I41
効果のない「少子化対策」

 8月22日の読売新聞は、
「2006年上半期の出生数、6年ぶり増加 出生率も上昇の可能性/人口動態統計」という見出しで、次のように報じていました。
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 厚生労働省が21日発表した人口動態統計(速報)によると、2006年上半期(1〜6月)の出生数は計54万9255人で、前年同期より1万1618人増え、6年ぶりに増加に転じた。出生数の回復傾向により、女性が一生に産む子供の数の推計である合計特殊出生率も、06年は6年ぶりに上昇に転じる可能性が高まった。
 ・・・出生数増加の理由として同省は、「20代の初婚率が下げ止まるとともに30代の初婚率が上昇傾向にある」ことと分析。さらに、妊娠中絶の減少や雇用情勢の改善なども影響したとしている。今年上半期の婚姻数は36万7965組と前年同期比で1万936組の増加だった。
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 厚労省は増加に転じた理由として、「20代の初婚率の下げ止まり」と、「30代の初婚率の上昇」を挙げていますが、注目すべきは、彼らが今まで推進してきた各種の「少子化対策」との関連について、何も触れていないことです。
 長年にわたって続けてきた少子化対策、すなわち、「育児休暇制度の創設」や、「保育所の増設」に代表される「子持ちの働く女性達」に対する支援策は効果があったのでしょうか。これらの少子化対策の充実により、「既婚の働く女性達」の出産は増加したのでしょうか。あるいは「少子化対策」の充実を見て、結婚を決意する女性が増えたのでしょうか。

 厚労省は根拠となるデータを示さず、「妊娠中絶の減少や雇用情勢の改善なども影響した」と言っているのに、「育児休暇制度の創設や、保育所の増設が出生の増加をもたらした」とか、「少子化対策の実施により初婚率が上昇した」とは、なぜ言わないのでしょうか。

 今までこの種の少子化対策に関して、その効果は一度も検証されたことがありません。長年の少子化対策にもかかわらず、出生率は低下し続けてきました。「少子化対策」は全く効果がなかったことは明らかだと思います。
 そして、ようやく出生率が向上したにもかかわらず、厚労省が少子化対策との関連に一言も触れていないのは、彼らは元々少子化対策が効果を発揮するとは考えておらず、効果を発揮することを期待していなかったからだと思います。われわれはこのような大きな欺瞞を見逃してはいけないと思います。

平成18年8月27日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ