I61
少子化の原因は、女性が「外で仕事を続ける」という選択肢が出来たため
11月28日の読売新聞は、「人口減対策 子は財産 社会で共有」と言う見出しで、白波瀬佐和子 東大教授の意見を次のように報じていました。
----------------------------------------------------------------------------------
[視座 14衆院選]<5>人口減対策 子は財産 社会で共有…白波瀬佐和子 東大教授
2014年11月28日3時0分 読売新聞
しらはせさわこ。1958年生まれ。専門は人口社会学。筑波大助教授などを経て2010年から現職。
日本創成会議・人口減少問題検討分科会の委員
人口減により896自治体の存立が難しくなる可能性があると警告した民間研究組織「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の議論には、私も参加した。会議がまとめた報告は、現状のままでは、どのような現実が待っているかを示した将来の投影だ。今を変えれば、将来も変わる。だから将来を変えるのは、ほかでもない自治体を担うあなたたち自身だというメッセージに大きな意味がある。
日本の少子化の要因は、女性について言えば、子どもを産むか仕事を続けるかという二者択一を迫られてきたことだ。女性の高学歴化が進み、専門職につく可能性も高くなったが、近くに親が住んでいるなど特別な支援がないと、子育てをしながら働き続けるのは難しい。つまりは、女性の潜在能力を十分に活用できていなかったわけで、そこに目をつけた安倍政権の女性登用を促進する成長戦略は巧妙だった。
男性については、労働市場が悪化し、大学などを出たらフルタイムの仕事を持てるという構図が崩れた。それでも、一家を担う準備が整わなければ結婚できないという呪縛から逃れられず、女性以上に生涯未婚率が高くなっている。
子どもがほしいと思う人は多いのだから、それをかなえるための環境を整備しなければならない。ポイントの一つは、結婚する前の若者が自立できるように支援することだ。多くの企業に職業訓練を行う余裕がなくなり、即戦力を求めるようになった分、専門学校や大学などでキャリア教育を提供する必要がある。
二つ目は、子どものいる夫婦のワーク・ライフ・バランスだ。幼い子がいるのに毎晩10時に家に帰るのでは厳しい。幼い子や、看護や介護の必要な家族がいる場合、午後6時には何ら罪悪感なく退社できるような、社会としての慣行を作っていくべきだ。
三つ目は子ども自身への支援。すべての子どもを社会の財産として育てていくという考えを社会全体で共有する。公教育をもう少し手厚くし、質の高い教育を提供する。子どもをもたない理由に教育費が高いことを挙げる人が多いのだから、そういう人たちにも強いメッセージになるはずだ。
政治家には、人口問題がマクロの話であると同時に、個々の「人」の話だということを忘れてもらいたくない。人口が増える背景には、子を産む人がいて、その人たちの様々な選択がある。最終的には個人の問題が介在することを、常に意識してもらいたい。
人口は、今何か対策を行っても効果はすぐに表れず、しばらく減り続ける。それだけに継続して考えるべき問題で、即時的な効果を求めたり、一時の流行の議論にしたりすべきではない。(聞き手・地方部 渡辺亮)
-----------------------------------------------------------------------------------
白波瀬教授は、「日本の少子化の要因は、女性について言えば、子どもを産むか仕事を続けるかという二者択一を迫られてきたことだ」と言っています。
それではかつて、日本が少子化ではなかった時代はどうだったでしょうか。端的な言い方をすれば、少子化が問題になる少し前の時代には、「仕事を続ける(子供を産まない)」という選択肢は無かったと言えると思います。その時代は女性は皆、当然のように結婚退職して、「子供を産む(仕事を続けない)という“選択”」をしていた時代です。その時代には「少子化問題」は有りませんでした。
しかるにその後、「外で仕事を続ける」という選択肢が出来たために、結婚しない人が増えたと言えるのではないでしょうか。そうであれば少子化の原因は、女性に「外で仕事を続ける」という選択肢が出来たためと言うことになるのではないでしょうか。
新しい選択肢が出来たこと自体の当否は別にして考えれば、そう言う事になると思います。
そして現在少子化対策として実行されている公的子育て支援の諸施策と、反対に配偶者控除見直し議論に見られる専業主婦(準専業主婦を含む)迫害は、明らかに「外で仕事を続ける」という選択肢を推奨(半ば強制)し、「子供を産む(外で仕事を続けない)」という選択肢を抑制する結果になっています。
従って、少子化問題を考えるに当たっては、そういう選択肢があることの当否、そして、国家がそう言う選択肢を推奨(半ば強制)する社会に問題が無いかを考える必要があると思います。
教授の言うように女性が二者択一を迫られているとすれば、国家が「仕事を続ける」という選択肢を強く推奨する社会は、女性が「子供を産む(仕事を続けない)」と言う選択をすることを困難にし、少子化を促進する社会に他ならないと言えると思います。
平成26年11月29日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ