I28
内閣府の「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」に見る世論操作

 8月5日の読売新聞に内閣府が今年5月に実施した、夫婦別姓に関する世論調査(調査票は下記)の結果が、発表されていました。

                               今回調査        前回調査
戸籍上の夫婦別姓を容認する者            42.1%        32.5%
 (上記の内実際に別姓を希望する者)      ( 18.2%)        (16.3%)
別姓は子供に良くない影響があると答えた者     66.0%        68.1%


 新聞の全体のトーンは別姓容認者が前回調査(平成8年6月 32.5%)よりも増えた、と言うものでしたが、実際に別姓を希望する者は42.1%の18.2%ですから、全体のわずか7.7%に過ぎません(前回調査では32.5%の16.3%で5.3%) 反対に子供の悪影響があると考えている人は66%と3分の2を占めています。この結果を見ると多数の人は夫婦別姓は好ましくないと考えていることが分かります。多数の人が好ましくないと考えていることを、なぜ容認しなければならないのでしょうか。

 この世論調査は最初に、夫婦同姓(夫婦の一方の結婚による改姓)の否定的な一面についての質問を集中し、回答者を十分夫婦同姓(結婚による改姓)に対して懐疑的にさせておいて、核心の質問(夫婦別姓を希望する者に対して、それを容認するか否か)をしています。夫婦別姓のデメリットに対する質問は、質問6〜8の「夫婦の一体感」、「姓の違う両親との関係」、「子供に対する影響」のみですが、質問の内容はかなりピントが外れています。また、実際に夫婦別姓が実行された場合のデメリットはこれにとどまるものではないと思います。

 大半の人が同姓を選択し、別姓を選択しないのはさまざまなデメリットがあるからだと思いますが、今回の世論調査の質問は夫婦別姓のデメリットに言及することが少なく、質問の内容がバランスを欠いています。夫婦同姓(結婚による改姓)のデメリットに質問を集中すると言う世論調査は、回答者を「希望する者の夫婦別姓を容認する」という回答に誘導するものだと思います。

 この世論調査は一番重要なことを質問していません。それは、「夫婦は同姓であるべきか否か」、「夫婦同姓と別姓とどちらが好ましいか」という質問です。上記の質問の内容(実際に別姓を選択するか否か、子供への悪影響)と、その回答結果から見れば、おそらく大半の人は夫婦は同姓であるべきだと答えるものと思います。これが一番重要な点だと思います。
 それにも関わらず、この世論調査がこの質問を避けて、「別姓を容認するか否か」という質問をしているのは、問題の核心から国民の目をそらし、少数の横暴を押し通そうと言う意図があるからだと思います。
 
平成13年8月26日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ



V 調 査 票

選択的夫婦別氏制度に関する世論調査

平成13年5月

Q1  〔回答票1〕 婚姻をした場合の名字(姓)のことについてお尋ねします。最初に,あなたは,名字(姓)とは,どういうものだと思いますか。次の中から1つだけお答えください。

(16.3) (ア) 他の人と区別して自分を表す名称の一部
(45.3) (イ) 先祖から受け継がれてきた名称
(11.6) (ウ) 夫婦を中心にした家族の名称
( 9.6) (エ) (ア)と(イ)の両方
( 2.1) (オ) (ア)と(ウ)の両方
( 5.7) (カ) (イ)と(ウ)の両方
( 6.7) (キ) (ア)と(イ)と(ウ)の全部
( 0.1)   その他(                       )
( 2.5)   わからない

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Q2  〔回答票2〕 現在の法律では,婚姻によって,夫婦のどちらかが必ず名字(姓)を変えなければならないことになっています。あなたは,婚姻前から仕事をしていた人が,婚姻によって名字(姓)を変えると,仕事の上で何らかの不便を生ずることがあると思いますか。

(41.9) (ア) 何らかの不便を生ずることがあると思う → (SQ1へ)
(52.9) (イ) 何らの不便も生じないと思う → (Q3へ)
(5.2) (ウ) わからない → (Q3へ)

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SQ1  〔回答票3〕 婚姻前から仕事をしていた人が,婚姻によって名字(姓)を変えると,仕事の上で何らかの不便が生ずることがあるとして,そのことについて,あなたは,どのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。
(N=1,454)

(25.7) (ア) 婚姻をする以上,仕事の上で何らかの不便が生ずるのは仕方がない → (Q3へ)
(56.7) (イ) 婚姻をしても,仕事の上で不便を生じないようにした方がよい → (SQ2へ)
(16.9) (ウ) どちらともいえない → (Q3へ)
(0.8)   わからない → (Q3へ)

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SQ2  〔回答票4〕 婚姻をして名字(姓)を変えても,仕事の上で不便を生じないようにするため,婚姻前の名字(姓)を通称として使えばよいという考え方がありますが,あなたは,このような考え方について,どのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。
(N=825)

(56.6) (ア) 仕事の上で通称を使うことができれば,不便を生じないで済むと思う
(41.5) (イ) 仕事の上で通称を使うことができても,それだけでは,対処しきれない不便があると思う
( 1.9)   わからない

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(全員に)

Q3  〔回答票5〕 あなたは,例えば,男性の兄弟のいない女性が,名字(姓)を変えると,実家の名字(姓)がなくなってしまうなどの理由で,婚姻をするのが難しくなることがあると思いますか。

(40.3) (ア) 実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることがあると思う → (SQへ)
(53.3) (イ) 実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることはないと思う → (Q4へ)
( 6.5)   わからない → (Q4へ)

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SQ  〔回答票6〕 実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることがあるとして,そのことについて,あなたは,どのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。
(N=1,396)

(25.5) (ア) 実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなることは,仕方がない
(51.6) (イ) 実家の名前を残すために婚姻をするのが難しくなるようなことは,ないようにした方がよい
(21.3) (ウ) どちらともいえない
( 1.5)   わからない

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(全員に)

Q4  〔回答票7〕 あなたは,婚姻によって,ご自分の名字(姓)が相手の名字(姓)に変わったとした場合,そのことについて,どのような感じを持つと思いますか。次の中からいくつでもお答えください。(M.A.)

(26.8) (ア) 相手と一体となったような喜びを感じると思う
(42.8) (イ) 名字(姓)が変わったことで,新たな人生が始まるような喜びを感じると思う
(24.7) (ウ) 名字(姓)が変わったことに違和感を持つと思う
( 7.6) (エ) 今までの自分が失われてしまったような感じを持つと思う
(21.6) (オ) 何も感じないと思う
( 0.6)   その他(                          )
( 3.7)   わからない

(M.T.=127.8)
※  注:回答した中に(エ)が 含まれている場合はSQ2へ

      〃      含まれていない場合はSQ1へ

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SQ1  〔回答票8〕 あなたは,あなた以外の人の中には,婚姻によって名字(姓)を変えると,今までの自分が失われてしまったような感じを持つ人もいると思いますか。
(N=3,204)

(45.7) そのような感じを持つ人がいると思う → (SQ2へ)
(43.9) そのような感じを持つ人はいないと思う → (Q5へ)
(10.4) わからない → (Q5へ)

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SQ2  〔回答票9〕 婚姻によって名字(姓)が変わると,今までの自分が失われてしまったような感じを持つ人がいるとして,そのことについて,あなたは,どのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。
(N=1,728)

(38.9) (ア) 婚姻をする以上,そのような感じを持つことがあっても仕方がない
(38.3) (イ) 婚姻をしても,そのような感じを持つことがないようにした方がよい
(20.8) (ウ) どちらともいえない
( 2.0)   わからない

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(全員に)

Q5  〔回答票10〕 世間には,正式に結婚している夫婦と全く同じ生活をしているけれども,正式な夫婦となる届出をしていないという男女(内縁の夫婦)がいます。あなたは,そのような内縁の夫婦の中に,双方がともに名字(姓)を変えたくないという理由で,正式な夫婦となる届出をしない人がいると思いますか。

(57.0) (ア) 名字(姓)を変えたくないという理由で,正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦もいると思う → (SQへ)
(30.0) (イ) 名字(姓)を変えたくないという理由で,正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦は,いないと思う → (Q6へ)
(13.0)   わからない → (Q6へ)

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SQ  〔回答票11〕 そのような内縁の夫婦は法律(民法)上は正式な夫婦として認められませんが,あなたは,そのような男女についてどのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。 (N=1,976)

(27.1) (ア) 同じ名字(姓)を名乗らない以上,正式な夫婦とは違うと思う
(69.6) (イ) 同じ名字(姓)を名乗っていなくても,正式な夫婦と同じような生活をしていれば,正式な夫婦と変わらないと思う
( 3.3)   わからない

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(全員に)

Q6  〔回答票12〕 あなたは,夫婦・親子の名字(姓)が違うと,夫婦を中心とする家族の一体感(きずな)に何か影響が出てくると思いますか。次の中から1つだけお答えください。

(41.6) (ア) 家族の名字(姓)が違うと,家族の一体感(きずな)が弱まると思う
(52.0) (イ) 家族の名字(姓)が違っても,家族の一体感(きずな)には影響がないと思う
( 0.7)   その他(                              )
( 5.7)   わからない

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Q7〔回答票13〕 あなたは,夫婦の名字(姓)が違うと,自分と違う名字(姓)の配偶者の父母との関係に何か影響が出てくると思いますか。次の中から1つだけお答えください。

(21.6) (ア) 名字(姓)が違うと,配偶者の父母との関係を大切にしなくなると思う
(70.4) (イ) 名字(姓)が違っても,配偶者の父母との関係には影響はないと思う
( 1.0)   その他(                            )
( 7.0)   わからない

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Q8〔回答票14〕 あなたは,夫婦の名字(姓)が違うと,夫婦の間の子どもに何か影響が出てくると思いますか。次の中から1つだけお答えください。

(66.0) (ア) 子どもにとって好ましくない影響があると思う
(26.8) (イ) 子どもに影響はないと思う
( 0.7)   その他(                 )
( 6.6)   わからない

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Q9  〔回答票15〕 現在は,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならないことになっていますが,「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか,夫婦が希望する場合には,同じ名字(姓)ではなく,それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見があります。このような意見について,あなたはどのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。

(29.9) (ア) 婚姻をする以上,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり,現在の法律を改める必要はない → (Q10へ)
(42.1) (イ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には,夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない → (SQへ)
(23.0) (ウ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが,婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては,かまわない → (Q10へ)
( 5.0)   わからない → (Q10へ)

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SQ  〔回答票16〕 希望すれば,夫婦がそれぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗れるように法律が変わった場合,あなたは,夫婦でそれぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望しますか。あなたが,結婚なさっている,いないにかかわらず,お答えください。
(N=1,461)

(18.2) (ア) 希望する
(50.3) (イ) 希望しない
(30.5) (ウ) どちらともいえない
(1.0)   わからない

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(全員に)

Q10  〔回答票17〕 希望すれば,夫婦がそれぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗れるように法律が変わった場合を想定してお答えください。それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗っている夫婦に二人以上の子どもがある場合,子ども同士(兄弟・姉妹)の名字(姓)が異なってもよいという考え方について,あなたは,どのようにお考えになりますか。次の中から1つだけお答えください。

(12.2) (ア) 子ども同士の名字(姓)が異なってもかまわない → (F1へ)
(67.5) (イ) 子ども同士の名字(姓)は同じにするべきである → (SQへ)
(17.4) (ウ) どちらともいえない → (F1へ)
( 2.9)   わからない → (F1へ)

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SQ〔回答票18〕 子供同士は同一の名字(姓)を名乗るべきであるとして,それぞれの子どもが成年に達した時には,それまでと異なる父または母の名字(姓)に変えることができるという考え方について,あなたは,どのようにお考えになりますか。次の中から1つだけお答えください。
(N=2,340)

(36.2) (ア) 今までの名字(姓)を変えない方がよい
(49.1) (イ) 変えることができるとしてもかまわない
(12.6) (ウ) どちらともいえない
( 2.1)   わからない

(M.T.=320.8)

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