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竹中リポートは机上の空論、銀行国有化は日本経済の死

 11月30日の読売新聞は、「金融工程表」、「銀行を追い込むだけでいいのか」という見出しの社説で次のように言っていました。

 
「銀行を追い込むことを目的化し過ぎていないか」、「・・・いたずらに国有化を迫る手法は、銀行株の急落を招いたり、銀行の自助努力をくじく恐れも強い」、「金融界では、『竹中プランは銀行の国有化を視野においたもの』との見方が強い。工程表を見る限り、国有化の布石を打ったものと見られても仕方がない」、「新たな不良債権を生むデフレを防ぐための有効なマクロ政策を、政府が示さないのも疑問だ。銀行に無理な押しつけをするだけでは、問題解決にならない

 読売新聞は、その前の10月27日の、
「激震竹中リポート」、「不良債権増 主因はデフレ」と言う見出しの記事で、「(竹中リポートは)不良債権処理の遅れの責任の多くを、銀行だけに押しつけた形とも言える。しかし、報告案の認識とは逆に、ここ数年の不良債権の増加は悪性のデフレが主因であり、銀行の努力を超えた次元で増え続けていることが明らかだ」と言っていました。

 現在の銀行の不良債権の増加の原因はデフレの進行であり、銀行経営者の責任ではないことが非常にわかりやすく論じられていました。現在のデフレが進行し賃金カットが進めば、やがては住宅ローンでさえ不良債権になると思います。不良債権の増加が特定の銀行だけの問題ではなく、すべての銀行が不良債権の重圧に苦しんでいると言うことは、この問題が単なる民間企業の経営の問題ではないことを明確に示していると思います。人気取りの銀行責任論、銀行経営者責任論は責任転嫁であり馬鹿げているとしか言いようがありません。

 それに、仮に銀行が国有化するとしたら、一体誰が経営者になるのでしょうか。官僚に民間企業の経営者が務まるでしょうか。政治家に任命された経営者は政治的な判断を逃れられません。かつて、国鉄や電電公社が民営化され、今また、郵政事業や道路4公団の民営化が議論されているのはなぜなのでしょうか。国有では効率的な経営が出来ず赤字の解消は見込めないからです。官営は悪であり民営こそが善であるという認識の元に民営化が断行されたのです。銀行国有化構想はこの理念に全く反するものです。

 銀行の経営を政治と官僚に任せるようになれば、非効率と無責任がはびこり、不良債権の山を築くことは火を見るより明らかです。無能と無責任の塊のような官僚・公務員に民間経営者以上の銀行経営が出来るはずがありません。高額の退職金と天下りだけが関心事である官僚に銀行経営への介入の道を開けば、銀行が巨大な天下り先と化すのは時間の問題です。そうなれば、銀行は今以上の巨額の不良債権を抱えて破綻することは目に見えています。

 竹中経済財政・金融相の考えていることは、官僚・公務員が相応の良心と能力を持っていると言うことが前提になりますが、それは現実ではありません。竹中プランは机上の空論という他はありません。

平成14年11月30日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ