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「観光立国」に未来を託せるのか −政府の観光立国政策に不安−


 6月6日の読売新聞は、「観光、国の基幹産業に 訪日客消費 目標4兆円」と言う見出しで、次のように報じていました。
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観光、国の基幹産業に 訪日客消費 目標4兆円
2015年6月6日3時0分 読売新聞

 政府は5日、
観光立国実現に向け、日本を訪れる外国人旅行者数を「2020年に2000万人」としてきた目標を前倒しするための行動計画をまとめた。日本経済を引っ張る基幹産業として観光を位置づけ、訪日客による消費額を今の倍の年4兆円に増やす。一方で受け入れ態勢の整備が急務となっている。(河野越男、戸塚光彦)



大都市集中から地方へ

  ■好調
 国内の消費が伸び悩む中、多くの外国人を呼び込み、宿泊や買い物でお金を使ってもらうことが重要になっている。中国人旅行者が日用品や衣料品を大量にまとめて購入する
「爆買い」なども目立つ。

 2014年の訪日客は、13年より3割ほど多い約1341万人だった。さらに今年1〜4月は前年同期より4割以上の増という勢いだ。「20年に2000万人」という政府目標について、太田国土交通相は記者会見で「おそらく前倒しされるだろう」と語った。安倍首相は5日の
観光立国推進閣僚会議で「この流れを一過性に終わらせることなく、全国津々浦々に観光客を呼び込む」と強調した。

  ■免税商店街
 行動計画は、観光が経済成長の重要な役割を果たすとして「稼ぐ力」を高めるべきだと指摘した。訪日客は、これまで大都市圏に集中する傾向があったが、もっと地方に行ってもらうようにする。

 地方の商店街などに手続きカウンターを整備し、まるごと「免税商店街」にする取り組みを進める。3大都市圏以外の免税店を、現在の約6600店から20年に2万店規模に増やし、地方で買い物をしやすくする。

 外国人に好まれそうな商品やサービスに対しては、「北海道」や「九州」など地方ごとのブランドマークを与えて認知度を高める。

 また、地方ごとに新たな観光周遊ルートも設けることも盛り込んだ。経済産業省も、囲炉裏を囲んだ食事など山里の暮らしや、和紙の手すき体験といった伝統芸能・工芸に触れてもらう事業に補助金を出して後押しする。

 ブラジルのパスポートを持つ人に対し、一定の期間内であれば何回でも来日できる「数次ビザ(査証)」の発給を開始するなどし、訪日客の一層の呼び込みを図る。訪日客が2000万人になる年には消費額4兆円、全国で40万人の新たな雇用を生むことが目標だ。

  ■課題は
 すでに訪日客の急増で宿泊施設が足りなくなっている。都内の大手ホテルは「観光客が集中する中国の旧正月『春節』前後は予約がいっぱいで系列のホテルを紹介した」とこぼす。新宿プリンスホテル(東京・新宿)でも、一定の時間帯には外国人客が集中して混雑するため、今秋からロビーの改装を始める。

 日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は「受け入れ態勢が追いつかないと、旅行の快適さが失われ、せっかく盛り上がった観光の機運がそがれる恐れがある」と警告する。

 行動計画では、外国人旅行者が3000万人となる時代を見据えた準備の必要性も指摘した。外国語が話せる人材の育成も課題になる。

行動計画の主なポイント
▼地方の免税店を3倍の2万店規模に
▼地域ブランドの創設による特産品の販売
▼ブラジル向けに数次ビザの発給を開始
▼観光周遊ルートやスノーリゾートの環境整備
▼空港での入管手続きの迅速化
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 安倍政権は「観光立国」に熱心ですが、それで良いのでしょうか。観光産業とは自然遺産、文化遺産のいずれであっても、
過去の遺産、先祖の遺産で生きていくのと同じです。一定のところまで行ったら、それ以上の進歩発展はあまり期待できません。

 観光産業は、文化財や美しい自然を見物させたり、宿泊や土産物販売が主力のサービス業で、
高度な産業でも、高度な頭脳、先端技術を要する産業でもありません。働く人は所詮接客業に過ぎません。
 今絶好調の中国人の
「爆買い」も、やがて中国国内で類似品が生産されたり、日本から安価に輸出ができるようになれば、一時的なブームで終わるでしょう。

 今、世界で主要な観光大国と言えば、
フランスイタリアギリシャなどが思い浮かびますが、いずれも経済的にパッとしない国々で、わが国が参考にすべき、見習うべき国家ではありません。
 外国人観光客に国の将来を託するのは怠惰であり、危険であり、日本の「ギリシャ化」の恐れなしとしません。

平成27年6月13日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ