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国家無答責ならぬ、公務員無答責(公務員無責任)の原則

 6月5日の読売新聞は、「社保庁法案・参院審議入り 野党、『首相責任』に照準 年金問題、攻防激化」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 社会保険庁改革関連法案は4日の参院本会議で審議入りした。与党は、年金記録漏れ対策の年金時効撤廃特例法案とともに早期成立させ、年金問題の沈静化を図る考えだ。これに対し、野党は、安倍首相らの責任追及に照準をあて、徹底審議を求める構えだ。野党は、安倍内閣に対する不信任決議案の提出も検討しており、23日の会期末まで「年金国会」は波乱含みの展開が続きそうだ。
 4日の参院本会議で、民主党の山根隆治氏は「歴代の社会保険庁長官らの責任を他人事のように言及するのは、潔さに欠ける。国民は最終責任者のあなたに責任を求めている」と迫った。
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 今回の年金問題に関して、昨年就任したばかりの安倍首相に政治責任があるのかどうかはなはだ疑問ですが、一般論としては、行政府の不祥事に対してその最高位にある総理大臣、厚生労働大臣に監督責任があることは否めないと思います。
 しかし、当然のことですが両大臣に監督責任があることは、社会保険庁の職員達の当事者としての責任が不問にされ、免責されることを意味しません。彼らの怠慢・無責任は厳しく追及されなければなりません。

 しかるに、野党はもちろん新聞紙面を見ても追及の対象となっているのは、もっぱら自民党の政治家だけか、あるいはせいぜいトップの社会保険庁長官だけで、実際にデタラメな業務をしつつ今日に至るまで口を噤んでいた一般公務員に対する非難は皆無と言っていい有様です。監督者の責任のみを追及しても、当事者の責任を追及しなければ原因の解明も再発の防止もできません

 一方、昨年来民間企業である生保・損保業界では、保険金の不払いが続出しました。企業の怠慢は厳しく責められて当然ですが、このような不祥事においても、責められるべきは決して当事者だけではないはずです。監督していた者の監督責任も当然問われなければなりません。保険業界を監督しているのは金融庁です。

 金融庁は毎年多大な費用と手間をかけ、保険会社にも多大な負担を負わせて各種の立ち入り検査を行っています。保険金支払いに関しても当然検査項目になっていたはずです。しかるに、永年検査を続けながら、膨大な保険金不払いを発見できませんでした。しかも、問題が発覚してからは自ら再検査に赴くなどの労を取ることなく、企業に対して報告命令と行政処分を繰り返すのみで、自ら反省したり、監督責任を痛感する様子は全く見られません。
 この無能・怠慢の責めは、年金問題における総理大臣の監督責任よりもはるかに直接的で重いと思います。それにもかかわらず、金融庁の監督責任を追及する声はどこからも聞こえてきません

 公務員が監督者の立場にある場合は、監督責任は不問にされ、公務員が当事者の時は監督者の責任だけが追及され、結果として、いかなる不手際・不祥事件が起きようとも、よほどの破廉恥事件でも起こさない限り、公務員は決してミスの責任を追及されることがない、これが現在の公務員制度であり、これが諸悪の根元です。

 読売新聞は6月13日の「公務員改革法案 今国会成立にこだわらなくても」と題した社説で、官僚の立場を代弁していましたが、公務員制度が諸悪の根元である以上、公務員制度の改革こそが喫緊の課題であり、安倍総理が最優先で取り組むべき課題だと思います。

平成19年6月16日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ