I39
少子化問題をめぐる議論のすり替え(その2)

 3月4日の産経新聞は、「進む晩婚化、遅れる出産」と言う見出しで、次のように報じていました。
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30代前半の3分の1が独身
 第二次ベビーブーム世代(昭和四十六−四十九年生まれ)の女性の未婚化が進み、半数が三十歳までに出産していないことが三日、厚生労働省の調査で分かった。この世代は、人数の多さで出生数の維持に貢献していた形だったが、厚労省は「出生率が現状維持なら今後の出生数の減少はほぼ確実」としている。
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 厚生省がようやく少子化の原因が未婚の増加であることを認めました。産経新聞の見出しは「晩婚化」とありますが、彼女たちが将来結婚するという根拠はない訳ですから、「晩婚化」でも「未婚」でもなく「非婚化」と言うべきだと思います。

 要するに、わが国では多数の適齢期の男女が結婚しなく(できなく)なってしまったのです。結婚した夫婦が子供をもうけなくなった訳ではないのです。わが国の少子化の原因がここにあることを認識しなくては、いかなる少子化対策も効果がありません。
 しかるに、この種のデータはいつも隠されていました。このことが、間接的ではあっても明らかになったのは、今回が初めてではないかと思います。

 この現実に対して、わが国は今までどのような対応をしてきたのでしょうか。少子化の原因が非婚にあるならば、少子化解消のためには非婚を解消しなければならないはずです。非婚を解消するには非婚の人達に、なぜ結婚しないのか、結婚の障害は何なのかを聞かなければなりません。それが少子化対策の第一歩のはずです。

 ところが、少子化問題担当大臣の猪口邦子さんを初めとして、少子化問題で意見を述べる女性は子持ちの既婚女性ばかりで、非婚者はほとんどいません。そして、なぜか、登場する子持ちの既婚者は共稼ぎの女性ばかりです。

 彼女たちがこれまで主張してきた少子化対策は、託児所の増設、育児休暇の創設、児童手当の増額など、自分たち子持ちの共稼ぎ女性を経済的に援助しろというものばかりでした。しかし、これらの施策を実施しても少子化に歯止めはかからず、少子化は進む一方でした。

 これは当然のことです。少子化の原因が非婚の増加にある以上、子持ちの既婚女性を経済的に支援しても、出産が増える訳がありません。釣った魚にえさをやっても漁獲が増えないのと同様です。彼女たちは実に巧妙に話をすり替えて利益を得てきました。国の将来を憂う人達を欺き、話をすり替えて利益を得る行為はきわめて悪質と言わざるを得ません。また、それを知っていて助長してきて厚生労働省の罪も、重いと言わなければなりません。

平成18年3月4日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ