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公務員の責任転嫁−常軌を逸した金融庁のみずほ銀行バッシング−


 11月6日の読売新聞は、「みずほ追加検査 隠蔽なら刑事告発も 金融庁、異例の専従班」と言う見出しで、次のように報じていました。
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2013.11.06 読売
みずほ追加検査 隠蔽なら刑事告発も 金融庁、異例の専従班
東京朝刊

 金融庁は5日、みずほ銀行に対する追加の立ち入り検査に入った。暴力団組員らへの融資を放置した問題で、前回の金融庁検査で事実と異なる報告をした背景に、隠蔽の意図がなかったかどうかなどを徹底的に検証するとしている。みずほ銀のこれまでの説明を覆す事実が発覚した場合には、金融庁は、刑事告発も含めた対応をとる方針だ。(中根靖明)
 ■再検証 
 みずほ銀幹部は5日、金融庁の検査官が同日午前にみずほ銀本店(東京都千代田区)などに立ち入り検査に入ったのを受けて、「緊張の日々が始まった。もう失敗は許されない」と語った。
 金融庁はみずほ銀など3メガバンクに対する検査を年1回程度実施している。問題が見つかればその都度、翌年の検査で改善されているかどうかを確認するのが一般的だ。
 金融庁は、みずほ銀に対して昨年12月から今年6月にかけて検査を行ったばかりだが、一連の問題を重く見て追加検査に踏み切った。不祥事を受けて急きょ検査するのは、みずほ銀が2011年に大規模なシステムトラブルを起こした時以来とみられる。
 金融庁検査は犯罪捜査と違い、「金融機関が協力し、事実を報告するのが前提」(金融庁幹部)で進められる。しかし、今回のみずほ銀の誤った報告は、その前提を覆しかねないだけに、金融庁は専従の検査班を編成し、異例の態勢で臨む。
 ■焦点は 
 事実と異なる報告の経緯について、みずほ銀の第三者委員会は、事情に詳しい担当者1人の記憶に基づいて回答したことが誤りを招いたと結論づけた。
 第三者委は企業の不祥事に精通した弁護士ら3人で構成されたが、調査には強制力はなく、期間も業務改善計画の提出期限までの約20日間と限られていた。
 一方、金融庁検査では、取締役会の議事録の検証のほか、行員のメールの確認や頭取のヒアリングなどを行い、真相の究明に努める。うそをついたり、資料を隠したりした場合、刑事罰の対象となる。
 04年に金融庁が刑事告発し、元副頭取らが逮捕されたUFJ銀行の検査妨害事件では、検査で提出されたのとは別の資料を発見し、銀行側の隠蔽を暴いた。
 ■今後の流れ 
 追加の検査によって、前回の検査で事実を隠す意図があったり、問題融資に経営トップが深く関与していたりするなど、みずほ銀のこれまでの説明と大きく異なる事実が分かれば、金融庁は刑事告発したり、行政処分でもより重い業務停止命令を出したりする可能性がある。
 第三者委の報告の通り、担当者の記憶に頼ったことが誤りを招いたと検査で確認しても、みずほ銀の報告態勢が不十分だと判断すれば、再度、業務改善命令に踏み切る見通しだ。
 金融庁も「新しい事実が出てこないと処分は難しいが、厳しい世論の動向を見ることも必要」(幹部)とする。早ければ年内にも検査を終え、処分の必要性を判断するとみられるが、金融庁とみずほ側の見解が大きく分かれれば、長引く可能性もある。
 
 図=みずほ銀行への金融庁検査注目点と想定される対応
  
 写真=金融庁による立ち入り検査が行われたみずほ銀行本店(5日午前、東京都千代田区で)=竹田津敦史撮影
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 みずほ銀行がオリエントコーポレーションの提携ローンを介して、反社会的勢力(暴力団)に融資をしたことが厳しく追及されています。しかし、我々は真に摘発、断罪すべきはあくまで反社会的勢力であって、その商取引相手ではないことを再認識しなければなりません。

 暴力団も一般社会で存在する以上、様々な業者と商取引をしています。飲食店で飲食もするし、スーパーで買い物もします。新聞も購読するでしょう。住宅ローンで自宅マンションを買う場合もあるでしょう。提携ローンで高額商品(車など)を買うのも基本的には同じです。

 法令で禁止されているのであれば、提携ローンであろうとしてはいけないことはもちろんですが、あたかも銀行自身が反社会的勢力に加担したと言うがごとき認識は行き過ぎであろうと思います。見方によっては銀行自身も被害者と位置づけられると思います。

 暴力団排除条例が各地で制定され効果を上げているようですが、商店などによっては取引を断り切れず、それに伴って被害者であるはずの商店などが、犯罪者として訴追されかねない状況が発生しているようです。

 暴力団の摘発、断罪は本来警察の仕事です。暴力団との取引を断り切れない業者は被害者のはずです。それを警察はコペルニクス的大転換をして、
被害者を犯罪者として取り締まるようになりました。強い者を捕まえるよりも、弱い者を捕まえる方が仕事が楽で手っ取り早いからです。
 確かに効率だけから考えれば、その方が効率的である一面は否定できませんが、取引業者に苛酷な負担を負わせて、楽になったのは警察だけという、単なる公務員の責任転嫁の結果になりかねません。

 上記の記事で報じられている金融庁の集中攻撃は、銀行にとっては正に苛酷な負担そのものです。金融庁はマスコミを味方に付けて、あたかも正義の味方のごとくに振る舞っていますが、このような事件の時に監督先の苛酷な負担を一切顧みず、一方的な命令を繰り出すのは、社会正義の為と言うよりも、役人の自己防衛のためと言うことがしばしばです。
 金融庁内にみずほ銀行の専従班を作る暇があったら、反社会的勢力対策専従班でもつくって、反社会的勢力対応に苦慮する銀行のサポートでもした方が、まだ建設的な対応と言うべきです。

 マスコミはそれを見抜けず(見抜かず?)、金融庁と一緒になって民間企業であるみずほ銀行バッシングに余念がありません。苛酷な負担を強いられているみずほ銀行には同情の念を禁じ得ません
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 話がそれてしまいますが、今、社会的非難を浴びているもう一つの企業にJR北海道があります。JR北海道は直接的には経営者・職員の怠慢によって、数多くの事故を引き起こしています。みずほ銀行とJR北海道のどちらがより強い非難に値するかと単純に考えてみると、不注意・怠慢により数多くの事故を起こして被害を出している、JR北海道がより強い非難に値することは異論の余地がないと思います。
 ところが、監督官庁やマスコミの非難は、みずほ銀行に対するものより遙かに穏便です。

 もう一つ、ほぼ同じ頃(2010年と2011年)に苦境に陥って経営が破綻した2つの企業、日本航空(JAL)東京電力を比較するとどうでしょう。東京電力が破綻したのは巨大津波という天災が原因です。これに対して日本航空が経営破綻したのは、100%経営者と労働組合の責任です。同情すべき余地は全くありません。どちらがより強い非難に値するかと考えれば、日本航空である事も異論の余地がないと言えます。

 それにもかかわらず、監督官庁とマスコミは日本航空(JR北海道と同じ交通機関で
労働組合が強い)に極端に甘く、東京電力には比較にならない位厳しく臨んでいることは誰の目にも明らかだと思います。

平成25年11月7日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ