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家庭内暴力

 首相の諮問機関である男女共同参画審議会(岩男寿美子会長)が、「家庭内暴力」について答申を出しました。8月1日の朝日新聞は、「夫の暴力は犯罪−法整備の必要性を答申」と言う見出しで、次のように報じています。

 「夫や恋人からの暴力は犯罪に当たり、違法で許されない行為――。首相の諮問機関である男女共同参画審議会(岩男寿美子会長)は31日、『女性に対する暴力に関する基本的方策』を森喜朗首相に答申し、身近な男性から女性への暴力が犯罪に当たると明確に位置づけた。こうした暴力に対処するための新たな法制度の検討が必要だと求めている」

 答申は、「身近な男性から女性への暴力が犯罪に当たる」と言っていますが、身近な人を叩くことはすべて「暴力」とか「犯罪」になるのでしょうか。それとも、身近な人達の間のそれらの行為で、「男性から女性への行為」だけが「暴力」になり、「犯罪」になるのでしょうか。もし、そうであるならばその理由は何なのでしょうか。

 母親が子供を折檻したり、虐待したりするのは「暴力」にはならないのでしょうか。学校内で、教師が生徒に加える「体罰」は「暴力」ではないのでしょうか。生徒間の「いじめ」は「暴力」ではないのでしょうか。それらが皆、「暴力」であるとしたら、それらの「暴力」も皆「犯罪」と言うことになるのではないでしょうか。

 児童虐待に関心が高まり、子供を虐待から守る必要は主張されても、母親を犯罪者として処罰すべきと言う意見を聞いたことがありません。学校内の体罰やいじめという「暴力」に対して、警察の迅速な介入と、教師や生徒を犯罪者として処罰することが必要であるという議論も聞いたことがありません。学校は警察に対して「聖域」であるかのような主張すらあります。学校が「聖域」であるならば、家庭もまた「聖域」ではないのでしょうか。

 夫や恋人の暴力が犯罪であるというのであれば、特に「新たな法整備」は必要ありません。窃盗の罪に関しては、配偶者間、親族間の窃盗は刑を免除すると言う特別扱いがありますが、傷害、暴行の罪に関してはそのような例外はありません。「暴力はすべて犯罪である」とするなら、「新たな法整備」をしなくても、現行の法律を例外なく適用するだけで処罰することが可能だと思います。

 人を叩くことが「犯罪」になるか否かは、その程度や意図によると思います。父親が、言うことを聞かない中学生の息子をげんこつで叩いても、それは「暴力」でも「犯罪」でもないと思います。身近な人による「暴力」のうち、男性から女性に対するものだけを、「犯罪」というのは根拠がないと思います。それは、「女性が不快に思うことは、すべてセクハラである」と言うのと同じ、女性中心の考え方だと思います。

平成12年8月4日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ