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配偶者控除見直し議論に見る、欺瞞の数々


 4月15日の読売新聞は、「配偶者控除の縮小検討 政府税調」と言う見出しで、次のように報じていました。
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配偶者控除の縮小検討 政府税調
2014年4月15日3時0分 読売新聞

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は、専業主婦や妻がパートで働く世帯の所得税を軽くする「配偶者控除」のうち、パート勤務で一定の給与収入がある世帯の優遇部分を縮小する方向で見直す検討に入った。妻がどれだけ稼いでいるかで税務上の差がつく現行の制度を見直し、
女性が収入を気にせずに働くことができるようにすることで、企業や社会での活躍を促す。

「パート優遇」見直しへ
 妻のパート収入が年間65万円超で141万円未満の世帯は、夫や妻の課税対象となる年間所得を少なくできる金額(控除額)が最大114万円と、専業主婦の世帯や共働き世帯の控除額(ともに76万円)より多い。納税額が増えないように、働く時間を短くして年収を抑える例がある。

 安倍首相は、
女性の社会進出を妨げている制度の見直しを指示しており、政府税調の検討を踏まえ、政府・与党は今年末に決める2015年度税制改正で、制度の詳細を決めていく考えだ。

(中略)

影響大きい
「130万円の壁」
 税制上の問題とは別に、妻の年収が130万円以上になると、妻は、夫の「扶養家族」からはずれ、
自分で健康保険や公的年金の保険料を負担しなければならないという問題もある。さらに、妻の年収が130万円以上になると、夫が会社から「扶養手当」を受け取れなくなる場合がある。

 年収を130万円未満に抑える女性も多く、
「130万円の壁」と言われる。控除額が減っていく「103万円の壁」と同じように、年収の節目として意識されている。

 政府税調とは別に、厚生労働省などがあり方を検討するが、影響が大きいだけに、政府・与党は慎重に検討を進めるとみられる。
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 配偶者控除の見直し(撤廃あるいは減額)は、一体誰が望んでいるのでしょうか。利害関係から考えれば、1.現に配偶者控除を受けている、専業主婦またはパート妻の夫、2.その配偶者(妻)。それから、3.現在配偶者控除の適用を受けられない共働き所帯の夫と、4.その妻の4者がいますが。見直しによって不利益を被るのは1.と2.の2者で、直接利益を得るものはいません。

 ところが、読売の記事を見ると、
女性が収入を気にせず働くとか、社会進出を妨げている130万円の壁103万円の壁という言葉からも、あたかも2.の専業主婦とパート女性が見直しによって利益を得るかのように書かれていますが、本当でしょうか。「優遇されている」人たちが、その廃止を求めるでしょうか。

 もし、パートの主婦が本当に130万円や103万円を「壁」と感じているのなら、廃止や、減額ではなく、制度上の
限度額130万円、103万円の引き上げを求めるのが普通ではないでしょうか。
 各種の税制(控除)や福祉制度では、所得制限があるのが普通ですが、その恩恵を受けている人達が、所得が増加して制限を超えそうになったときに、控除の廃止や、所得制限の限度額の引き下げを要求するでしょうか。そんなことはないはずです。
要求するとすれば所得制限の引き上げ(所得制限の緩和)だと思います。

 それでは一体、本当は配偶者控除の見直しを求めているのは誰なのでしょうか。それは、4.の共働きの妻と3.の夫達しか考えられません。それは、「妻がどれだけ稼いでいるかで税務上の差がつく現行の制度」と言うところからも明らかです。しかし、男性の見直し主張にはほとんどお目にかかったことがなく、見直し論はもっぱら共働きの妻達からなされています。
 彼女たちは、自分たちの減税ではなく、生き方を異にする
同性の女性達への増税を要求しているのです。

 しかし、彼女らが露骨にそれを言うと、自分たちが受けている数多くの恩恵
(有給の育児休暇、保育所に対する税金の投入)に言及されて反論を浴び、勝利が見込めないところから、彼女たちはもっぱら正体を隠して水面下で発言するか、見直し論が女性を解放するのものであるかのように偽装しているのだと思います。
 そして、新聞社の(女性)記者らはそれを承知で、
配偶者控除の見直しが、あたかも全女性の願いであるかのような“情報操作”をしているのです。

平成26年4月18日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ