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営利事業は悪か
 

 3月20日の京都新聞の朝刊に「京都社会保障推進協議会」の全面広告が載っていました。「だから言ったでしょう!!」とあたかも一般国民、読者が自分たちの言うことを理解できないと言わんばかりの見出しで始まる意見広告で、「今の日本、社会保障の充実こそ必要です」と銘打ち、膨大な赤字の問題には一言も触れない、読者を甘く見たような、欺瞞に満ちた宣伝です。その中で保育所についてこう言っています。
 「保育の営利化は止めるべきです。子どもたちの保育も、その『最低基準』が大幅に引き下げられます。所得を無視した保育料の引き上げ、保母のアルバイト化、給食の外部委託・・・。このままでは、保育の公的責任はなくなり、保育が金もうけの対象にされてしまいます。」

 はて、「営利化」、「金もうけ」とは何でしょう。武士が商人を見下していた士農工商の時代、あるいは市場経済を「資本主義」と言って罵倒していた、共産主義全盛期を彷彿とさせる言葉です。こういう言葉を使って他人を非難する人は霞を食べて生きているのでしょうか。給料を返上して無給で働いているのでしょうか。間違っても賃金の引き上げを求めて団体交渉、ストライキをしたり、食糧費予算を自分たちの飲み食いに流用したり、出張旅費を詐取したりすることなどないのでしょう。そうでなければ他人のすることを「金もうけ」などと非難できるわけがありません。

 「営利事業」、「金もうけ」はそんなに悪いことでしようか。「営利事業」でなく、「金もうけ」でもない(?)お役所(半役所を含む。以下同じ)はそんなにすばらしい仕事をしているのでしょうか。良質のサービスを提供して利益をあげ、税金を支払う民間企業と、劣悪なサービスを提供して赤字を垂れ流す、コスト意識のない役所では、どちらが社会に貢献していると言えるでしょうか。答えは自ずからあきらかです。

 日本は(日本だけでなく世界の主要な国は)民間人、民間企業の営利事業により成り立っているのです。役所は近代化、合理化が遅れ、生産性が低く、足手まといになっているのが現実です。国営企業、公営企業中心だったかつてのソ連が経済的に行き詰まって崩壊し、今また中国の国営企業が膨大な赤字を抱えて中国経済の重荷になっていることをみても「官」と「民」の優劣は明らかです。
 「保育の公的責任」とは何を言いたいのでしょう。役所には責任感があって、民間には責任感がないとでも言いたいのでしようか。

 アルバイトを採用することがどうしていけないのでしょうか。身分保障に安住している怠惰な正職員よりよく働くアルバイトやパートの例は決して珍しくありません。民間でも航空会社が人件費コストの高騰にたまりかね、スチュワーデスを正職員からパートタイマーに切り替えました。当初は亀井運輸大臣が、安全運行に支障があると言ってクレームを付けましたが、今では何の問題もないことがはっきりしています。
 また給食の外部委託を非難するのも根拠がありません。去年の夏、大阪の堺市をはじめとして全国のいくつかの学校で、病原性大腸菌O157による食中毒が起こりましたが、起きたのは全部公立学校の公務員が作った給食です。民間の食堂、弁当では起きていません。

 以上でわかるように、「いまの日本、公務員の意識改革こそ必要です」と言うのが正しい標語だと思います。

平成10年3月25日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      H目次へ