I120
少子化の一因が若者世代の困窮だとすれば、その一因は「外国人労働者」の増加と、国内工場の海外移転が挙げられる

 2月12日のNHKテレビニュースは、「
『将来子どもを持つ』46% 18歳前後の若者 金銭負担などが壁に」、「外国人労働者 182万人余で過去最多 ベトナム人が全体の約1/4に」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
------------------------------------------------------------------------------------
「将来子どもを持つ」46% 18歳前後の若者 金銭負担などが壁に
2023年2月12日 19時34分 NHK

政府が議論を進める「少子化対策」。
 若い世代はどう考えているのか、日本財団が18歳前後の
若者に行った調査では、「将来子どもを持つと思う」という回答は46%で、その半数以上が「金銭的負担」や「仕事との両立」が壁になると答えたことが分かりました。

 日本財団は去年12月に、17歳から19歳までの1000人を対象に、働き方や子育てなどの価値観についてインターネットで調査を行いました。

 その結果、「将来
子どもを持ちたい」という回答は59%でしたが、「実際に将来子どもを持つと思うか」については、
▽「必ず」もしくは「多分」、
「持つと思う」が合わせて46%
▽「多分」もしくは「絶対」、
「持たないと思う」は合わせて23%
▽「わからない」「考えたことがない」は合わせて31%でした。

 このうち、「持つと思う」と答えた人に、子どもを持つうえでの
「障壁」を複数回答で聞いたところ、
▽「
金銭的な負担」が69%と最も多く、
▽「仕事との両立」が54%となりました。

女性では
▽「精神的な負担」が37%、
▽「身体的な負担」が36%と、男性より10ポイント以上高くなり、
男性では
▽「時間的な負担」が44%と女性より高くなりました。
I120-2


実施してほしい少子化対策を複数回答で聞いたところ、
「教育無償化」39%
▽「子育て世帯への手当・補助金の拡充」が33%と続いたほか、
▽「育児休暇の取得促進」や、
▽「保育所などの受け皿の整備・拡充」も20%を超えています。

 日本財団は「子どもを持ちたいと考える若い人も、
金銭的負担や仕事との両立が壁になると考えている現状を重く受け止める必要がある。精神的な負担など子どもを産み育てることへの不安は多岐にわたっており、幅広い支援が必要だ」としています。

学生の半数が
奨学金受給 返済に関する勉強会も
大学生の
2人に1人が奨学金を利用する今、社会に出た若い人の中には返済が重い負担になり、子どもを持つことまで考えられないという声もあります。

日本学生支援機構の調査では、奨学金を受給している大学生は1990年度には21.8%でしたが、2020年度には
49.6%と2人に1人が利用しています。
I120-3


 こうした中、先月、労働問題に取り組むNPO法人が東京 新宿区で開いた奨学金の返済に関する勉強会には、オンラインを含めおよそ80人が参加しました。

 最初に弁護士が病気などの理由で返済が厳しくなった場合について、
返済期限の猶予を申請したり、返済期間を延ばして月々の返済額を減額したりする方法があることなどを説明しました。

 このあと互いの状況を語り合うワークショップが開かれ
「奨学金の返済で、貯金もやりたいこともできない」とか「生き方の幅が狭まっている」といった不安の声が聞かれました。

 参加した25歳の女性は「夢を持って社会人になったのに生活が苦しい。手取りも15万円ほどで、『
子育てもしたいけれど考えられないよね』という話を友達とよくします。それが普通の会話なので、悲しくなる時があります」と話していました。

奨学金返済が壁 “将来子どもは絶対に産まない“
I120-4


勉強会に参加した中には、
奨学金の返済が壁となり、将来子どもは絶対に持てないと考えている人もいます。

(中略)

学生が求める“国に進めてほしい少子化対策“

I120-5


将来、子どもを育てることに不安を抱える若い人が少なくない中、少子化問題などを学んできた学生たちからも、求められる対策についてさまざまな声が聞かれました。

中央大学文学部のゼミで家族の在り方や少子化問題を学んできた学生たちに、国に進めてほしい少子化対策を聞いたところ、4年生の男子学生は「子育てにかかる
コストは、みんなが不安を抱えている少子化の根本的な部分だと思うので、いちばん対策が大事なのかなと思う」と話していました。

(以下略)
-------------------------------------------------------------------------------------

 子育て(育児)に
コスト(費用)が掛かるのは当然の事で、今に始まったことではありません。敗戦直後のベビーブームの時も、高度成長の時も変わりません。しかもその時は今ほどの“子育て支援”はなく、皆自分達(子どもの父母祖父母)で頑張ってきました。

 もし
“コスト”少子化の原因だとしたら、一つには現代の日本は貧困化が進み、特に若年層ではそれが深刻だという事を意味します。次に“奨学金”云々の問題は、大学進学率の上昇(高学歴化)がもたらした“負の側面”とも言えます。
 また、終身雇用、年功序列社会のひび割れも、若年層の不安を募らせる一面があるなど、多様な側面がある事は否定出来ません。

 もし、
若年層の貧困化という点が事実であるならば、それは経済政策上の問題として指摘し、議論する必要があります。

 同じ2月12日にNHKのテレビニュースは「外国人労働者 182万人余で過去最多 ベトナム人が全体の約1/4に」というタイトルで、次の様に報じていました。
------------------------------------------------------------------------------------
外国人労働者 182万人余で過去最多 ベトナム人が全体の約1/4に
2023年2月12日 11時03分  NHK

 日本で働く
外国人労働者は去年10月時点で182万人余りとなり、これまでで最も多くなりました。

 厚生労働省によりますと、日本で働く外国人労働者は去年10月時点で182万2725人で、前の年の同じ時期に比べて9万5504人、率にして5.5%増え、
これまでで最も多くなりました。

 外国人労働者は調査を始めた
2007年以降増加傾向が続いていて、新型コロナウイルスの感染拡大でおととしにかけての年間の増加率は0.2%にまで落ち込みましたが、今回は回復しました。

 国籍別では、ベトナム人が46万2384人と最も多く全体のおよそ4分の1を占め、次いで中国人が38万5848人、フィリピン人が20万6050人などとなっています。

 一方、
技能実習生は34万3254人と前の年を2.4%下回って、2年連続の減少となり、新型コロナの水際対策が影響しているとみられます。

 
厚生労働省は「技能実習生は減ったものの、全体の増加率はコロナ前の水準に戻りつつある。言語や習慣の違いがあっても外国人労働者が働きやすい環境の整備に向けて、企業への訪問指導などを徹底していきたい」と話しています。
------------------------------------------------------------------------------------

 外国人労働者の増加は、
経済界(経団連など)の“人手不足”の訴えに基づき拡大してきたもので、これが日本の労働者(特に若年層)の賃金上昇のブレーキになっていたことは明らかです。

 少子化対策として若年層の人達に対する
「子育て支援」の拡大を主張する人達と、「外国人労働者」の受け入れ拡大・待遇改善を主張する人達は、かなりの部分で重複する(例えばどちらも厚労省所管)と思います。
 しかしこの二つの主張は、日本の若年層の人達にとって(いや全ての国民にとって)は、
相反し・相容れない主張です。

 少子化の原因の全てが、若年労働者の経済的困窮とは言えないとしても、
原因の一部である事は十分考えられます。
 
高度成長の時代は慢性的な人手不足で、地方から集団就職のために大都会にくる若者は“金の卵”と呼ばれていました。それでも「外国人労働者を」とか、「工場を人件費の安い海外に移転を」などと言う発想は皆無で、賃金は毎年のように確実に上昇し、独身の若者でもマイカーを購入することが十分可能でした。

 高度成長が終わり停滞の時代
(失われた〇〇年)が始まってからは、外国人労働力だけでなく、工場の海外移転も増加した時代です。そして“金の卵”と言う言葉は聞かれなくなりました。
 
 若者の経済的困窮が少子化の原因というならば、
外国人労働者工場の海外移転問題点を議論すべきです。

 若者の経済的な困窮が少子化の一因という事はあり得ない事とは言えませんが、結婚に対する欲求はそれ(子を持つこと)が全てでは無いし、世界では
経済的に困窮している国の国民で未婚が増加しているとは言えません。若者の経済的な困窮を未婚の増加に、更に少子化に結びつけるのは短絡的であり論理の飛躍があると思います。

令和5年2月17日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ