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労働省の役割

 失業率が史上最高を記録しました。景気低迷の影響もあるでしょうが学生、特に女子学生の就職率は史上最低で非常に厳しいものがあります。就職問題、失業問題は労働問題と言うよりも、経済問題で、労働省の手に負えない問題です。雇用あっての労働問題で、就職できなかったり、雇用が脅かされている人にとっては、労働省など何の役にも立ちません。

 この段になって労働省が熱を入れているのは何かというと、セクハラと男女雇用機会均等です。いや、それ以外は眼中にないというか、それ以外には何もやっていないと言う状況です(労働省には他にすることがないのでしょうか)。この二つの問題は恩恵があるのは女性だけで、男性には全く恩恵のない話しです。男性で保母(保父)になる道が開けたことを喜ぶ人は極めて少数です。女性でも恩恵に浴するのは、男性の仕事とされている分野に、挑戦しようと言う一部の女性に過ぎません。セクハラが深刻で日常的な万人に共通の問題であるとは思いません。

 男女雇用機会均等は、はたして、多くの女性労働者、特に、これから就職しようと言う、女子学生にとっては福音だったのでしょうか。

 かつて高度経済成長下で、男女雇用機会均等法がなかった時代は、若い女性労働力は引っ張りだこで、完全に売り手市場でした。企業は若い女性労働力の確保に、躍起でした。若い女性は簡単に一流企業のOLになることができました。そのかわり、結婚後も仕事を続けたり、OL以上の地位につく事は困難な時代でした。しかし、その後労働省が男女雇用機会均等を押し進め、結婚退職の慣習が禁止されたり、育児休業制が採用されたりして、女性労働者の待遇が変わってきました。それにつれて、結婚後も辞めない人が増え、女性の勤続年数が長くなり、企業は女性労働者の雇用が人件費コストに見合わないと考えるようになり、採用を手控えるようになりました。女子学生の就職難が始まったのです。一流企業のOLは今や高嶺の花になってしまいました。

 このような結果は多くの女性が望むところだったのでしょうか。このような結果になっても、男性と同等に職業に就く道が開け、かつ結婚後も仕事を続けやすくなったと言って喜んでいるのは、全女性の中のごく一部の人達(労働省の女性官僚など)だけではないのでしょうか。もし、昔の方が良かったと思う女性が多数であるならば、労働省は多くの人が望まないことをして来たことになります。行政は国民の多数意見を反映したものでなければならないと思います。

平成11年4月7日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ