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少子化対策の破綻と平成26年版「少子化社会対策白書」の問題点−女性官僚、女性新聞記者、女性大学教授ら“悪女3人組”の責任−

 
8月26日の読売新聞は、「[基礎からわかる]人口減社会 少子化止まらず 2048年 1億人切る推計」と言う見出しで、次のように報じていました。
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[基礎からわかる]人口減社会 少子化止まらず 2048年 1億人切る推計
2014年8月26日3時0分 読売新聞

 日本の人口が2008年の1億2808万人をピークに減少し始めた。欧米に比べ極端に低い出生率が原因で、高齢化も進むため、日本経済や私たちの社会生活は大きな影響を被る。急激な人口減を食い止めるためにはどのような取り組みが必要なのか。人口減社会の課題を探った。

  Q 何が起きているの
 1940年に7200万人だった日本の人口は、昭和戦争後の第1次ベビーブームなどで爆発的に増え、67年には1億人を突破した。しかし、1億2000万人を超えた80年代半ばから増加の勢いが落ち、2005年には戦後初めて、死ぬ人の数が生まれる人の数を上回り、人口が前年を割った。そして、11年からは連続して人口が減少する局面に入った。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、出生率が低い状態が続くと、日本の人口は48年には1億人を切り、60年には8674万人になる。65歳以上の割合を示す高齢化率も25%から、40%に跳ね上がる。

 大都市に人口が流出する地方はさらに深刻だ。民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)は今年5月、40年には、全国の約半数にあたる896市区町村の存立が難しくなる可能性があるとする独自の人口推計を発表した。


 
人口が減っているのは、生まれる子供の数が少なくなっているためだ。1人の女性が生涯に産む子供の平均的な数を示す合計特殊出生率は1975年以降、2を切り、2005年には1・26にまで落ちた。その後、上向いたものの13年で1・43にとどまる。

 衛生状態の改善や寿命の延びで死亡率が下がると、出生率が低下するのは世界各国共通の現象だ。

 しかし、日本はフランスの2、スウェーデンの1・90などと比べると顕著に低い。未婚率が高いことや、女性の平均初産年齢が30歳を超えること、長時間労働をする女性の割合が高いことなどが原因として指摘されている。

  Q 地域差は…地方の若者 東京へ流出
日本創成会議で、2040年には若年女性が57・5%減るとされた山形県酒田市。中心部の中通り商店街はシャッターを下ろしている商店が多い

 人口減の度合いは大都市部に若者が流出する地方の方が激しい。しかも、大都市部は出生率がおしなべて低く、全国的な出生率を押し下げている。特に、東京の出生率は1・13(2013年)で47都道府県で最低だ。子育てを支援してくれる親族が周囲にいない、住居費や物価が高く、子供を持つのが厳しい、職場が自宅から遠く育児との両立が難しい――などが理由だ。


(中略)

 
Q 必要な対策は…保育、雇用、婚活 幅広い支援

 日本の
少子化対策は、1989年に合計特殊出生率が過去最低を下回った「1・57ショック」をきっかけに始まり、保育所の拡充や育児休業制度の整備に取り組んできたが、大きな成果は出ていない。保育所に申し込んでも入所できない待機児童は昨年4月で全国に約2万3000人おり、潜在的な需要も含めると数十万人規模とされる。質の高い保育サービスをさらに拡充することは喫緊の課題だ。

 企業も長時間労働の慣行を見直し、在宅勤務など柔軟な働き方をさらに普及させるなど、子育て中の男女が働きやすい環境を作る必要がある。

 未婚者への支援も欠かせない。出会いのきっかけ作りなど、婚活イベントに取り組む自治体も増えている。30〜34歳で男性の2人に1人、女性の3人に1人が未婚という高い未婚率には、25〜34歳で3割弱が賃金の低い非正規雇用という状況も影響している。20歳代で結婚して子供を持てるよう、若い世代の雇用安定化も進めなければならない。

 政府も、「2060年時点で1億人の人口を維持する」ことを目標に掲げ、中長期の戦略を打ち出す方針だ。安倍首相は9月3日の内閣改造で地方創生担当相を新設する。それに合わせ、地域活性化と人口減対策の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長・安倍首相)を正式発足させる考えだ。

 創生本部は、〈1〉人口減少にどう歯止めをかけるか〈2〉東京一極集中をどう是正するか――の観点から政策を総点検し、改革を進める。来年1月には、60年を見据えた「長期ビジョン」と、20年までに実施する「総合戦略」を策定する。

 課題も多い。まず、出産や育児支援にどれだけの財源を振り向けられるのかだ。フランスやスウェーデンのように出生率をV字回復させた国では、出産と就業の両立や、子育て家庭の経済的な支援などに早くから取り組み、少子化関連に政府や自治体が使うお金も、GDP比3%台と潤沢だ。一方、我が国はGDP比1%程度。待機児童解消のため来年度に始まる新しい子育て支援制度では、消費増税による財源から毎年0・7兆円を投じるが、必要な施策をすべて実施するには0・3兆円が不足している状態だ。

 政府が目指す「1億人維持」も容易ではない。それには、合計特殊出生率を30年までに2・07までアップさせなければならない。1971〜74年の第2次ベビーブーム期と同じ水準で、全国で最も出生率が高い沖縄(2013年は1・94)でも届かない。

 地方が再生し、出生率が改善されても、今世紀末まで人口減が続く。息の長い取り組みが必要だ。

 ◇日本の人口 5年ごとに行われる国勢調査(直近は2010年)が基礎データとなる。国勢調査が行われない年は、出生児数、死亡者数など、そのほかの統計調査結果を基に、人口の増減を加味して推計している。日本に住む外国人も対象となる。
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 何を今更と言うことですが、読売新聞は改めて明確に今までの「少子化対策」が効果がなかったことを認めました。遅きに失したとはいえこれは重要なことで、今後の対策は、過去の対策がなぜ効果がなかったかの反省からスタートしなければなりません。

 政府は毎年「少子化社会対策白書」を作成・公表していますが、私は今年発表された「平成26年版少子化社会対策白書」を見てみました。




かなり膨大なものですが、白書の目次http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26pdfhonpen/pdf/mokuji.pdfを見てまず気づいたことがあります。

 第一部 第一章が「現状」で、第二章が「少子化対策の取組」となっていて、その間に当然あるべき
「原因分析」がないのです。少子化という現状(問題)があり、それが解決を必要する問題であると認識されているのであれば、当然少子化の原因を分析・把握することが不可欠のはずです。ところが厚生労働省は原因分析をせずに対策を実行しているのです。

 「現状」を分析すれば、少子化の原因は結婚適齢期になっても、結婚しない人が増えたことが一番大きな原因であると容易に判断できるはずです。既婚者が子供を産まなくなった事が原因ではないのです。それがわかったら次にすべきことは、なぜ、結婚しない人が増えたのかその原因・理由を把握することです。

 そのためには結婚適齢期の男女だけでなく、適齢期を過ぎた男女にも、「なぜ結婚しない人が増えたのか」、「どうしたら結婚しない人を減らす事ができるか」を
直接聞いてみることです。彼ら・彼女らの意見が一番参考になるはずです。フランスやスウェーデンまでわざわざ聞きに行く必要は全くありません。

 その調査・
聞き取りをした結果、「子育て」が大変なので結婚を見合わせているという人が多数であれば、子育て支援の充実は、少子化対策として合理的な対策と言えるかもしれませんが、そういう調査結果は示されたことがありません。また、もしそうであったとしても「結婚しても子を持たない」という選択肢もある訳で、そういう選択をする男女(子供を持たない夫婦)が増加したというデータも聞いたことがありませんので、子育てが大変であるとしても、それが結婚しない人が増えた理由、ひいては少子化の原因であるとする主張が成り立たないことは明らかです。

 しかるに少子化対策にかかわる厚生労働省の女性官僚、女性新聞記者、女性大学教授など「悪女3人組」の誰一人として、結婚しない人が増加した
原因究明の努力はしませんでした。彼女らが聞き取りの相手にしたのは、もっぱら子持ちの既婚者、しかも専業主婦を除いた共働きの女性達だけでした。彼女たち「3人組」に他意があることは明らかです。

 彼女たち(聞き取りに応じた女性たち)は保育所が足りない、育児休暇がほしいと口々に訴えました。それ自体はもっともな訴えであったかもしれません。しかし、それは少子化対策とは無縁の訴えです。少子化の原因が結婚しない人が増えたことであり、結婚しても子供を産まない人が増えたことでない以上、子育て支援は出生率の向上には結びつきません。
 
実際に、「1989年の1.57ショック」以来25年間、子育て支援策を拡充しても結婚する人が増えず、少子化に改善の兆しすら見えなかったのですから、従来の「子育て支援型」の少子化対策が間違いであったことは明白です。読売新聞の記事が指摘しているとおりです。この点には異論の余地はないと思います。考えてみれば原因分析もせずに実行した対策が、効果を上げないのは当たり前のことです。

 一体なぜこんなことが起きたのでしょうか。それは“悪女3人組”にとっては、実は
「対策」は対策ではなく、「目的」そのものだったのです。彼女らにとってはまず“子育て支援”実行ありきだったのです。彼女らの目的は少子化対策に便乗して、共働きの子持ちの女性の「子育て支援」をすることであり、少子化対策は単なる口実に過ぎなかったのです。

 記事は少子化の原因を、非正規雇用や生活環境劣悪の問題に結びつけて論じていますが、
ベビーブームの人たちが生まれた敗戦直後の日本は、今よりも恵まれた社会だったと思っているのでしょうか。彼女たちは頭(と性格)が悪すぎます。

平成26年8月31日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ