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児童虐待の激増 対症療法だけの議論で終われば日本の劣化は更に進む 

 6月8日のNHKのテレビニュースは、「児童福祉法など改正法が成立『一時保護』の際『司法審査』導入」というタイトルで、次の様に報じていました。
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児童福祉法など改正法が成立「一時保護」の際「司法審査」導入
2022年6月8日 18時13分 NHK



 児童相談所が虐待を受けた子どもを保護者から引き離す
「一時保護」の際に、裁判所が必要性を判断する「司法審査」の導入などを盛り込んだ児童福祉法などの改正法が8日の参議院で全会一致で可決・成立しました。



 成立した児童福祉法などの改正法では
子育て世帯に対する包括的な相談・支援に当たる体制強化を図るため、市区町村に対し「こども家庭センター」を設置するよう努力義務を課しています。

 また児童相談所が虐待を受けた子どもなどを保護者から引き離す
「一時保護」の際に、親の同意がない場合には裁判所が必要性を判断する「司法審査」を導入するとしています。

 さらに虐待などに対応する児童福祉司を自治体が任用する際の要件として、新たに創設される
認定資格などを念頭に十分な知識や技術を求めるとしています。

 このほか児童養護施設などで暮らす子どもや若者に対する
自立支援について、原則18歳、最長でも22歳までとしてきた年齢制限を撤廃することや、子どもへのわいせつ行為などを理由に登録を取り消された保育士の再登録を厳格化することも盛り込んでいます。

 改正法は8日の参議院本会議で採決が行われた結果、
全会一致で可決・成立しました。

 この法律は一部を除いて再来年4月に施行されます。

松野官房長官「安定した生活 送ることが可能に」

 松野官房長官は午後の記者会見で「児童養護施設を退所した方などに対し、住居の提供や相談支援などを行う事業について対象者の年齢要件が弾力化されることになり、退所したあとも継続して必要な支援を受けられ、安定した生活を送ることが可能になる。法律の施行に向け今後、厚生労働省で当事者の意見も伺いながら実施体制の充実などの検討を行っていく」と述べました。

今回の改正の経緯


 今回の児童福祉法などの改正は、
増加する児童虐待に対し、子どもを保護する取り組みや子育て家庭への支援策を強化することが目的です。

 厚生労働省によりますと、令和2年度に全国の児童相談所が対応した18歳未満の子どもに対する虐待の件数は、過去最多のおよそ
20万5000件に上りました。

 新たに導入されることが決まった
「司法審査」は、児童相談所が親からの反発をおそれて一時保護をためらうケースも少なくないことから、裁判所が必要性を判断することで速やかな保護につなげるとともに、親の理解もより得やすくしようと改正案に盛り込まれました。

 また、新たな
資格制度は、児童虐待などに対応する児童福祉司のうち勤務年数が3年に満たない人が去年4月の時点で半数を占めるなど、経験の浅さが課題となっていることから創設されることになりました。

 取得にあたって、
100時間程度の研修を義務づけることで資質や専門性を高めるとともに、自治体が任用する際の要件とすることで定着にもつなげようというねらいがあります。

 このほか、原則18歳までとなっていた自立支援の年齢制限は、
施設を退所したあとに生活費や学費を工面できなかったり、相談相手がいなくて孤立したりする人が多く、支援の継続が必要だという指摘が専門家などから出ていたことから撤廃されることになりました。

 本人の意向などを踏まえて
施設での生活を継続できるほか、福祉制度を利用してもらうための調整などを行う拠点を都道府県ごとに設置して、住まいの確保や就労などの相談に応じることになっています。
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 この
長い報道の中に、虐待激増の原因とそれに対する対策に関する部分は一言もない。全てが目先の“対症療法”に関するものばかりである。

 虐待の件数が10年で
3.6倍と言うが、その間の少子化による18歳未満人口の減少を考えれば、実質倍率はそれを遙かに上回る。

 学校の
いじめ育児放棄なども含めた、社会の深刻な劣化に対して、なぜ激増するのか(したのか)、それに歯止めを掛け、更に減少に導き健全な社会を再建するにはどうしたら良いのかという、本質的な議論が必要だ。それをせずに対症療法だけに終始していたのでは、虐待は減らず、社会の劣化が更に進む事は明らかだ。

 このように規模(数)の上からも、内容の上からも、多数の児童を
家庭から「児童養護施設」へ移送せざるを得ない事態(さらにその受け入れ施設の保育士による、児童に対するわいせつ行為を憂慮せざるを得ない事態も)が進行していると言うことは、家庭・社会の劣化・崩壊が進んでいるという事実を明白に物語る。

 このような
社会の劣化の事態は“児童虐待”に止まらない。少子化を巡る議論でも同じ事が言える。未婚・非婚・離婚増加はなぜ起きたのか、その原因対策議論せずに、既婚者への子育て支援や、一人親家庭(そのほとんどは母子家庭)に対して実施する経済支援は、少子化・人口減少の“対症療法”にすらならない、役に立たない話しのすり替えである。

 
今の行政は社会の劣化現象に対する対症療法や、話しのすり替えによる小銭のバラ撒きに終始し、大局的な見地からの根治療法が欠落している。
 行政の方向を左右している、
官僚、大学教授、新聞社の編集委員等は目先の対症療法にしか頭が回らない人達なのか。

 決してそんな事は無い。彼ら(彼女ら)は
“偏差値”の高い人が選ばれているはずである。彼らが目先の対症療法の事しか発言しないのは、話しが問題の本質に及ぶのを避けているのである。話しが本質に及べば,責任追及の矛先が自分に向けられてくるのは必至である事を知っているからだ。

令和4年6月13日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ