H57
「個人情報保護法」を悪用する公務員

 3月5日の読売新聞は、「個人情報保護法」、「過剰反応 ようやく対策」、「行政の後退、手つかず」という見出しで、公務員の情報隠しの実態を次のように報じていました。
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 「・・・全面施行後、耐震偽装事件の元建築士に対する聴聞内容を「個人情報」として開示しなかったり、幹部職員がキャリア官僚かどうかを示す『採用試験区分』や生年月日などを本人の同意がないことを理由に報道発表しなくなったりするなど、次々に問題が起きている」
 「『生年月日なんか、仕事に関係ないから出さなくていいでしょう』・・・最近、幹部公務員の情報をどこまで公開するか」、各省庁の担当者と議論になることが多い。問題なのは『個人情報』と言うだけで“思考停止”して非開示にする姿勢だ。・・・」
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 公務員が、「個人情報保護」を口実に、公務員についての情報提供を拒んでいますが、こういう場合の公務員の個人情報は法律による保護の対象なのでしょうか。法律は次の通りです。
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行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
第一章 総則
(目的)
第一条
 この法律は、行政機関において個人情報の利用が拡大していることにかんがみ、行政機関における個人情報の取扱いに関する基本的事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

(定義)
第二条
2 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

個人情報の保護に関する法律
第一章 総則
(目的)
第一条  この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

(定義)
第二条   −略− (「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」と同じ)
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 これらの条文に書かれた法律の目的や「個人情報」の定義等を見れば、これらの法律が意図しているのは、行政機関が取り扱う住民の個人情報や、企業が取り扱う大量の顧客情報の漏洩を防止することであることは容易に読みとることができます。

 この法律が公務に従事する公務員の氏名などを、個人情報として想定しているとは考えられません。この法律を盾にとって、公務員が公務の遂行に関して自分たちにの情報を明らかにしないことは、法律に対する過剰反応と言うよりも、法律の曲解、悪用であり、到底許されるものではないと思います。

 国民主権の民主主義国家に於いては、公務はすべて公開が原則であり、幹部公務員の身上や経歴等は公務の公正・公平を確保する上で、当然公開されなければならない情報だと思います。

平成18年3月5日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ