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金融庁の「みずほ」バッシング

 6月14日の読売新聞は、大規模なシステムトラブル引き起こしたみずほ銀行に対する、金融庁の検査結果を次のように報じていました。

 
「通知書は『特に留意を要する事項』として、7点を指摘。@グループ内での不適切な報告体制 A脆弱な統合プロジェクト管理体制 B客観性を欠いたシステム開発体制 C当局への不適切な対応・・・結論として、グループ全体で『最低限必要な準備を怠った』と断定し、運営体制の抜本的な見直しを迫った」

 金融庁にどれだけシステムの専門家がいるのかわかりませんが、今回のシステムのトラブルについて検査をし問題点を指摘をするのであれば、まず、技術的な原因や問題点の指摘があって、しかる後に管理体制の不備が指摘されるべきだと思いますが、報じられている検査結果をみると、具体的な技術上の原因や問題点の指摘が全くなく、管理体制のみを批判しています。しかも、その管理体制の批判にしても極めて抽象的な内容で、金融庁の検査が、原因の究明と再発防止に役立つのか大変疑問に思います。

 そして、6月20日の読売新聞には、金融庁のみずほ銀行に対する改善命令が、次のように報じられていました。

 
「業務改善命令は、@みずほが報告した改善・対応策、責任明確化の確実な実行 A(店舗統合の日程など)詳細な計画が必要な場合は速やかに計画を提出 B実施状況を三か月ごとに報告する―――の三点」

 いったい何の意味があるのか、何を命令しているのかわからない、中身のないお粗末な命令です。この中身のない金融庁の命令を受けて、みずほ銀行は前田社長以下117人の役員全員の処分(この処分も金融庁の意を受けてのものだと思いますが)を発表しましたが、全役員を処分するなどと言うのは、責任の所在がどこにあるのかさえわからない、全く意味のない処分だと思います。役所で事件や不祥事が起こると、公務員は責任を分散することによって自らの保身を図るために、しばしばこのような意味のない“大量処分”を行いますが、金融庁は民間企業にまで悪習を強要しています。

 金融庁がこのような役に立たない“検査”をし、中身のない“改善命令”を発し、責任の所在さえ明らかにならない“大量処分”を科したのは、民間の金融機関に比べて、能力も経験も劣り、「権力」以外に何もない役所が、何もすることができない中で、自らの存在感を示す必要があったからだと思います。

平成14年6月23日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ