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夫婦別姓と“通称”使用の可否は別問題。“通称”使用の実態は“公私別姓”ではないのか -“制度的夫婦別姓”の国、中国と韓国を“女性活躍の国”と認識する人はいない-
経団連が“夫婦別姓”を求めて政府に申し入れることが、下記の様に読賣新聞に報じられていました。
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経団連 選択的夫婦別姓求める 初の提言 「リスク無視できず」
2024/06/11 05:00 読売
経団連は10日、夫婦別姓を選択可能にすべきだとの提言を発表した。「ビジネス上のリスクになり得る事象で無視できない」と主張し、今回初めてまとめた。現在の同姓制度が女性活躍の支障になっているとして、政府に法律改正を早期に検討するよう求める。
経団連が会員企業に調査を行ったところ、旧姓など、通称の利用を認める企業は9割に上る。海外出張時に、パスポートの名前と通称が異なり、出入国や宿泊でトラブルになった例があるという。論文や特許の取得には、戸籍上の氏名の表記が必須となる。姓を改めることで、キャリアが途切れ、不利益を被った例もある。
民法では結婚に際して、男性か女性の一方が必ず姓を変えなければならない。民法などの規定が憲法に違反するかが争われた裁判で、2021年に最高裁は、「国会で論じられ、判断されるべき事項」だとして、合憲の判断を示している。
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夫婦別姓による旧姓使用と、それ以外の通称使用は別問題です。今までは夫婦同姓・別姓の問題として論じられていましたが、ここでは話しが変わっています。
結婚に際して夫婦どちらかの改姓を伴う①“夫婦同姓”の是非と、②戸籍上の“本名”以外の“通称”を使用(使い分け)し、複数の姓を名乗ることの是非は、共通する部分もありますが、本来別の問題です。
また夫婦別姓は主として家族の問題ですが、“通称”使用の可否は別問題です。おそらく実態は“公私別姓”の問題ではないのでしょうか。
それにもかかわらずこの二つを区別せずに論じている経団連の主張は不可解であり、他意あるものと思われます。
経団連は夫婦同姓の問題点として、ビジネス上のリスクを挙げていますが、対象者は何人位を想定しているのでしょうか。
「例がある」、「例もある」と言っているところから見ると、多数とは思えません。全体から見れば、ごく僅かであれば、他の事務処理の工夫で回避できる(回避すべき)問題(リスク)では無いのでしょうか。さらに言えばこれは「夫婦別姓」を実現する為の口実作りではないのでしょうか。
複数の名前を使う(使い分ける)という事は、よほどの事情が無ければ許可すべきはありません。周囲の人に思わぬ迷惑を掛けることが予想されます。“他人同士”だと思って話をしていたら二人は夫婦だった、などと言うことが起こり得ます。
さらに夫婦別姓は家族にも大きな負担となります。子供がいる家族では、必然的に親子別姓が生じます。子供に兄弟・姉妹がいれば兄弟・姉妹間でも別姓が生じます。一番身近な家族の間で、姓が異なるとなると、一体、「姓」は何のためにあるのかと言うことになりかねません。
夫婦別姓により利益のある(リスクを回避できる)人達よりも、不利益を蒙る(リスクを負う)人の方が遙かに多いと思いまます。しかるに“夫婦別姓”を主張する人達はこの点を避けていますが、とても無責任な主張だと思います。
世界には古くから“制度的”夫婦別姓の国があります。それは中国と韓国ですが、この2国が“女性活躍”の国として認識されてはいません。むしろ反対です。
令和6年6月13日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ