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専業主婦への敵意
3月14日の読売新聞に、「女性の年金見直し」、「専業主婦負担など」という見出しで、サラリーマン所帯の専業主婦が、保険料を負担しなくても国民年金(基礎年金)を受け取れる制度について、「サラリーマン所帯の専業主婦は・・・公的年金制度では保険料の支払いが免除されている。その分の保険料は、夫の加入する厚生年金や共済年金の加入者全体で負担している。この制度には、働く女性を中心に、『専業主婦を優遇しすぎている』などの批判が多い」、と報じる記事がありました。
不当に優遇されていると言うのが事実であれば、批判の声は共働き家庭の男性からもあがって良いはずですが、この種の批判はもっぱら「働く女性」達からで、男性からのものはあまりありません。専業主婦に対する“優遇措置”への批判は、所得税の配偶者控除に対する批判と共通するものですが、配偶者控除に対する批判ももっぱら、「働く女性」達からのもので、配偶者控除を受けられない「働く女性」の夫達からの不満は、聞いたことがありません。
専業主婦は本当に優遇され過ぎているのでしょうか。決してそうではないと思います。働く女性を支援するための託児所、保育園のなどの費用は、専業主婦の家庭を含めた全所帯が負担する税金が使われています。働く女性達の産休期間中の給与は、事業主や専業主婦の家庭の夫を含む他の従業員が負担しています。これらの働く女性達に対する優遇措置に対しては、働いているから当然という反論があるかもしれませんが、働いていることに対しては、賃金という対価が支払われているのですから、託児所や、産休期間中の給与の支払いなどの社会の負担は「働く女性を優遇している」と言えます。専業主婦が不当に優遇されているというのは当たりません。
自分たちが社会から受けている恩恵には口をつぐみ、専業主婦が受けている恩恵はすべて剥奪しようと言うのは、極めて冷酷な主張であると思います。専業主婦という生き方が不可能になるような主張をしています。どうして彼女らはこういうことを言うのでしょうか。自分たちと価値観が違うにしても、多様な価値観を承認し、専業主婦という生き方を選択した同性の存在を、容認することはできないのでしょうか。
彼女らがこれほど専業主婦につらく当たるのはなぜでしょうか。それは彼女ら「働く女性」達が、決して「社会に進出」しているのでもなければ、専業主婦が「家庭に閉じこめられている」のでもなく、働く女性の多くは経済的な理由から専業主婦になることができず、生活のためやむなく、働きに出ているというのが実態だからだと思います。幸福な専業主婦に対する妬みからだと思います。
母親にとって幼い子を託児所に預けて働きに出ることは、後ろ髪を引かれる思いであると思います。彼女らにとって、一日中子供とともに過ごすことのできる専業主婦の存在は羨望の的だと思います。専業主婦がいる限りこの屈折した思いは消えません。自分たちが専業主婦になることがかなわないのであれば、あとは専業主婦がいなくなることを願うのみです。働く女性達の専業主婦に対する冷酷な主張は、そうした彼女らの屈折した思いの表れだと思います。
平成12年4月2日 意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ