H63
携帯・スマホ市場の抱き合わせ販売に問題意識のない公正取引委員会


 7月15日と8月19日の読売新聞は、それぞれ「ドコモ販売戦略 誤算 6月 転出超過拡大 重点機種の好調」、「ドコモ向け 2社攻勢 富士通・シャープ 冬の『重点スマホ』狙う」、と言う見出しで、次のように報じていました。
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2013.07.15
ドコモ販売戦略 誤算 6月 転出超過拡大 重点機種の好調

 ◆奨励金中止で帳消し 
 今夏のスマートフォン(高機能携帯電話)商戦で、NTTドコモの戦略が正念場を迎えている。一部機種の代金を割り引いて重点的に販売する一方、販売数に応じて代理店に支払う奨励金を一時停止し、契約成績の悪化を招いたからだ。ドコモは12日から奨励金を復活させたが、今後は、コスト増が利益を押し下げる懸念も出ている。(幸内康、小川直樹)
 ◎成果 
 ドコモは5月中旬から、ソニーの「エクスペリア A」と韓国サムスン電子の「ギャラクシー S4」のスマホ2機種に変更したドコモの顧客に代金を割り引く「ツートップ戦略」を展開している。他社への顧客流出を防ぐ狙いに加え、従来型の携帯電話をスマホに変更することで顧客が支払う通信料金は月平均1900円増えるため、収益基盤の強化にもつながる。
 エクスペリアとギャラクシーの
販売台数は6月末までにそれぞれ83万台、40万台にのぼり、一定の成果をあげた。
 ◎裏目 
 しかし、同じ電話番号のまま携帯電話会社を変更できる「番号持ち運び制度」による
契約数増減をみると、ドコモは6月、14万6900件の転出超過だった。件数は5月の13万5800件より悪化した。
 原因は、販売コストの大幅削減を狙って6月から販売店への奨励金をやめたことだ。KDDI(au)やソフトバンクモバイルも扱う販売代理店が、ドコモの機種を積極的に販売しなくなり、ツートップ戦略によるプラス効果を上回るペースで顧客が流出した。
(以下略)

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2013.08.19
ドコモ向け 2社攻勢 富士通・シャープ 冬の「重点スマホ」狙う

 携帯電話首位のNTTドコモが、冬の商戦で重点的に販売する機種選びが大詰めを迎えている。ソニーに加え新たに富士通とシャープが選ばれ、韓国サムスン電子が外れる見通しだ。メーカー各社はドコモの動きを凝視している。(幸内康、江沢岳史)
 ◇国内3社か 
 富士通とシャープが冬の商戦で投入する新型スマートフォン(高機能携帯電話)の「重点機種」に採用するよう働きかけを強めている。今夏の商戦でドコモが「ツートップ」として選んだソニーの「エクスペリアA」は、8月中旬までに約130万台と歴代トップの売り上げを達成した。サムスン電子の「ギャラクシーS4」も約70万台売れた。シャープと富士通は2社に大きく水をあけられた。
(中略)

 ◇競争促す 
 ドコモは今夏の商戦では投入機種を11種類に絞り、このうち2機種に販売促進費を重点配分する「ツートップ」戦略を採用した。メーカー間の競争を促すことで「特徴のあるいい端末」(加藤薫社長)を確保する狙いだ。
 重点機種に選ばれなかった
NECはスマホ事業からの撤退を決め、パナソニックはドコモへのスマホ供給を見送ることを決めるなど、ドコモの戦略はメーカーにも大きな影響を与えた。
 今夏にドコモの重点機種から漏れたシャープは携帯電話の年間売上高の下方修正を迫られた。富士通にとっても2013年4〜6月期連結決算が営業赤字となった一因となった。
 ドコモの冬商戦は、経営再建中のシャープにとって「家電製品との連携など事業展開の核になる通信技術を中核事業と位置づける」(高橋興三社長)との戦略の成否にもかかわる。

 ◇重い決断 
 ドコモにとっても
重点機種選びは重い判断となる。KDDI(au)とソフトバンクモバイルは、高い人気を持つ米アップルのiPhone(アイフォーン)を主力に据えることでドコモから契約件数のシェア(占有率)を奪ってきた。
 ドコモもアイフォーンの採用を検討しているが、ドコモ独自のサービスを展開しにくくなるため採用に踏み切っていない。冬の商戦で国内勢を主力とした戦略が不発に終われば、アイフォーンの採用も現実味を帯びてくる。

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 NTTなどの携帯電話各社は通信回線を提供(販売)する会社ですが、通信端末(携帯電話機、スマホ)も同時に販売しています。
通信回線と通信端末は本来商品としては別々のもので、セットで販売される必然性はないはずです。

 しかし、日本では通信端末も携帯電話会社が販売していて、二つの商品を別々に買うことができません。従って端末を買い換えるときに、今までとは別の携帯電話会社の販売になる端末機を購入すると、端末だけではなく、
通信回線の契約も別の会社に移さなければならないという不便が生じています。

 携帯電話会社各社の営業は、いかに携帯端末を多数販売するか、いかに人気のある端末を多数確保するかによって左右されるようになってしまいました。そのため販売効率を上げるために端末機の扱い機種を少なくしたり、機種によって消費者の動向とは無縁の販売政策上の価格を設定するようになりました。

 その結果、消費者は自分にとって
最良の通信回線と、最良の端末機を自由に組み合わせて選択すると言うことができなくなっています。
 また、携帯電話会社の営業・競争も
良質・低廉な通信回線の提供という本来の使命が置き去りにされ、消費者の利益を損なっています。

 一方端末機メーカーにとっても、電話会社の営業政策により(必ずしも消費者の意向ではなく)、不本意な形で市場から撤退せざるを得ない状況が生まれています。
 このような
直接消費者と取引をせず(携帯電話・スマホの多くはメーカー名、ブランド名がなく携帯電話会社のブランドのみが記されています)、携帯電話各社を介しての取引形態・営業が、メーカー間の健全な競争を歪め、日本のメーカーの競争力低下の一因となったと思います。
 このような電話回線と端末機の取引状態は
独占禁止法上の「不公正な取引方法」のひとつである「抱き合わせ販売」と考えるべきであり、禁止すべきだと思います。

 携帯電話、スマホは街の電気店、家電量販店で携帯電話会社を介することなく、自由に購入できるようにすべきです。
 
以前は固定電話でも電電公社が電話機を取り扱って(レンタル)いて、消費者が自由に電気店で電話機を購入・設置することができませんでしたが、その制約が撤廃されて消費者は回線契約とは別に、自由に電話機を街の電気店で選択・購入することができるようになり、その結果電話機メーカー間の競争が促進され、電話機自体の機能もめざましく進化し消費者の利益が著しく拡大しました。

 携帯電話・スマホにおいても、自由化(抱き合わせ販売の排除)が、消費者が最良の回線と最良の端末機を手に入れることを可能にし、消費者の利益拡大につながることは疑いないと思います。

平成25年8月30日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ