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「もはや少子化を嘆く段階は過ぎた 人口減少危機」と論じる、日本経済新聞と加藤百合子さんの欺瞞−少子化問題はどこへ行った−


 6月2日の日本経済新聞は、「もはや少子化を嘆く段階は過ぎた 人口減少危機  (加藤百合子氏の経営者ブログ)」と言う見出しで、次のように報じていました。
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(前略)
 5月13日、政府の経済財政諮問会議の傘下にある専門調査会「選択する未来」が、人口減少による社会構造の変化についての中間報告書をまとめました。報道でご存じの方も多いと思いますが、出生率が今の水準のまま推移すれば、日本の総人口は50年後、現在の3分の2の8700万人まで落ち込んでしまい、さらに東京圏への人口流出も相まって、地方自治体の4分の1以上が消滅する可能性があるという、大変ショッキングな内容です。

 私も1月以降、委員の一人として議論に参加してきました。農業関連ビジネスを通じての地域の課題や女性起業家の立場からベンチャー支援のあり方などについて発言しましたが、人口については全くの素人で、その分野に詳しい委員の方の説明に毎回驚き、議論を重ねるにつれ「これは本当に危機的な状況だ」との思いを強く持つようになりました。

 人口や出生率に関する議論では、結婚や子育てしやすい環境づくりなど「どうしたら少子化を止められるか」がテーマになりがちです。これはこれで重要なのですが、選択する未来で主に話し合われたのは、もっと深刻な事態についてでした。つまり、あらゆる手を使って出生率を急回復させることができたとしても効果があらわれるのは何世代か先で、今後50年間は確実に人口が減少し続ける。目前に迫る緊急事態にどう対処したらいいか、という議論です。
(以下略)
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 加藤さんは今のままで少子化が続くと、50年後には日本の人口が3分の2になると知り、ショックを受けたと書いていますが、本当でしょうか。
 今の少子化傾向が続けば、将来深刻な事態に直面すると言うことは、
多くの人が認識してきたところです。今の人口減少傾向が100年続けば、あるいは200年続けば、日本の人口が限りなくゼロに近づくというのは当然のことです。今、いきなり「50年後」という極端な議論が出てくるのは、多分に脅迫的な意味合いがあると思います。

 そして、「少子化を嘆く段階は過ぎた」とも言っていますが、少子化を深刻な問題として多くの人が議論して、(効果があったかどうかは別にして)対策を講じてきたことに対して、
「嘆く」と言う表現はずいぶんと人を馬鹿にした表現だと思います。

 そういう加藤さんは今まで少子化を“嘆いて”こなかったのでしょうか。深刻な問題としての認識がなかったのでしょうか。おそらくそんなことはなかったと思います。もしそうであればその不明を恥じるべきです。

 
少子化と人口減少は原因と結果の関係にあります。それにも拘わらず加藤さんは、人口減少の現実を前に、少子化対策について、“これはこれで重要なのですが”と、あたかも別問題であるかのように言い、また“その段階は過ぎた”と言って、あたかも少子化問題は過去の問題であるかのように、あるいは既に手遅れであるかのように言い捨てて、「人口減少対策」の必要を訴えていますが、少子化問題(人口を維持できない低出生率)が解消しない限り、いかなる人口減少対策も、単なる後ろ向きの一時しのぎに過ぎないことは言うまでもありません。これほど無責任なことはありません。

 今、少子化問題について論じてきた人たちの間で、議論を
「少子化問題」から、「人口減少問題」へとすり替える動きが顕著です。そして、そういう議論の時には、必ず遠い将来の人口激減のシミュレーションを描いて国民を脅迫します。なぜでしょうか。
 彼等は
今までの少子化対策の誤り、破綻を認めたくないのです。少子化対策に関して、彼等の原因認識が誤りで有り、取られた対策が見当違いで詐欺的で有り、その結果少子化の解消どころか反って促進してしまった結果を認めたくないのです。
 そういう人物は
能力が劣るだけでなく、誠実さにも欠ける人間であると言うべきです。そのような人物は、「少子化問題」、「人口減少問題」の議論から追放すべきです。

平成26年6月8日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ