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日産の不正検査事件、読売新聞は国交省幹部が語る「現在の検査制度の問題点」の詳細を明らかにすべき

 11月18日の読売新聞は、日産自動車の不正検査事件に関して、「生産増で不正常態化…日産が報告書 経営陣、人員不足考慮せず」という見出しで、次のように報じていました。
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[スキャナー]生産増で不正常態化…日産が報告書 経営陣、人員不足考慮せず
2017年11月18日5時0分 読売

日産の追浜工場(9月19日、神奈川県横須賀市で)=石橋正洋撮影

 日産自動車が発表した無資格検査問題の調査報告書は、現場の従業員が法令違反を認識していたにもかかわらず、不正を指摘する声が上がらない組織風土を浮き彫りにした。本社や工場の幹部が現場の実態を把握していなかったことも問題の一因に挙げた。不正の常態化を招いた経営陣の責任は重い。(経済部 吉田昂、工藤彩香)

  ■独り立ち

 「(国土交通省などの)監査当日に限り完成検査以外の業務に従事させ、不正が発覚するのを逃れていた」

 「(完成検査員になるための)試験では問題と答案が一緒に配布された」

 報告書は、工場で常態化していた無資格検査の隠蔽いんぺいや、資格を与える試験のずさんな実態を明らかにした。

 日産の工場では、配置された完成検査員だけでは日々の生産に追いつかず、「補助検査員」と呼ばれる無資格者に任せていた。補助検査員は、完成検査員の印鑑を借りて検査票に押印。印鑑の貸し出しを管理する帳簿まで作成し、組織的に不正が行われていた。

 九州の工場では、補助検査員が一人で完成検査ができるようになることを「独り立ち」などと呼んでいた。

(中略)


検査制度見直し検討…国交省

 国土交通省は、日産の報告書と立ち入り検査の結果を踏まえ、完成検査が確実に行われるよう制度の見直しを検討する。

 完成車両の検査は本来、国が行う必要があるが、大量生産を容易にするため、自動車メーカーが代理で行うことが認められている。メーカーは完成検査をする従業員(完成検査員)をあらかじめ指名しなければならないが、
人数や習熟までの期間選び方などは裁量に任されている。

 無資格の従業員による完成車両の検査は、日産だけでなくSUBARU(スバル)でも行われていた。与党の国会議員からは「性善説に基づいた現在の制度は意味がない」との批判もある。

 国交省は、ルールに違反した場合の罰則の強化や、完成検査員の選び方の基準づくりなどを検討する見込みだ。住商アビーム自動車総合研究所の大森真也社長は「メーカーの責任を国が管理できるよう、今後は報告や監査の頻度を増やす可能性がある」と指摘する。また、センサーなど完成車両の不具合を発見する
技術の進歩などを踏まえた検査のあり方も議論されるとみられる。現在の制度のままでは、技術の進歩に対応できなくなるおそれがある」(国交省幹部)ためだ。
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 今回の日産の不正検査事件の報道で、一番不可解なのは
「検査」の内容・実態が全く報じられていないことと、その「不正検査」の結果、事故故障などの具体的な不具合があったか無かったかが、全く報じられていないことです。
 国交省の役人が問題にしているのは、
法令違反、法令を遵守していなかったという形式的な一点だけです。

 
事故故障の有無は結果の重大性を判断する上で不可欠な情報です。いくら手抜き検査であったとしても、それによる不都合が全く無いのであれば、罪は軽いか場合によっては無罪と言うこともあり得ます。
 その場合は反対に
無用で無益な検査を民間企業に強いていた、国交省こそが批判の矢面に立つべきです。

 検査制度については、
「(検査員の)人数や習熟までの期間選び方などは裁量に任されている」とありますが、この表現からは、高水準厳格な検査は想像できません。民間代行検査制度は単なる役所の責任転嫁制度ではないのでしょうか。
 また、
「現在の制度のままでは、技術の進歩に対応できなくなるおそれがある」(国交省幹部)とありますが、これは明らかに法令遵守とは別の制度自体の問題があることを示唆しています。

 それであればなおさら、現在の検査制度・基準が定められたのは
何年前なのかを含めて、検査制度の詳細・妥当性を報じる必要があります。
 現在の検査制度が
技術の進歩に対応できていないのであれば、国交省は厳しく批判されなければなりません。

平成29年11月22日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ