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少子化問題をめぐる議論のすり替え

 7月18日の産経新聞朝刊で、政府の「少子化への対応を考える有識者会議」の初会合の内容が報道されました。相変わらず「働く女性が産みやすい環境の整備」とか、「安心して子育てのできる保育環境の改善」というレベルの議論に終始しています。少子化の原因はそういうところにあるのではないのです。

 我が国で少子化の問題が指摘されてからかなりの年月が経過しました。厚生省をはじめ、学者や、評論家の人たちが原因を分析し、その結果、託児所の不足などが理由で「働く女性」や「共働きの女性」が安心して子供を産めないのが原因であるとされて来ました。そして、それらの女性を支援することが出生率向上の鍵であるとして、託児所を増やしたり、育児休業制度を導入したり、子育て後の再就職を保証したりしてきました。しかし、出生率はいっこうに向上しませんでした。

 やがて出生率が下がったのは共働き夫婦が子供を作れないからではなく、結婚しない人が増えたからであることが明らかになってきました。それまでの原因分析と対策は誤りであったと言うことになります。もともと共働きの夫婦は、専業主婦の夫婦に比べて子どもの数が少なく、それが少子化の原因であるというデータはなかったのですから、これらの対策の効果がなかったのは当然の結果と言えます。これらの主張は共働きの女性達が少子化問題を利用して、話しをすり替えて、自分たちの待遇改善を図っただけのことだったと思います。我々は貴重な時間と予算を浪費してきたと思います。
 少子化の原因が、託児所の不備などではないことが分かって来ると、次に未婚者の増加、平均結婚年齢の高齢化が注目されるようになりました。そうすると、今度は「女性の自立意識が高まり、結婚にこだわらなくなった」と言う主張が広まり、さらに最近、厚生省は「未婚化の原因は若い女性が結婚に夢を託せなくなったから」だと言い出しました。

 東京学芸大学の山田昌弘助教授が月刊誌「諸君!」8月号で発表したアンケート調査を見ると、女性の本音が表れていると思います。多くの未婚女性が親と同居して(30歳代前半で70%が同居)、経済的に親に依存した生活をしていることは、彼女たちが「自立」とは正反対の精神的に未成熟の状態であることを意味していると思います。そして、結婚相手を決めるに際して経済的条件に重きを置くとは「夢を託す」とは無縁の情けない考え方だと思います。こうしてみてくると未婚者の増加の原因が「女性の自立心の高まり」や「結婚に夢を託せなくなったから」だというのは嘘で、「精神的に未成熟で打算的な女性が増えたから」と言うのが本当の原因だと思います。

 このような誤った議論が幅を利かせ、修正が効かないのは、この「少子化問題」というテーマに限っては、議論が女性(専業主婦はきわめて少ない)中心になされているからだと思います。

 精神的に未成熟で打算的な女性達を成熟させて、打算的な考え方を改めさせ、結婚する気を起こさせるのは容易なことではありません。しかし、少子化問題は緊急の課題です。早急に効果のある対策を実行しなければなりません。世の中には三人目、四人目の子どもがほしいと思っていても、経済的な理由で断念している人は少なくありません。三人目、四人目を産んだ人たちに、十分な補助金(子ども1人月額10万円ぐらい)を大学卒業まで支給することを約束すれば、出生率は目に見えて上昇すると思います。必要な財源は、独身者から増税してまかなえばいいと思います。独身者は担税能力はありますし、いずれ高齢化したときは、他人が産み、育てた子どもの世話になるわけですから、負担するのは当然だと思います。

 「少子化への対応を考える有識者会議」の中で「ベビーカーを抱えて階段を上り下りするのは殺人的」とか、「出産リスクなどの情報提供が必要」などの意見が出されたことが紹介されていますが、「少子化問題」とどんな関係があるのでしょうか。こういう議論で時間をつぶす、「有識者会議」のメンバーの見識を疑います。この会議は橋本総理大臣の肝いりで設置され、当日の会議には自ら出席し、「六本木のマンション住まいに戻るが、ここでは母親が子育てグループを作っている」と語っていたそうですが、こういう人たちをメンバーにし、かつ、こういうレベルの低い議論をするとは、橋本総理大臣の認識もお粗末という他はないと思います。

平成10年7月19日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      I目次へ