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なぜ「少子化対策」が「人口減対策」に変わったのか、 「少子化対策」に便乗する「地方創生」は別問題、 少子化の原因は未婚の増加、未婚の増加の原因は「夫婦・父母の役割分担否定社会」
12月1日の読売新聞は、「[スキャナー]地方創生、女性を重視…人口減対策」と言う見出しで、次の様に報じていました。(茶色字)は記事 黒字は安藤の意見)
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[スキャナー]地方創生、女性を重視…人口減対策
2024/12/01 05:00 読売
人口急減
石破首相は人口減少対策に関するフォーラムで、若者や女性を重視した地方創生に取り組む姿勢を打ち出した。子育て世代が働きやすい環境を整え、地方定住につなげたい考えだ。地方から都市部への人口流出に歯止めがかからない現状への危機感が背景にある。(大阪社会部 梅本寛之、鳥取支局 中島高幸)
1989年の1.57ショック以来、「少子化対策」とされてきた問題認識が、いつのまにか「少子高齢化問題」、「人口減少対策」と言い変えられるようになりましたが、その事実も理由も明らかにされたことがありません。
「少子化対策」は出生数の減少を捉えてそれを問題視したものです。それに対して「少子高齢化問題」、「人口減少対策」は微妙な違いの様ですが、本質的な違いが隠されています。「高齢化問題」とは主として老齢人口の増加を問題視したもので、その原因が過去のベビーブ-ムの結果の場合もあれば、「少子化」の結果の人口ピラミッドの変形あるいは平均寿命の延伸と言うこともあるでしょう。
「人口減少対策」は減少の原因を究明して減少に歯止めを掛ける、増加に転じると言う「根治療法」ではなく、「対症療法(問題・結果に対する善後策)」と言う側面があります。
代表的なものの例としては「移民受け入れ政策」です。
少子化問題を人口減少問題と言い換えている裏には、このような闇が隠されています。
なぜこのような「闇」が発生するのでしょうか。それは「1.57ショック」以来35年間、少子化対策と偽って、少子化に便乗して実施してきた、共働きの母親達に対する「子育て支援」が、何の成果も無く大失敗に終わったからです。しかるに「大失敗」という言葉(認識)はどこからも表面に出てきていません。
多額の費用と時間を費やしてきたにもかかわらず、少子化が改善するどころか、年を追うごとに深刻さを増すと言う、隠しようも無い大失敗に対して、偽りの少子化対策を主張・実施してきた人達には重大な責任がありますが、彼ら(彼女ら)は失敗を覆い隠し、効果の無かった「少子化対策」を中止しようともせず、責任追及から逃れようとしています。
石破首相、人口減克服へ「若い人や女性に選ばれる地方を作る」…男女間の賃金格差是正など訴え
雇用安定 都市に流出阻止
人口減少対策のフォーラムで意見を交わす中国地方の県知事ら(30日午後1時40分、鳥取市で)=大久保忠司撮影
「女性がもっと労働市場に参画すれば、労働の量だけでなく、質の向上も図れる。東京の方が活躍できるというイメージで、人口が流出していることも考えられる」
鳥取市で30日に開かれたフォーラムで、矢田稚子首相補佐官はこう述べ、地方から女性が流出する原因に、働く環境が影響しているとの見方を示した。
首相もこの日のフォーラムで、地方での女性活躍を人口減少対策のカギと位置づけた。男女の就労環境の格差を是正し、地方で魅力的な職場を創出することで、地方から都市部へ女性が転出する流れを食い止めたいとの考えからだ。東京は生活コストの高さなどから出生率が低い傾向にある。若い女性の東京への流入が、日本全体の少子化に拍車をかける構図となっている。
「若い女性の東京流入」、「東京は生活コストが高いため出生率が低い」の2点が「日本全体の少子化に拍車を掛けている」と言うのであれば、その対策として「東京の女性に経済的支援を」という提案があっても理屈としてはおかしくありません。それが無いのはなぜでしょう。
内閣府が昨年12月に公表した「地域の経済2023」によると、東京圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川3県)への転入超過数は2015年以降、若年層(15~29歳)で女性が男性を上回る状況が続いている。東京圏に移住した地方出身者を対象に国土交通省が実施した20年の調査によると、移住理由は「希望する職種の仕事が見つからないこと」が2割超で最多だった。
首相は若者や女性にとって「魅力ある働き方・職場」を地方で確保する重要性を訴え、対応策として、賃金格差の是正や、非正規雇用の正規化推進などを挙げた。
女性が就労への意欲を維持するためには、男女の賃金格差の是正が必要不可欠だ。女性の賃金水準が高い東京圏は男女間の差が比較的小さいとされるが、地方では女性の賃金が低く、都市部に比べて男女差が大きい傾向がみられる。男性の賃金を1とした場合の女性の賃金水準は、鳥取県では0・82で、全国平均の0・86を下回る。
若者が安心して結婚・出産するため、安定的な雇用も求められる。総務省の22年の調査によると、30~34歳の男性では、正規雇用の56%が結婚しているのに対し、非正規雇用では20%にとどまった。
非正規雇用の約7割は女性が占めている。女性の多くが非正規で働くのは、出産や子育てを理由に勤めていた会社をやめたり、短時間労働に変更したりするケースが多いためだ。30歳頃から女性の正規就労の割合がL字カーブを描くように低下し、30~40歳代では非正規雇用が中心となっている。首相は、この「L字カーブ」の解消にも意欲を示した。
男女間の賃金格差の是正や、女性の非正規雇用の正規化推進は「希望する職種の仕事の発見」に繋がるのでしょうか。
もし出来たとしても、採算の取れない職場であれば、長続きはしないでしょう。
こういうことを言う人達は、空前のベビーブームが訪れた敗戦・占領下の昭和22年~24年は、男女間賃金格差が無く、女性の多数が正規雇用のもとで働いていた時代だと思っているのでしょうか。
フォーラムに参加した鳥取市のIT企業「アクシス」の坂本哲社長は「育休を取得することが普通で、誰も嫌な顔をしない空気感が大切だ」と指摘した。同社では1993年の創業当時から「出産・育児休暇制度」を設け、取得後の職場への復帰率は100%になっているという。女性管理職の割合も21・6%を占め、民間の調査会社がまとめた全国平均の10・9%を上回っている。
石破総理は、「日本の少子化、人口減」の原因は何と考えて居るのでしょうか。「少子化」と「人口減」は別ですが、「日本の人口減」と「大都市以外の地方市町村の人口減」は、その原因も影響も異なり別問題です。
国の近代化に伴う大都市の人口過密、一極集中は各国で起こっている現象で、過密の弊害を解消する為の人口の「一部地方移転」は「健全」の範囲を逸脱するものではありません。
しかるに今石破首相が述べているような、過疎地域の消滅を防ぐ為に「格差是正」の名目の下に金銭をばら撒いて大都市から過疎地域への人口逆移転を画策する施策は、マクロ経済の視点から見ても政策としての「健全性」を欠き効果は期待できません。過疎対策なら、複数の過疎地域の集約化などという対策も検討されるべきです。
高度成長期には、全国各地に大企業の工場が建設され「工業団地」なども存在していましたが、その後多くの工場が中国などの海外に移転し消滅した為、それが地方の衰退の一因になりました。それを防ぐことは出来なかったのか、どうすれば防げるのかを考えるべきです。
いずれにしても「地方」の問題は、「国全体」の問題とは切り離して考えるべきです。地方が過疎化しても、国全体で適正な人口が維持されていれば、それは構造の変化として対処が可能です。
しかし、国全体の人口減少に見舞われれば、国全体の劣化(衰退)を招き、さらに外国人(移民)が増加すれば、国家としての日本の構成変質を招き、将来の世代に回復不能の困難を背負わせる結果になりかねません。
今、欧米各国では「移民」が最大の(解決困難な)難題となっています。今の日本でも既にその予兆が起きていますが、日本のマスコミはそれを報じること無く、日本人の視点では無く、在日外国人の視点での発言(報道)を繰り返しているだけです。我々は子供や孫達の世代にそのような困難を残すべきではありません。
「日本の少子化(人口減)」の議論の中で「地方云々」は話しのすり替えであり、「便乗」であり詐欺行為です。
「政策の継続こそ必要」 人口戦略会議メンバー登壇
30日のフォーラムには、民間有識者でつくる「人口戦略会議」のメンバーも登壇し、人口減少対策の必要性を訴えた。
同会議の三村明夫議長(日本製鉄名誉会長)は、急速に進む少子高齢化について、「どのような未来を残すか、我々には強い責任がある。数十年にわたる粘り強い、一貫した政策の継続によってのみ解決できる」と強調した。対策を怠れば、社会保障や地域社会は持続が困難になるとし、危機感をあらわにした。
35年間の「少子化対策」が大失敗であった事は明らかです。今すべき事は大失敗の原因究明と失敗に終わった政策の中止です。「強い責任」があるトップ(三村氏)以下メンバーを入れ替えての責任追及が不可欠です。
こんな単純・明白なこと分かっていない(分かろうとしない)人は議長どころか1メンバーとしてもふさわしくありません。正に日本の闇です。
元総務相で同会議副議長の増田寛也日本郵政社長も「国と地方が同じ方向を見て粘り強くやり続けることで、初めて日本の将来が開けてくる」と述べ、国と地方が一体的に対処すべきだとの考えを示した。
郵政民営化を逆戻りさせた増田寛也がこんな所にまで口を出しているとは驚きでした。除外すべきです。
人口戦略会議は今年4月、全市区町村の4割にあたる744自治体が人口減によって、いずれ行政の運営が困難になり、「消滅する可能性がある」との報告書を公表した。11月20日に発刊した「地方消滅2」(人口戦略会議編著、中公新書)では、「少子化の流れを変えるためには、若者世代、特に育児負担が集中している女性が、未来に希望が持てるようになることが重要だ」と指摘している。
日本経済が高度成長の時は、中学・高校を卒業した若者の多くが、東京、大阪などの大都市に集団就職で上京し、「金の卵」と言われるほど歓迎され、経済的にも恵まれていました。当時は外国人“実習生”はいなかった時代です。
女性の育児負担という点では、現在よりも当時(高度成長の時)の方が女性に集中していましたが、それが「少子化」に結びついたという事実はありません。共働きを負担と感じる女性はいても、自宅での“育児を負担”と考える女性はあまりいなかったと思います。
当時多数派だった専業主婦は、“三食昼寝つき”と悪口を言われたほどです。
少子化は専業主婦が減り、共働き(共稼ぎ)が増えたことと相関(逆相関)関係があります。「夫婦・父母の役割分担否定社会」→「“女も子供を預けて外に出て働け、男も会社を休んで育児をしろ”社会」が未婚の増加→少子化を生み出したと考えるのが妥当です。
未婚の増加ひいては「少子化」の原因は“夫婦・父母の役割分担否定社会”です。
男女(夫婦・父母)は役割分担が本来の姿であり、それを全面否定した社会こそが少子化の原因です。実際に存在する男女の相違点を問答無用で否定・排除・無視し、役割分担を全面否定した結果、日本の社会では男らしさ、女らしさの喪失が進み、夫婦・父母の役割分担全面否定が・進行する社会になりました。
ではなぜ、誰が役割分担社会を否定したかと言えば、それは役割分担社会で、良いポジションを占めることが出来ない人達です。
そのような夫婦・父母の役割分担全面否定社会では結婚に対する考え方が、変わります。
役割分担社会では、結婚は必須でかつ幸福をもたらすもので、配偶者を得たい、子供が欲しいと言う気持ちはごく普通のもので、未婚は不幸でしか有りません。これが健全な社会です。しかし、逆に夫婦の役割分担を全面否定し共働き(女も男と同じように外に出て働け、男も会社を休んで育児をしろ)を前提とする社会では、結婚は必ずしも必須でかつ幸福をもたらすとは言いがたく、結婚願望は役割分担社会ほどではありません。結婚できない人、独身を貫くのも一つの生き方という人が出てきます。それが未婚の増加、少子化の原因です。
読売新聞社も今年4月、少子化の加速を抑え、将来にわたって社会の活力を持続させるため、7項目の人口減少対策を提言した。 結婚から育児まで切れ目ない支援や、若者が希望を持てる賃上げなどを求め、「住み続けたい地域づくり」の重要性を盛り込んでいる。
新聞社(メディア)の役割は、社会の多数の様々な意見を歪曲無く報じて、読者の様々な判断の材料を提供する事が第一で、自分の意見を大声で述べることではありません。それは世論操作です。
この日のフォーラムに出席した中国地方の知事からも、女性・若者の支援や、魅力的な地域づくりへの意欲を示す発言が相次ぎ、鳥取県の平井伸治知事は「若者、女性の意見を聞いて地方創生を進め、魅力づくりを頑張りたい」と語った。(政治部 八角一紀)
この“フォーラム”、「人口戦略会議」は誰が何の為に作り、誰がメンバーを選んだのか不明ですが、全く「時間の無駄(何もしない方がマシ)」としか言いようが無い展開です。こんなことでは日本の行く先が心配です。
これらの話しのすり替え、便乗に終止符を打つことが必要です。