H82
公務員の賃金水準は「民間企業と同水準」だけで良いのか −市の発表資料を転記しているだけの新聞記者、東京の築地卸売市場の豊洲移転問題にも共通する記者クラブの無能・怠慢−

 9月21日の読売新聞は、「大阪市職員給与、2年ぶり値上げ勧告…人事委 」と言う見出しで、次のように報じていました。
----------------------------------------------------------------------------------------
大阪市職員給与、2年ぶり値上げ勧告…人事委 =関西発
2016年9月21日15時0分 読売

 大阪市人事委員会は21日、今年度の市職員給与(行政職1万94人、平均月額39万7327円、平均年齢42・5歳)を
民間企業と同水準にするため、月額で578円引き上げるよう吉村洋文市長と木下誠市議会議長に勧告した。給与の引き上げ勧告は2年ぶり。

 人事委が
市内企業の361事業所の給与実態を調べ、民間企業の水準を月額39万7905円と算定し、市職員給与の平均月額との差額を578円とした。ただ、市は2009年4月から人件費削減を目的に給与カットを実施しているため、現在の市職員の平均月額給与は実際には、民間水準を1万1510円下回っている。
---------------------------------------------------------------------------------------------

 大阪市の人事委員会は、
「民間企業と同水準にするため」と言っていますが、給与(賃金)は労働の対価です。同水準にするというのなら、その前提として市の対象者と、民間(民間の何と比較したのかは定かではありませんが)の対象者の労働内容が同一である事が大前提であるはずです。「同一労働・同一賃金」は安倍政権が強調しているスローガンでもあります。

 公務員と民間企業の
労働生産性・労働密度は果たして同じでしょうか。また、賃金以外の待遇は考慮しているのでしょうか。退職金や年金、各種手当て、現物支給の有無等は考慮されたのでしょうか。
 例えば行政職ではありませんが、
大阪市バスの運転手と大阪市で運行する民間のバス会社の運転手の労働密度と、生涯の待遇は決して同じではなく、公務員の方が遙かに優遇されていると思いますが、彼等について大阪市の人事委員会は「民間企業と同水準にする(待遇を引き下げる)」ことを勧告しているのでしょうか。それらを総合的に見て判断しなければ、「民間企業と同水準」は、単なる公務員の「いいとこ取り」ではないのでしょうか。

 人事委員会の
委員の構成が明らかではありませんが、彼等が大阪市の公務員であって、この制度の対象である行政職の一員であるとすると、委員は利害関係者であり、公平な算定が出来るのか疑問が残ります。

 読売新聞はこれらの点に一切触れずに、記事を書いていますが、読者(大阪市の納税者)に対して、十分な情報を提供しているとは思えません。単に、
大阪市役所の記者クラブに毎日出勤している記者が、市から提供されたプレスリリースを要約して記事にしているだけだと思います。市の広報と大して変わりありません。市の発表に問題意識すら持たずに、転記しているだけなら、ジャーナリストとは言えません。

平成28年9月21日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ

平成28年9月23日(追記)

 今東京都では
築地の東京卸売市場の豊洲移転を巡って、巨額の疑惑が大問題になっています。土地の買収から土壌の汚染対策、施工方法などに関して、次から次へと疑惑が拡大しています。そして東京都の公務員は何ら有効な説明をなしえません。

 東京都の公務員は無能と不誠実をさらけ出しつつありますが、それに輪を掛けて問題なのが
東京都庁に常駐する記者クラブの記者達です。彼等はこの大問題を事の発端から、現在に至るまでの全部を注視できる、またチェックすべき立場にいながら何もしてこなかったことは明らかです。小池知事が誕生しなければこの問題は闇に葬られていたでしょう。舛添前知事を辞任に追い込み、鳥越候補の無能を暴露して小池知事誕生に道を開いたのも週刊文春・週刊新潮であり、大手新聞は何もしていません。

 東京都は伏魔殿と言われていますが、そうなったことの
責任の大半はマスコミの怠慢・背信にあると言って過言ではないと思います。