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理不尽なヤマト運輸叩き マスコミと役所の意図は何か −見積もりと結果の相違は珍しくない−

 8月7日の読売新聞は、「国、過大請求解明へ ヤマト立ち入り方針…組織不正を調査」と言う見出しで、次のように報じていました。
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国、
過大請求解明へ ヤマト立ち入り方針…組織不正を調査
2018年8月7日5時0分  読売新聞

 国土交通省は、ヤマトホールディングス(HD)の子会社が法人向けの引っ越し代金を
過大請求していた問題で、子会社の本社など関係先に対し、近く貨物自動車運送事業法に基づく立ち入り検査に入る方針を固めた。事業所の大半で過大請求が行われ、組織的なものだった疑いも浮上するなど、問題は広がりを見せつつある。国交省は関係者からの聞き取りなどを通じ、不正の全容解明を目指す。
 国交省が立ち入り検査に入るのは、ヤマトHDの子会社・ヤマトホームコンビニエンス(東京)。2016年5月から今年6月に請け負った約4万8000件(2640社)で約17億円の
過大請求があった。5年前の13年まで遡ると、約31億円に膨らむ可能性もある。
 物流を監督する国交省が立ち入り検査を行うのは、トラックの整備不良など人命に関わる問題が多く、今回のように
民間同士の取引では異例だ。
 
過大請求の金額が大きく、「利用者の利益を損なうとともに、事業に対する信頼を大きく揺るがしかねない」(石井国交相)と深刻に受け止めている。利用者保護の観点からも厳格に対応する方針で、検査結果を踏まえ、行政処分も検討する。
 ヤマトHDの山内雅喜社長は7月24日の記者会見で、「(
過大請求を)組織として指示したことはない」と釈明していた。ところが、ヤマト側の国交省への報告では、全国にある128の事業所のうち123事業所で過大請求が行われていたという。会社のチェック体制が機能していなかったことが浮き彫りとなった。
 
過大請求の原因について、ヤマト側は事前の見積もりよりも実際に運んだ荷物の量が少なかった場合でも、料金を減額せずに請求していたと説明してきた。「社内ルールの不徹底」と強調するが、子会社の元従業員は記者会見で、「見積もり自体が意図的に過大に行われていた」と証言している。
 ヤマト側は8月中をめどに、弁護士らで構成する第三者委員会による調査結果と、再発防止策を国交省に報告する方針だ。
過大請求の指示の有無など、説明責任を果たせるかどうか、ヤマト側の姿勢が問われそうだ。
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 記事は
見積もり結果(仕事量)の相違を問題にして、“過大請求”と言っていますが、見積もりはあくまで見積もりであり、仕事の結果と一致しないことは、当然あり得ます。仕事量が見積もりよりも少ないこともあれば、多かったこともあるはずです。記事は少なかった場合のことだけ論じていますが、多かったことはなかったのでしょうか。

 このような場合に、他の運輸業者は必ず見積もり修正をして運賃を請求していたのでしょうか。多くの場合
多少の相違は修正しないのが普通なのではないでしょうか。また、結果としてヤマトホームコンビニエンス(以下ヤマト運輸)の料金は競合他社と比較して割高であったのでしょうか。それが一番の問題です。

 顧客である企業は
他社からも相見積もりを取って発注しているケースが多いと思います。見積もりと仕事の結果としての仕事量が一致しているかどうかよりも、見積金額(または結果的に支払う金額)が他社よりも安いか高いかということが一番重要です。実際の仕事量が見積もりより少なかったとしても、支払金額が他社の提示金額よりも少なければ顧客にとっては問題はないと思います。

 ヤマト運輸が恒常的に過大見積もりに基づく、過大請求という営業をしていたとすれば、ヤマト運輸の見積もりは
常に競合他社よりも高額と言う事になり、とても営業が成り立つとは思えません。営業が成り立っていたと言うことは、ヤマト運輸の見積もりは他社と比較して高額と言うことがなかったことを意味していると思います。

 あとは単に見積もりが
詳細・正確か、大雑把かと言うだけの問題ではないでしょうか。マスコミが大騒ぎし、役所が立ち入り検査をする程の問題ではありません。
 それにも拘わらず、役所やマスコミはなぜ大騒ぎをするのでしょうか。それは
他意があるからだと思います。

 なぜならヤマト運輸は、それまで不便な
鉄道小荷物郵便小包しかなかった運輸事業に一大革命をもたらした宅配便のパイオニアで、消費者に多大な恩恵をもたらした功労企業ですが、それ故に鉄道輸送(鉄道小荷物)・トラック輸送を管轄する役所(当時の運輸省)に睨まれたり、郵便小包を扱っていた郵政省・郵便局とは対立をしてきた歴史があるからです。
 例えば当時の運輸業は各地方ごとの免許制で、ヤマト運輸は全国展開をしようとしても、一部の地方で容易に
免許を取得することができず、全国展開が遅れました。

 そして、この問題は役所の問題に止まらず、官公労組である郵政省の全逓信労働組合(
全逓 現日本郵政グループ労働組合)と親密であった多くのマスコミが敵に回ることになり、ヤマト運輸が親書の取り扱いを巡る不利益を訴え、全国紙に全面意見広告を出して改善を訴えても、完全に無視され続けています。
 ヤマト運輸を巡っての動きは根が深く、新聞報道の表面だけを見て
軽率な判断は禁物だと思います。

平成30年8月12日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ