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公務員の労使交渉はすべて公開すべき

 5月15日の産経新聞は、「東大、昭和44年に労使合意 軍事研究禁止で確認書」という見出しで、次のように報じていました。
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東大、昭和44年に労使合意 軍事研究禁止で確認書
2014年05月15日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 
東京大学と同大職員組合が昭和44年に軍事研究と軍からの研究援助を禁止する労使合意を結んでいたことが14日、分かった。東大紛争時に労組の要求に応じ確認書を作成したとみられる。東大は現在も全学部で軍事研究を禁じており、憲法に規定される「学問の自由」を縛りかねない軍事忌避の対応が、労使協調路線のもとで定着していった実態が浮き彫りになった。

 労組関係者が明らかにした。確認書は昭和44年3月、当時の同大総長代行の加藤一郎、職員組合執行委員長の山口啓二の両氏が策定。確認書では軍学協同のあり方について「軍事研究は行わない。軍からの研究援助は受けない」とし、大学と軍の協力関係について「基本的姿勢として持たない」と明記した。

 産学協同についても「資本の利益に奉仕することがあれば否定すべきだ」との考えで一致し、そのことが文書に盛り込まれている。

 同大本部広報課は産経新聞の取材に「確認書は現存していない。当時、取り交わしがなされたかどうか分からない」とし、確認書に実効性があるかどうかについても明らかにしなかった。だが、職員組合は「確認書は成文化している。大学側から廃棄の通知はないので今でも有効だ」としている。

 政府は昨年に閣議決定した国家安全保障戦略で、産学官による研究成果を安保分野で積極活用する方針を明記しており、東大をはじめ軍事研究を禁じている大学側の姿勢が問われる局面となっている。
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 ≪合意文書骨子≫

 ・大学当局は「軍事研究は行わない。軍からの研究援助は受けない」との大学の慣行を堅持し、基本的姿勢として軍との協力関係を持たないことを確認する

 ・大学当局は、大学の研究が自主性を失って資本の利益に奉仕することがあれば、そのような意味では産学協同を否定すべきであることを確認する
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【用語解説】東大の軍事研究禁止

 東大は昭和34年、42年の評議会で「軍事研究はもちろん、軍事研究として疑われるものも行わない」方針を確認。全学部で禁じているが、複数の教授らが平成17年以降、米空軍傘下の団体から研究費名目などで現金を受け取っていたことが判明している。
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 国立大学が、国民に秘密でこのような協定を
労働組合と締結することは、国民の税金を使い、国民に奉仕すべき公務員としての根本理念に反すると思います。
 文書を交わしたことを指摘されながら、その
文書が現存しないとか、文書を取り交わしたかどうかも不明などと言う無責任さは、天下の東京大学の広報としても、一公務員としても、その無責任さは言語道断、言語に絶すると言うべきです。また、学問研究の自由を自ら束縛しているとも言えます。

 公務員
労組の問題は、今回に限りません。かつて大阪市では、公務員が市民に知られることなく多額の“給与外”給与を受け取っていたことが明らかにされました。当時の産経新聞は、「大阪市職員厚遇是正312億円 議会が予算案可決 労組なお対決姿勢」という見出しで、下記のように報じていました。
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大阪市職員厚遇是正312億円 議会が予算案可決 
労組なお対決姿勢
2005年03月31日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 ■市長退職金も半減

 職員厚遇問題で批判を浴びた大阪市の市議会で職員の福利厚生や諸手当など約百六十六億三千七百万円の削減を反映した平成十七年度当初予算案と、職員全員の団体生命共済加入への市負担など約百四十六億円の返還を求める十六年度補正予算案が可決された。労組側は厚遇是正に最後まで反対するなか、可決された削減総額は約三百十二億三千七百万円。山形市の単年度一般会計予算の市税収入に匹敵する額だ。“公務員天国”は大阪市だけの問題に限らない。全国各地で今もさまざまな公務員特権が温存されたままとされている。

 ≪安堵≫

 「無事可決されて正直ほっとした」−関淳一市長は、予算案可決にこう語り、安堵の胸をなでおろした。市議会(定数八九)では、自民、民主、公明の与党三会派(計七十三人)や無所属などの議員二人が両予算案に賛成。共産(十三人)などは一部予算案に反対したが、厚遇削減には賛成した。

 予算では制服として実施してきた
職員のスーツ支給約五億円のほか、条例外のヤミ年金・退職金の保険料を市で負担してきた二十五億円も取りやめとなった。職員が加入する団体生命共済の掛け金の全額七億円旅行券、結婚祝い金などの名目で互助会に支給してきた交付金四十一億円やさまざまな理由をつけ支出してきた「特殊勤務手当」五十億円なども廃止。支出された公費を互助組織にプールしてきた「プール金」百四十一億円も返還を求めた。

 しかし、改革の道程は必ずしも平坦(へいたん)ではなかった。
労組側は「全面対決」を掲げた。職員の大半が加入する「大阪市労働組合連合会(市労連)」はプール金の返還分を除く百六十六億円のうち、百六十二億円分に同意したが、係長級の管理職手当廃止には最後まで反対。プール金の返還も決定の差し止めを求め仮処分を申請した(その後取り下げ)。

 ≪合意ないまま≫

 予算は最終的に労使の完全合意がないまま市議会で可決された。

 「市民の苦情電話にひとつずつ説明させていただいた」と市労連幹部は神妙に話した。目にはうっすら涙を浮かべ「市側が十分に(予算について)説明したとはいえない」と対決姿勢を示し、市の人事委員会に手当存続を求め争う姿勢を示した。

 一方、厚遇を黙認してきた市側の責任も問われた。市議会では市長ら三役の給料について「責任を示す」として当初10%削減する案を提出したが、議会ではさらに10%上積み。関市長の退職金も50%削減する条例も可決された。「深い反省に立ち全力で市政改革に取り組む。これからがスタート」。関市長は落ちた信頼の回復に向けて市政改革のスタートラインに立ったことを強調した。
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 ◆旅行券、養育支援、ヤミ退職金… 恩恵 定年後まで

 宿泊旅行券や映画利用券、子の養育支援、退職後は第三セクターなどへの「天下り」…。公費による職員厚遇が問題になった大阪市では福利厚生事業が三百六十項目にものぼっている。二つのシミュレーション事例を見ると正に「揺りかごから墓場まで」。手厚い受給実態が浮き彫りとなる。

 【ケース(1)】

 Aさんは十八歳で大阪市に入庁。二十代で独身寮に住み、勤務しながら夜間大学を卒業。三十一歳で結婚後、両親と同居し、二人の子供を育て、現在は五十三歳で交通局勤務だ。

 Aさんは入庁と同時に、毎年、映画などの
観劇券(二万円)や指定宿泊施設の利用助成券(一万五千円)をもらい、これが退職するまで続く。職場では年間一万五千円の親睦(しんぼく)会費を使う。

 結婚するまで住む市内の独身寮は月額九千百円。二十歳で入学した夜間大学では、返還不要の奨学金計四万六千円を受け取った。
結婚や出産、子供の進学時は高額な給付金や祝い金が支給。扶養家族の死亡時は葬祭料や埋葬料に援助金が出る。三十歳からは毎年、リフレッシュのための旅行券、商品券支給のオンパレード。Aさんは保障された休日で、低料金の提携保養所に何度も家族旅行に出掛けた。

 【ケース(2)】

 Bさんは大学卒業後、二十二歳で入庁。最後は幹部で六十歳で定年退職し、今は六十四歳。Aさんと同様の多様な福利厚生の恩恵を受けてきた。Bさんは係長になるまで、市支給のスーツ(約三万円)を着用。四十代のころ、病気で三カ月の入院生活も個人保険金と別に一万九千円の見舞金が支給。治療費も掛け金の三倍以上にもなる公費負担で低額にできた。

 平成七年、阪神淡路大震災で自宅が損壊したが、損害保険金とは別に、給料の三カ月分の
見舞金百五十万円を手に。

 定年退職時は、退職金約三千万円以外にも、
総額約四百万円の「ヤミ退職金・年金」を受給。退職者招待旅行事業の十三万円の旅行券や慰労金二十七万円も受け取る。

 Bさんの再就職先は市の三セク。約八百万円の年間報酬をもらい、市が報酬を見直す前の退職で退職慰労金数百万円も受け取った。その後、三セクの子会社
「四セク」に“再天下り”。同じように約八百万円ほどの年間報酬を受け取っている。
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 ◆カラ残業で6331人処分

 職員厚遇で、批判を浴びた大阪市のカラ残業問題で、同市は三十日、平成十五、十六年度分として実際には残業していないにもかかわらず、超過勤務手当を受け取るなどした職員六千三百三十一人を戒告や文書訓告などの懲戒処分を行った。大阪市職員の全体の13%にあたる大量処分。

 超過勤務を命令する責任者である課長級を最も重い戒告とし、不正に受給し手当を返還する職員は文書訓告。監督責任として局長級の職員も処分を受けた。

 処分は、残業手当が取り消されたケースに押印した課長級職員ら百三十五人を戒告にし、実際に手当を受け取った職員や、管理監督責任のある部長・局長のほか、権限がないのに押印した職員ら四千二百三十四人を文書訓告にした。

 さらに千九百六十二人に口頭注意した。福島区役所は区職員数の95%の百六十七人が処分された。

 カラ残業問題は、昨年十一月に阿倍野区役所で発覚、市は全庁に支給した超過勤務手当の実態調査で本庁と区役所職員二千三百三十人の一万千九百四十九件(六千百三十八万円)の手当を取り消し、職員から市に返還させることにした。
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 大阪市で、このような事態が長年にわたり、市民の知るところ無く行われてきたのは、市議会のチェック機能の問題、市庁舎の記者クラブに“勤務”するマスコミの問題もありますが、
公務員の労使の交渉が公開(記者や市民の傍聴)の下ではなく、秘密裏に行われていたことが大きな原因だと思います。
 また常日頃、国民・市民(納税者)の権利よりも、公務員(労働者)の権利を声高に擁護してきた、労働問題の専門家と称する国公立大学教授達(公務員)の責任も軽くありません。

 そもそも、公務員の労使交渉では、本当の意味での“使用者”は存在せず、公務員同志の交渉ですから、馴れあいでこのような事態になることは十分予想されます。その意味で、市民の監視は不可欠です。
 
公務員の労使交渉はすべて公開されなければなりません。これは民主主義の根本です。

平成26年5月26日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ