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本来の目的・趣旨を逸脱する、「個人情報保護法」を理由にした公務員の情報隠蔽


 7月4日の産経新聞は、「バングラ襲撃被害者名非公表…『事実』の共有不可欠」と言う見出しで、次のように報じていました。

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バングラ襲撃被害者名非公表…「事実」の共有不可欠 社会部長・三笠博志
2016年07月04日 産経新聞 東京朝刊 1面


 バングラデシュのテロで、政府は犠牲者の
氏名や年齢といった重要な「事実」を国民に公表していない。報じられているのは、全て報道機関の独自取材によるものだ。

 非道なテロで命を奪われたわれわれの同胞は、発表された「男性5人、女性2人」という数字だけの存在ではない。身元が伏せられたままでは、誰がなぜ惨劇の犠牲になったのかという経緯はおろか、本当に日本人が殺されたのかということさえ検証できない。国民全体が危機感を共有すべき事態に、全てを政府に任せろということだろうか。

 例えば、岡村誠さん(32)には婚約者がいた。結婚に向け慎重に行動していたはずだ。トルコやインドネシアで海外業務の経験も積んでいた。それでもテロに巻き込まれたのはなぜなのか。「
事実」を積み重ねることで、国全体で共有すべき教訓も見つかるのではないか。

 こうしたことは今回に限らない。平成17年に全面施行された個人情報保護法の影響で、近年、公的機関が重要情報を発表しない事案があまりに目立つ

 同法では、報道機関への情報提供や「生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」などは規制されていないのに過剰な萎縮が蔓延(まんえん)している。昨年9月の東日本豪雨では、茨城県常総市が行方不明者について「15人」という「数字」しか発表せず、全員の無事を確認するのに数日かかるという混乱を招いた。

 今回のテロについて、安倍晋三首相や菅義偉(すが・よしひで)官房長官は「痛恨の極み」と口をそろえ、テロ根絶に向けた努力の必要性を訴えた。同感だ。そのために相応の公費や制度も必要だろう。もちろん国として犠牲者家族への配慮も十分に行われなければならない。その前提となるのは、誰もが納得できる「
事実」が示されることだ。
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 まず事故事件被害者・加害者名など、関係者の個人情報は、すべて「個人情報保護の対象から外すべきです。事故、事件の原因や責任などの本質に関わる事実関係は、国民が主権者として問題点などを把握・判断する上で必要不可欠な情報です。そして、何が「本質に関わる事実関係」かは、事案の内容により、人により判断が分かれる分野であり、「官」が判断するのは危険です。言論(報道)の自由、国民の
「知る権利」に関わることであり、マスコミ企業が必要とする情報はすべて提供しなければならないと思います。「官」が制限できるのは、「外交上、国家の安全保障上」必要な時のみとすべきです。

 本来「個人情報の保護」とは、上記の国民の知る権利に制約を課すことが目的では無いはずです。この法律の目的は、一般企業、医療機関などが顧客台帳やカルテなどを、本来の目的以外に利用したり、名簿業者に売却したり、事故で漏洩させるなどして、一般国民(消費者)に不利益を与えることを防止することだけであるべきです。

 公務員は本質的に「秘密主義」で何でも隠そうとします。このままでは「個人情報の保護」を隠れ蓑にして、主権者である国民の「知る権利」が軽んじられ、役所の「情報公開」の大原則が実質的に放棄される事態になりかねません。

 国民の「知る権利」を守るために、必要なことは「個人情報保護法」の廃止、または全面的な改正です。改正とする時は、「個人情報保護法」の名称そのものを改めて、
「顧客台帳の適正管理に関する法律」等として、その範囲を「顧客台帳等の適正管理」に限定する必要があると思います。

 そして、マスコミ企業に対する役所の情報提供及びマスコミの報道は、すべて法律の対象外である事を明記して、
国民の「知る権利」を守るべきだと思います。

平成28年7月4日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   
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