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結婚しない人が増えた理由

 11月22日の読売新聞に、「少子化の背景に企業風土」という見出しで、日本社会事業大学教授で元厚生省政策課室長の椋野美智子さんの論説が記載されていました。椋野さんは次のように言っています。

 「・・・出生率の低下はずっと早い1970年代半ばから始まった。主な原因は未婚率の上昇である」
 「といっても、男女とも結婚しない人生を積極的に選んでいるわけではない。・・・未婚者の9割近くは結婚願望があるが、この年齢層の独身の理由のトップは『適当な相手にめぐり合わない』。では、何を結婚相手に求めているかといえば、『相手の人柄』に続き、男女とも『自分の仕事に対する理解と協力』・・・」
 「実は深刻なミスマッチが潜む。・・・男性は旧来の性別役割分業型の結婚を望み、女性は男女共同参画型の結婚を望んでいる、と言える」
 「・・・父親の経済力と、母親の家事力に頼って快適な生活を送るパラサイトシングル達に、結婚が魅力的に映らないのも無理はない」
 「『男性に伍して生活を犠牲にする働き方(キャリアウーマン)も、家庭と両立するけれど、賃金も低く評価もされない働き方(パート)も、どちらも嫌』と、専業主婦を志向する女性達
 「男性から育児時間を奪い、女性に働くことを忌避させているのは、職場の都合を最優先させ、急な残業や休日出勤、頻繁な転勤命令などを当然とする企業風土である」

 未婚の人が増えたのは、本当に仕事や家事に対する考え方のミスマッチが原因でしょうか。恋人が出来たけれど、仕事に対する考え方が合わなくて、結婚にいたらなかったというケースは、そんなにたくさんあるのでしょうか。好きな相手が出来れば、そのぐらいの障害で結婚を断念することはないと思います。「適当な相手にめぐり合わない」というのは、要するに恋人がいない、できないと言うことではないのでしょうか。「仕事と両立が難しい」というのは、今の時代、女性が結婚できない言い訳としては、一番無難な言い訳なのだと思います。

 「パラサイトシングルの生活を快適と感じ、結婚を魅力的に感じない」と言っていますが、肉体的、精神的に健康な人間は、大人になれば親から自立しようとするものだと思います。いつまでも親に寄生して安逸な生活をしようというのは不健全かつ異常です。自立心が欠如していて、結婚相手を見つけることが出来ない、そう言う人間が増えていると言うことではないのでしょうか。それは、今の学校や家庭の教育に問題があるからではないでしょうか。

 「キャリアウーマンもパートも嫌で、専業主婦を志向する女性達」というのは、女性の多くは専業主婦を希望しているという意味なのでしょうか。未婚率が高くなったもう一つの原因は、、結婚が幸福な専業主婦の座を約束しなくなったことが挙げられると思います。
 国や自治体の一連の共働き女性優遇策と専業主婦冷遇策によって共働き所帯が増えた結果、専業主婦所帯は夫がよほど高給取りでないと、共働き所帯に比べて経済的に見劣りがするようになってしまいました。共働き所帯が少ない時代は共働きのデメリットが大きく、あまり気にはならなかったものが、共働き所帯が増え、しかもさまざまな優遇措置がとられるようになると、専業主婦所帯は経済的に不利であると感じられるようになりました。かといって、子供を保育所に預けて共働きを続ける結婚生活はしたくない。多くの女性に迷いが生じ、結婚が魅力的ではなくなったのは、このへんに原因があると思います。パラサイトシングルの生活を快適と感じる女性達が目指すのは、専業主婦の座であって、共働きの生活ではないと思います。

 国や自治体が共働き所帯の女性にさまざまな補助金や恩典を与えて優遇する一方、幼稚園の補助金を削減したり専業主婦の年金を廃止しようとしたりして、専業主婦所帯を冷遇するという不公平な政策により、結婚する女性に共働きを強いる結果になったことが、結婚が魅力的でなくなった原因です。共働き所帯を優遇し、専業主婦所帯を冷遇するという不公平な政策を止め、共働きを選ぶか、専業主婦を選ぶかは個人の自由に任せ、専業主婦は損ではないということが実感できるようにすれば、専業主婦を選んで結婚することにためらいはなくなり、結婚する人は増えると思います。

平成12年12月10日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ