I4
男女雇用機会均等法への疑問

 4月1日から男女雇用機会均等法が改正され、男女別の募集、採用が禁止されますが、2月7日の産経新聞によると、いくつかの例外規定があり、その中で助産婦を「女性のみ」とすることを認めることの是非と、「女性のみ」を認める場合の理由づけに労働省が苦慮していることが報じられました。

 報道によると例外規定は次の3つです。

1.「表現の真実性のために一方の性であることが必要な職業」
2.「防犯上の要請から男性に従事させることが必要な職業」
3.「宗教上、風紀上、スポーツ競技の性質上で、一方の性に従事させることが必要な職業」

これらに該当するものは禁止規定の適用を除外されるそうです。

 1.の「表現の真実性のため」というのは映画俳優などを指すのでしょうか、どういう意味かよく分かりませんが、これらの例外規定の適用を受けて、警備員、ホステス、助産婦などは、男性だけ、女性だけの募集や採用が認められるとのことです。そして、助産婦を女性に限る理由を当てはめようとすると、3.の「風紀上の理由」しか見あたらず、労働省は例外扱いの正当化に苦慮しているそうです。
 確かに助産婦が男性であることは都合が悪いと思います。しかし、それを風紀上の問題というのは誤りであると思います。風紀上の問題とは個人的なモラル、道徳とか風俗の問題を指して言う言葉です。労働省が自分で作った法律と、その例外規定の整合性、例外扱いの正当化に苦慮していると言うことは、元々この法律が男性と女性で職業における適性、能力に違いがないという根拠のないことを前提とし、募集や採用に当たって、例外扱いを認める根拠を3つに限定し、助産婦を女性だけに限る根拠を、その3つのどれかに当てはめようとしていることに無理があるからだと思います。(しかも防犯上とか風紀上というのはかなり曖昧で問題のある表現です)

 男性の助産婦が好ましくないとしたら、男性の看護婦(看護士)はどうなのでしょうか。男性の看護士が入院中の女性患者の看護や、介護をするのは「風紀上問題」はないのでしょうか。助産婦の場合と程度の差はあっても、やはり問題はあるのではないでしようか。ホステスは女性に限ると言うのも例外として認められるそうですが、ホステス類似の職業はどうなのでしょうか。飲食店で客席でサービスする職業はいろいろあると思いますが、ホステスの定義は明確なのでしょうか。女性は警備員には向かないと言うのであれば、警察官や自衛官にも向いていないと言うべきではないでしょうか。警備員に類似の職業で女性には向いていない職業はいくらでもあると思います。要するに、職業には男性に向いている職業、男性には向いていない職業があるのです。同様に女性に向いている職業、女性には向いていない職業があるのです。そして、性別に全く関係ない職業もあるのです。男女別の募集、採用を一律に禁止するのは誤りだと思います。

 そもそも、この法律が目的とするところは、法の下での男女平等なのか、女性の保護なのか、そこが曖昧です。法律の目的としては憲法を引き合いに出して、一応、男女平等を目的としているかのように装っていますが、実際の条文はほとんど女性の保護規定ばかりで、男性についての規定、言及は全くありません。見方によっては法律の中で最も露骨な男女差別法と言えます。男女の平等と、女性の保護は考え方として矛盾し、相容れないものだと思います。その矛盾し、相容れないものを一つの法律にしていることが、間違いのもとなのだと思います。
 この法律が女性の保護を目的としているなら、男性の助産婦を排除することを正当化するための理由づけに苦慮する必要はありません。しかし、そうであるなら、「男女雇用機会均等」などという事実に反する言葉を使うのはやめるべきです。
 男女雇用機会均等法が持つ根本的な矛盾を放置すれば、やがて要求は「機会の均等」から、「結果の均等」へとエスカレートし、世の中に悪平等主義がはびこる事になると思います。

平成11年2月15日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ