょうがないと思いますが、それを言うなら他の省庁も同じだと思います。一体、なぜ大臣達は何もしないのでしょうか。それは、大臣には実質的な権限がないからだと思います。

 4月1日の読売新聞には、「『鈴木色』一掃 大使の抵抗」という見出しで、外務省の東郷オランダ大使が、外務大臣の更迭命令に公然と抵抗し、外務省内に「きちんとした調査と理屈付をしないと、あとで不服審査を申し立てられるかもしれない」と緊張した空気が漂い、外務大臣が更迭の理由付を理論武装したことが報じられていました。

 外務大臣が一大使を更迭するのに、なぜ、理論武装が必要なのでしょうか。本来、大使を更迭するのに何の理由も要らないと思います。一大使の更迭に「理論武装」が必要だとすれば、現在の公務員制度は、ばかげているという他はありません。前任の田中外務大臣も、官僚の抵抗にあって思うような人事が出来ませんでした。

 このように大臣には、実質的な権限(特に人事権)がありません。内外から自由に適任者を主要なポストに任命したり、考え方が合わない幹部を罷免することが出来ず、官僚の厚い壁に阻まれています。これは全ての省庁に共通して言えることです。そして、この根底には「公務員の身分保障」「公務員の政治的中立」の問題があると思います。公務員の身分保障問題の背後には官公労組があり、公務員の政治的中立の背後には人事院が控えています。この「官公労組」、「人事院」体制に手を着けない限り、公務員の綱紀粛正も、行政改革も進まないと思います。

平成14年4月6日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ