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日本郵政独占の弊害 1月2日に配達されなくなった年賀状 −ヤマト運輸に「親書」の取り扱いを認めよ−


 10月25日の朝日新聞は、「年賀状、1月2日届きません 日本郵便、コスト削減優先」と言う見出しで、次のように報じていました。
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年賀状、1月2日届きません 日本郵便、コスト削減優先
2016年10月25日19時31分 朝日新聞

 日本郵便は25日、2017年から
1月2日は年賀状の配達を休むと発表した。2日の配達は民営化を前にした2005年にサービス向上のために始めたが、コスト削減を優先する。配達は正社員が中心で、休日出勤させるための人件費など約10億円を削減できる見通しという。3日に配達を再開する。

 今年の三が日に配られた年賀状のうち85・7%は元日に配られ、2日に配られたのは7・5%で1世帯あたり2・7枚という。2日に配っていたのは31日までに仕分けが終わらなかったり、元日に出されたりした年賀状。仕分け機の増強や性能向上により、元日の配達は05年の83・2%から2・5ポイント増え、2日は1・1ポイント減っていた。

 速達や書留、小包の
ゆうパックなどは2日も休まず配達するという。
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 記事にもあるとおり2004年以前の郵政業務が官の直営だった時代は、年賀状は1月2日は配達されませんでした。そればかりでなく、郵政省では年末年始のタイミングに合わせて労使交渉が行われていて、
ストの影響で遅配が発生する恐れがしばしばでした。また、郵政省の年賀状発行枚数は少なめだったため、早めに購入しないと品切れになることがしばしばでした。

 それが2005年の
「郵政民営化」により、サービス向上を謳って1月2日の年賀状配達が始められたわけですが、11年後の今年、コスト削減のためサービスを犠牲にして配達が中止になったと言うわけです。元に戻ったのです。

 考えてみれば当然とも言えます。年賀状は
「親書」ですが、この業務は郵政“民営化”にもかかわらず、未だに官業の時代そのままに、日本郵政が独占しているのです。この部分に限っては“民営化”されていないのです。営利企業となった以上競争相手がいなければ、サービスの低下に気を遣うことなく、コストの削減を優先するのは当然のことです。このことはヤマト運輸他のライバルが多い「ゆうパック」は配達を休まないことからも窺えます。

 「郵政民営化」とは誤解を生じやすい言葉です。あたかも
官が独占していた分野に,民間企業が自由に参入できるようになったかの印象を与えますが、実際にはその反対で、今まで官業であるが故にあった制約が取り払われて、株式会社になった日本郵政以下のグループ会社が業務範囲を拡大しているだけと言うのが実態です。

 宅急便のヤマト運輸は2015年11月12日に
「いい競争で、いいサービスを」と言う全面意見広告を全国の54新聞に掲載し、日本郵政が「ユニバーサルサービス」を口実に特別扱いの利益を得る一方、ヤマト運輸が「親書」を扱えないことにより、ゆうパックとの競争で大きな不利益を受けていることを切実に訴えましたが、ほとんどのマスコミは同社の意見に耳を貸さず、沈黙を守りました。

 結局の所、偽りの「郵政民営化」とは、日本郵政に
官業時代の既得権をそのまま保障し、一方で営利企業としての自由を与えたという、日本郵政にとっての「いいとこ取り」に終わっているというのが実態ではないでしょうか。

 なお、朝日新聞は触れていませんが、日経新聞の記事には、「18年以降も1月2日は配達しない方針で、
従業員の労働環境の改善にも結びつきそうだ」と言う一項があります。今回の1月2日配達中止の背景には、労組の圧力もあるのではないでしょうか。

平成28年11月4日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ