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昇給、昇格をめぐる男女平等訴訟

 シャープ系の家電販売会社に勤務する女性社員が、昇進の遅れは男女差別だと訴えていた裁判で、裁判所が会社側に500万円の慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡しました。2月23日の朝日新聞は次のように報じています。

 「・・・女性社員が、『学歴などが同じ男性社員と比べ、昇進や給与面で著しい差を付けられたのは方の下の平等に反する』などとして、会社を相手に・・・3800万円の支払いを求めた訴訟の判決が大阪地裁で言い渡された」
 「男性の場合は18年を超えてとどめ置かれた例がない低い格付けに27年間も置かれた点について、『能力や労働意欲から説明できず、合理性がない』、『昇格の遅延は男女を理由とする差別というべきである』として、慰謝料の支払いを命じた」


 わが国の企業でも「年功序列」は過去のものとなりつつあります。日頃、新聞も日本の企業は年功序列を廃して実力主義を採用すべきことを主張しています。学歴が同じで、永年勤務しているからといって、誰もが同じように昇格できる時代ではありません。

 彼女が昇格できなかったのが不当であるか否かを判断するには、彼女の能力、実績が人並みであったかという点が一番の問題になります。職場の上司や同僚、あるいは後輩が彼女をどのように評価していたかが最も重要なポイントのはずです。ところが新聞を見る限り判決はこの点について、「能力や労働意欲から説明できず、合理性がない」と言っているのみで具体的な説明がありません。十分な証拠調べをしたのでしょうか。今回に限らず、この種の裁判ではいつもこの点が明らかにされていません。

 彼女は通信制大学で経済学と法学を学んだにもかかわらず、それが報いられなかったことを訴えていますが、今どき通信制大学で学んだことを、昇格考課の上で評価の対象にする民間企業はないと思います。彼女の方に資格や学歴を偏重する誤解があるのではないでしょうか。

 この判決は、原告が主張した社内における男女差別の存在や、賃金の差額の支払い要求は認めませんでした。賃金に男女間で顕著な差があることや、男性の方が女性より昇格が早いことなどを認定したうえで、「こうした傾向は多くの企業に見られることで、一般に女性は妻となって夫を支えるために短期間で退職する傾向にあり、女性側にもこうした役割分担を肯定し、労働意欲が低いものも多くあることは否定できない」、「格付けや賃金に男女格差が存在することから、直ちに男女差別が行われていると認めるのは、いささか飛躍がある」としています。この点に限っては原告の思惑とは正反対に、男女の役割分担と、男女間の賃金格差の現実を明確に是認した、画期的な判決となりました。

平成12年2月27日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ