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「保育施設の4割が定員割れ」の事実は、保育所の増設(子育て支援)が少子化の解消に繋がると言う今までの論理(主張)の破綻 −岸田政権の「異次元の少子化対策」は、“異次元の愚行”−
4月5日の読売新聞は、「保育施設の定員割れ、少子化加速が想定とズレ…自治体調査」と言う見出しで、次の様に報じていました。
(茶色字は記事、黒字は安藤の意見)
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[スキャナー]保育施設の定員割れ、少子化加速が想定とズレ…自治体調査
2023/04/05 09:07 読売 人口急減
国や自治体はこれまで保育施設の増設を進めてきたが、地方を中心に少子化の影響が鮮明になってきた。読売新聞のアンケート調査で、定員を満たさない保育施設が少なくとも約4割に上ることがわかり、自治体は計画の見直しを迫られている。施設を有効活用し、子育て家庭のニーズに合ったきめ細かな支援が求められる。(生活部 木引美穂、社会保障部 小池勇喜)
「ニーズ」と「きめ細かな支援」の具体的中身に触れていない記事は、中身のない記事です。定員割れが少子化の結果である事は分かるとしても、“ニーズに合ったきめ細かな支援”で、定員を維持(または増加)すれば少子化の解消に繋がると言う理屈にはなりません。
保育所の増設(共働きの母親の子育て支援)が少子化の解消に繋がると言う今までの論理(主張)の破綻が誰の目にも明らかになったと言うべきです。
統廃合・空き活用検討
待機児童は減
「公立保育所の統廃合や多機能化などを進めることを提言する」。高知市の有識者会議が3月、市に答申した提言には「統廃合」の文字が盛り込まれた。
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同市では、就学前(0〜5歳)人口が2010年の1万7540人から、22年は1万3463人と、4000人以上減少。45年には、市内25地域のうち23地域で保育需要が利用定員を下回る見通しだ。民間の運営者から経営に対する不安の声も上がり、今後の保育施設のあり方を議論してきた。
答申を受け、市の担当者は「検討を進める」と話す。
県庁所在地や政令市など103自治体が回答したアンケート調査で、保育施設の「統廃合を検討している」のは24自治体に上った。新潟市も、市立の施設を18年度の87施設から、約20年後に半数程度にすることを目指す。
約8割の自治体で、待機児童はすでに解消したか、今年度中に解消する見込みで、国が目標とする24年度より早い。
国は21年度からの4年間で、計約14万人分の保育の受け皿を増やす「新子育て安心プラン」を進めてきたが、この間、想定以上のスピードで少子化も加速したことが背景にある。厚生労働省の調査では、22年4月時点の待機児童数は過去最少の2944人となり、17年のピーク時の約9分の1まで減った。
まさに「保育施設の増設(子育て支援の強化)が、少子化を加速したのです。
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今回のアンケートでは、約4割の施設が1次選考の時点で定員を満たさなかった。定員についての課題(複数回答)を聞くと、「利用希望が(特定地域に)偏在し、定員を満たさない施設がある」(75自治体)、「就学前人口が減るなどし、定員を満たさない施設が増えてきた」(52自治体)などが多く挙がった。
一方、和歌山市は保育士が確保できず、市内の多くの施設で子どもの受け入れ可能人数を制限するなど、定員が埋まらない背景には職員不足の実態もうかがえた。
保育所はすでに必要を上回って過剰となっており、保育所の増設に代表される子育て支援が少子化対策として何の効果も無かったことは明らかです。
保育所の増設に代表されるこれ以上の少子化対策としての“子育て支援”は不要であり、仮に実施したとしても、少子化の解消に結びつく根拠はありません。
少子化対策の柱として実施されてきた保育施設の増設(子育て支援)が、少子化対策として全く効果が無かったことが明らかになった以上、増設した保育施設は廃止するというのが本筋ではないのでしょうか。“多機能化”などと安易な延命策は失敗の上積みとなるだけです。今までの少子化対策の失敗を謙虚に反省すべきです。
一時預かり拡充
少子化が進む地域では、定員の空きを活用した子育て支援策の検討も進む。
「おうち保育園かしわぎ」(仙台市)は、22年度から、親の就労時間の基準などを満たさない家庭の子を定期的に預かっている。
22年度に長女(3)を週4回、長男(1)を週1回通わせていた主婦(43)は「夫の転勤で引っ越してきたが、知り合いがおらず、家庭で一人でみるのは限界だった。本当に助かった」と話す。
同園の取り組みのように、普段は保育園を利用していない未就園児を定期的に預かるなど、「一時預かり事業の拡充」を検討しているのは、23自治体に上った。
岸田首相が目指す「次元の異なる少子化対策」のたたき台にも、誰でも時間単位で利用できる、新たな通園制度の創設が盛り込まれた。
日常的な医療支援を必要とする医療的ケア児の受け入れを検討しているところも19自治体あった。
福岡市は子ども食堂を保育園で開くことを検討し、千葉市は共働き家庭の小学生を預かる学童保育を保育園で行うことを検討している。
保育システム研究所の吉田正幸代表は「これまで対象になっていなかった家庭に支援を広げることは、子育て負担を軽減し、少子化対策になるだけでなく、施設の運営の助けにもなる。国や自治体は、子育て家庭のニーズをより丁寧にすくい上げるべきだ」と話している。
これらは例外的なケースです。もし、例外的でないとすれば日本の家庭の劣化(崩壊)であり、その原因と対策を考えるべきであり、保育所の定員割れの穴埋めをして失敗を糊塗すべきではありません。いずれにしても少子化対策とは別の単なる保育所対策であり、保育所増設政策の誤りを糊塗せんとするだけの議論です。
人気に格差 落選も増
定員に余裕のある保育施設が増える中、依然、希望通りに利用できない実態もある。
「第16希望まで書いて、唯一見学できなかった園に決まった」と、この春から長女(1)を預ける横浜市の会社員女性(32)は話す。
同市では、今春、保育の申込者数も、1次選考の落選者数も前年度より増えた。市は昨年9月、希望の園に入れなかった要因を分析し、結果を公表。それによると、入れなかった児童の7割は1、2歳児で、約3割は6園以上申し込んでも入れず、開発の進む主要駅周辺に目立った。
市は、主要駅周辺で重点的に施設を整備するほか、比較的余裕のある0歳児の定員を減らして1歳児の定員を増やす事業者に助成金を出すなど、保護者のニーズに合わせた整備を進めるという。
盛岡市では、申込者数は前年度より56人減ったが、落選者は5人増えた。担当者は「保護者の希望がシビアになった」と推測する。待機児童が減って入りやすくなったため、通いやすさや開所時間を重視し、希望施設を絞るケースが多いとみられるという。
希望が集中し、定員を超えて子どもを預かる人気園がある一方で子どもが集まらない園もあり、同市の担当者は「施設間の差が大きくなっている」と漏らす。(生活部 林理恵)
単に保育施設の経営に問題がある(改善の必要がある)という指摘であり、それを無理矢理“少子化”に結びつけようともしていない議論であり、少子化対策として論じる問題ではありません。
保育所の定員割れは、保育所が過剰である事を物語っています。それにもかかわらず少子化が深刻の度を増しているのが現実なのです。保育所の増設は、少子化対策の核心である子育て支援の中核として長年力を入れてきた施策ですが、それにもかかわらず少子化が一向に改善しないどころか、逆に悪化の一途をたどってきたと言う事は、既に(或いは当初より)保育所の増設は少子化対策とは無関係・役立たずで、大きな誤りであったこが明らかであると言うことを意味しています。
それを認識する事無く、ただ「異次元、々」と念仏の様に唱えるだけで、中身は周囲の顔色を見ながらこれから決めると言って、同じ方向(子育て支援)の誤りを更に拡大実施せんとする岸田政権の「異次元の少子化対策」は、“異次元の愚行”と言うべきです。
令和5年4月7日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ