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“年収の壁”を口実に「準専業主婦」をだまし、全員を「共働き」に移行するというのが、このややこしい変更の狙い
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「年収の壁」企業支援策 政府 10月中にも導入の方針
2023年8月10日 7時16分 NHK
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一定の年収を超えると配偶者などの扶養を外れて社会保険料の負担が生じ、手取りが減ってしまう、いわゆる「年収の壁」をめぐり、政府は手取りが減らないように取り組む企業への支援策をことしの10月中にも導入する方針で、今後、労使双方が参加する審議会で議論することにしています。
「年収の壁」は、企業の規模によって年収が106万円や130万円を超えると配偶者などの扶養を外れ、社会保険料の負担が生じるために手取りの収入が減るもので、「壁」を超えないように働く時間を抑える人もいるため、人手不足の要因とも指摘されています。
このため政府は対策を検討していて、ことし10月からは最低賃金が全国平均で時給1000円を超える見通しとなり、働く時間を抑える人がさらに増える可能性があるとして、10月中にも新たな支援策を導入する方針を固めました。
具体的には「壁」を超えても手取りが減らない水準まで賃上げや労働時間の延長を行う企業に対し、従業員1人あたり最大で50万円の助成金を雇用保険から支給することを検討しています。
政府としてはこうした対策により、「年収の壁」を意識せずに働ける環境を整備することで、パートで働く人たちなどの収入の増加につなげたい考えで、今後、労使双方が参加する厚生労働省の審議会で議論することにしています。
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NHKの報道は、年収の“壁”に的を絞り議論を展開していますが、それは正しい議論でしょうか、その目的は何なのでしょうか。
賃金(年収)の額が一定の基準を超える(一段上がる)と、負担(税率)が(一段)増えるというのは、税制ではごく普通の考え方で、例えば所得税率は所得が高額になるほど、税率は高くなります。そして税率とその基準になる所得額(壁の高さ)は、国内の経済事情(賃金水準の上昇、下落等)に伴って、適宜変更されます。
この基準制度を“壁”と言って問題視する人は居ません。今回指摘されている社会保険料も、広い意味で“税”と考えることが出来ますので、賃金水準の上昇・下落などにより変更が必要になったときは、設定されている基準(壁)の高さや保険料を変更して公平を維持することは制度上予定されていることです。過去にそのような実例は普通にあると思います。
それに触れずに、単なる税制上の一つの基準をあたかも障害物で有るかの様に“壁”と呼び、壁の高さの変更という本来の改正手段を講じることなく、話を別の議論(50万円の助成金を雇用保険から支給する新制度の創設)に持っていくのは、国民を欺く議論です。
今回の“年収の壁”が“難攻不落の壁”で有るかの主張は事実に反し、有りもしない壁の存在を主張するものであり極めて異常であり、他意あるものと考えざるを得ません。
今回も最低賃金の引き上げ等により、賃金水準が上昇し、それによる負担の増加を防ごうという趣旨であるならば、“年収の壁”の高さを引き上げれば済む話しであり、何も新制度を作る必要は全く有りません。例えば106万円→120万円、130万円→150万円にすれば良いのです。それだけで済む話しです。これだけで「働く時間を短縮する人が増える」ことも、「労働力不足」についても同様な抑止効果が得られます。
それにもかかわらず、“壁”の高さの変更を拒み、わざわざややこしい制度変更議論をするのは何のためでしょうか。それは「扶養」をなくすという事です。限度額を超えれば、単に本人(妻)に社会保険料の負担が生じるだけに止まらず、配偶者(夫)の「扶養控除」、「配偶者控除」にも影響が出てきます。
これは本人(妻)の負担だけの問題では無く、配偶者(夫)の問題、当然夫婦の問題にもなってくるわけです。
しかるに今回の報道では、その点に全く触れていませんが、これは“欠陥報道”と言うべきです。
要するに今回の主張をしている人達の狙いは、有りもしない“年収の壁”を口実に「準専業主婦」をだまし、全員を「共働き」に移行するというのが、このややこしい変更の狙いであるだと思います。
それではそれは彼女(妻)達とその夫達の望むところでしょうか。おそらくそうではないでしょう。
労使をまじえて協議するとのことですが、肝心の当事者である準専業主婦とその夫が入っていません。いれないのは自分たちがしようとしていることは、当事者の意向に反するという事を認識しているからです。
それに触れずに、単なる税制上の一つの基準をあたかも手の付けられない障害物で有るかの様に“壁”と呼び、壁の高さの変更という本来の改正手段を講じることなく、話を別の議論(準専業主婦の廃止)に持っていくのは、国民を欺く議論です。
専業主婦を選ぶか、共働きを選ぶか、準専業を選ぶかは本人達の生き方の自由として、多様な選択肢を残すべきです。共働きに統一しようなどと言う考え方は論外です。
それにもかかわらず、近年共働き家庭が増えてきたのは、“少子化対策”、“女性活躍”などの言葉に便乗した各種の公的支援制度により、専業不利、共働き有利社会をつくり、共働きに誘導してきた結果です。
その結果とも言える“女も外に出て働け”社会は、未婚の増加、子どもの居場所喪失など、多くの副作用を招来し日本の社会の劣化招いています。彼女達の暴走を見逃してはなりません。
令和5年8月12日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ